神速艦隊

ypaaaaaaa

文字の大きさ
上 下
5 / 45
新八八艦隊計画

ユトランド沖海戦

しおりを挟む
伏見宮は戦艦河内の艦橋から事の様子をつぶさに観察していた。
日英連合艦隊の指揮はジェリコー提督が執っており伏見宮の出る幕は無かったのだ。
だが無いと言っても彼も一端の海軍軍人であり半ば見物のように戦闘を眺めていた。
ユトランド沖で起こったこの海戦は200隻を超える艦艇が衝突していた。
数では日英連合艦隊が勝っていたが戦いの趨勢はドイツ大洋艦隊に傾きつつあった。
「艦後部に被弾!」
艦長が伏見宮に報告する。
命中したのは30.5㎝砲のようで火災が発生していた。
「損害はいかほどかね?」
「はっ!怪我人こそ出ていますが死者はありません!また火災についても30分ほどで鎮火できる模様です!」
伏見宮は胸を撫でおろした。
だがその時誰もの背筋がピンと張るほどの爆音が辺りに轟いた。
「英国巡洋戦艦が暴発!」
マストの見張り員が叫ぶ。
この大爆発はイギリス海軍の巡洋戦艦であるインヴィンシブルの物だった。
インヴィンシブルは弩級戦艦の生みの親でもあるジョン・フィッシャー提督の”速度こそ最高の防御”という理念のもと建造され装甲より速度が重視されていた。
だがこのユトランド沖海戦では速度によって迫りくるすべての砲弾を避けることは不可能だった。
ドイツ海軍の巡洋戦艦であるデアフリンガーの30.5㎝砲弾を主砲塔に喰らい、弾薬庫に誘爆したのだ。
伏見宮は無意識のうちに手を合わせた。


ユトランド沖の死闘はその後も続き、なんとイギリス海軍の巡洋戦艦であるインディファティガルやクイーン・メリーを喪失した。
対してドイツ海軍の喪失した主力艦は巡洋戦艦リュッツオウとフォン・デア・タンだけだった。
つまり戦術的敗北である。
また双方ともに損傷艦を多数出しそれは日本海軍も例外ではなかった。
日本艦隊は総じて400発以上の砲弾を発射し内32発を敵艦に命中させていた。
だが巡洋戦艦金剛は2発の命中弾を喰らい中破、鞍馬は1発を喰らい小破、河内は2発を喰らい中破、摂津は1発を喰らい中破した。
一気に欧州派遣艦隊の主力が大損害を被ったのである。
ただ日本海軍の活躍は確かにあり、フォン・デア・タンを撃沈したのは河内の砲弾だった。
「夜戦を行いましょう!」
河内艦長は進言する。
主力艦が大損害を被ったのは事実だがそれはドイツも同じであり今ならさらなる戦果拡大が行えると踏んだからだ。
だが伏見宮はこれにきっぱり反対した。
「我々の作戦目標は海上封鎖を破らんとする敵艦隊の撃退だ。敵艦隊が退いていく以上、当初の作戦目標は達成されたと考えこれ以上の深追いは味方の損害をいたずらに増やすだけだ。我々は撤退する」
こうして後にユトランド沖海戦と呼ばれることになる海戦は終結した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

空母鳳炎奮戦記

ypaaaaaaa
歴史・時代
1942年、世界初の装甲空母である鳳炎はトラック泊地に停泊していた。すでに戦時下であり、鳳炎は南洋艦隊の要とされていた。この物語はそんな鳳炎の4年に及ぶ奮戦記である。 というわけで、今回は山本双六さんの帝国の海に登場する装甲空母鳳炎の物語です!二次創作のようなものになると思うので原作と違うところも出てくると思います。(極力、なくしたいですが…。)ともかく、皆さまが楽しめたら幸いです!

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

連合艦隊司令長官、井上成美

ypaaaaaaa
歴史・時代
2・26事件に端を発する国内の動乱や、日中両国の緊張状態の最中にある1937年1月16日、内々に海軍大臣就任が決定していた米内光政中将が高血圧で倒れた。命には別状がなかったものの、少しの間の病養が必要となった。これを受け、米内は信頼のおける部下として山本五十六を自分の代替として海軍大臣に推薦。そして空席になった連合艦隊司令長官には…。 毎度毎度こんなことがあったらいいな読んで、楽しんで頂いたら幸いです!

蒼雷の艦隊

和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。 よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。 一九四二年、三月二日。 スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。 雷艦長、その名は「工藤俊作」。 身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。 これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。 これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

処理中です...