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最終決戦

連合艦隊出撃

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8月の中旬になるといよいよアメリカ軍による硫黄島侵攻が現実を帯び始めてきた。
ウェーキ島の通信量が極端に増加し、またアメリカ潜水艦が硫黄島周辺での活動を活発化させてきているためである。
潜水艦については駆潜艇隊によって被害は抑えられているがそれでも11隻の輸送船が撃沈された。
連合艦隊司令部は硫黄島付近の航空、潜水哨戒を密にするのと同時に艦隊に出撃準備を命じた。


「出撃する」
ハルゼーの言葉は短くとも重大なものだった。
「その言葉を待ち望んでいました」
レイトンもそれに同調し他の幕僚に諮る。
皆も決意を固めた顔で静かに頭を縦に振った。
こうして8月21日に太平洋艦隊は出撃した。
また上陸部隊にも同時に出撃命令が下っており、ターナー中将率いる10万の海兵隊を乗せた船団も順次出港していった。


ウェーキ島からアメリカ軍が出撃したのを連合艦隊司令部が知ったのは8月22日の事だった。
「太平洋艦隊が出撃しました。我々も出ましょう」
源田は力強く進言した。
「あぁ、行くぞ!」
井上がそう言った3時間後に連合艦隊はトラックから出撃した。


「アメリカ軍がこちらに向かってきているそうです」
八原博通少将の報告に硫黄島を守護する小笠原兵団団長の栗林中将は顔に決意をにじませる。
「連合艦隊は出撃したのだな?」
「はい。すでにこちらに向かっているとのことです」
栗林はそれを聞くと胸をなでおろした。
「ここ硫黄島に居る兵士は約4万。いくら石原さんや東条さんがこっちに兵士を回してくれたとしても我々だけで敵軍を追い返すのは難しいだろうからな」
石原はついに大将に昇進し陸軍参謀本部次長となっていた。
「私も支援装甲車が来てくれて助かりました」
「西か」
バロン西の渾名を持つ西竹一大佐は栗林と八原に敬礼する。
「どうだった?陣地の出来は」
「これなら2か月は粘れます!」
西の言葉に八原と栗林は自信がついた。
「ウラヌスはちゃんとしまっておくんだぞ?」
「本当はウラヌスに乗って戦場を駆け回りたいのですが…」
「ならん」
ここで3人は笑った。


8月23日。
硫黄島に設置されていた電探が60機程度の機影を捉えた。
「これはおそらく敵の重爆ではないでしょうか?」
八原の予想は当たっていた。
これは硫黄島攻略を支援するための65機のB29の編隊であった。
「空母艦載機にしては少なすぎる。おそらく君の言う通りだろう」
「ではどういたします?このまま空襲を受けても我々の陣地はびくともしませんが」
「それはそうだが、一方的に攻撃されるのでは癪に障る。屠龍隊に出撃を命じる」
こうして硫黄島の戦いの序章が幕を開けたのだった。
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