11 / 102
建造と改装、そして開発
油圧式射出機
しおりを挟む
扶桑・伊勢型戦艦の改装が乙案でまとまったのは良かったが、肝心の射出機に問題が発生した。
従来の日本の射出機は火薬を爆発させ、その勢いでもって機体を押し出す方式を採用していた。
この方式は水上偵察機などには有効だったが、乙案が搭載する予定の航空機は魚雷や爆弾を積む。
その航空機を火薬の爆発で押し出すのは誘爆の危険性や機体の損傷の可能性があまりにも大きいため行われていなかった。
それを解決するために現場の技術者達がひねり出した答えが油圧式射出機だった。
油圧なら爆風などはないため安全に航空機を押し出せる。
それに加えこの油圧式射出機は空母にも搭載でき、空母艦載機の滑走距離が短くなり結果的に艦載機数の増大が期待できた。
だがその油圧式も一筋縄ではいかない。
技術的に困難だったからだ。
一応、艦政本部が試作に成功していたが信頼性をお粗末な現状だった。
そのため彼らは海軍上層部に開発支援を依頼した。
大半の将校が資金不足など理由を付けて断るなかある大将だけは積極的だった。
それが第1号艦の建造を担当している艦政本部の中村良三大将だった。
「井上くん。君から大臣に開発支援を言伝してくれないだろうか?」
中村は長門にまで井上を説得する。
「射出機などあっても変わらないでしょう。」
井上はあくまで射出機など不要であるという姿勢だった。
確かに攻撃機を射出機で発進させるとなると火薬式ではなにかと不都合だろう。
だがそもそも攻撃機は空母や陸上基地からの発進し、戦闘機や偵察機の発進には火薬式で支障が無かった。
この考えは依頼を断った将校に共通して言えることだった。
また乙案に攻撃機を搭載するということも井上は初耳だった。
「どこまで行っても強情だな。私は第1号艦の時、君の頼みを受け入れたぞ。それなのに私の頼みは受け入れないのか。」
そう言われると井上もバツが悪くなる。
「…わかりました。一応大臣に話を通しておきます。ですが、確証は持てません。」
その後、井上から油圧式射出機の話を聞いた山本は二つ返事で支援を約束した。
「思いのほか早く出来上がったな。」
中村はまず1938年中に満足のいく射出機が完成したことに驚いた。
「大将のおかげでアメリカの高品質な油が手に入ったんです。それで試作品の油をアメリカの物に変えてみたところ思いの外動きました。もちろん国産の油でも動くように改良していかなければなりませんが今はこれで十分でしょう。」
そしてこの技術者の言葉に日本の石油化学産業の遅れを痛感した。
だが油圧式射出機は完成した。
まず龍驤に試験的にこれを搭載し最後の確認を行った後、各空母や火薬式射出機を搭載している艦艇に搭載する予定だった。
従来の日本の射出機は火薬を爆発させ、その勢いでもって機体を押し出す方式を採用していた。
この方式は水上偵察機などには有効だったが、乙案が搭載する予定の航空機は魚雷や爆弾を積む。
その航空機を火薬の爆発で押し出すのは誘爆の危険性や機体の損傷の可能性があまりにも大きいため行われていなかった。
それを解決するために現場の技術者達がひねり出した答えが油圧式射出機だった。
油圧なら爆風などはないため安全に航空機を押し出せる。
それに加えこの油圧式射出機は空母にも搭載でき、空母艦載機の滑走距離が短くなり結果的に艦載機数の増大が期待できた。
だがその油圧式も一筋縄ではいかない。
技術的に困難だったからだ。
一応、艦政本部が試作に成功していたが信頼性をお粗末な現状だった。
そのため彼らは海軍上層部に開発支援を依頼した。
大半の将校が資金不足など理由を付けて断るなかある大将だけは積極的だった。
それが第1号艦の建造を担当している艦政本部の中村良三大将だった。
「井上くん。君から大臣に開発支援を言伝してくれないだろうか?」
中村は長門にまで井上を説得する。
「射出機などあっても変わらないでしょう。」
井上はあくまで射出機など不要であるという姿勢だった。
確かに攻撃機を射出機で発進させるとなると火薬式ではなにかと不都合だろう。
だがそもそも攻撃機は空母や陸上基地からの発進し、戦闘機や偵察機の発進には火薬式で支障が無かった。
この考えは依頼を断った将校に共通して言えることだった。
また乙案に攻撃機を搭載するということも井上は初耳だった。
「どこまで行っても強情だな。私は第1号艦の時、君の頼みを受け入れたぞ。それなのに私の頼みは受け入れないのか。」
そう言われると井上もバツが悪くなる。
「…わかりました。一応大臣に話を通しておきます。ですが、確証は持てません。」
その後、井上から油圧式射出機の話を聞いた山本は二つ返事で支援を約束した。
「思いのほか早く出来上がったな。」
中村はまず1938年中に満足のいく射出機が完成したことに驚いた。
「大将のおかげでアメリカの高品質な油が手に入ったんです。それで試作品の油をアメリカの物に変えてみたところ思いの外動きました。もちろん国産の油でも動くように改良していかなければなりませんが今はこれで十分でしょう。」
そしてこの技術者の言葉に日本の石油化学産業の遅れを痛感した。
だが油圧式射出機は完成した。
まず龍驤に試験的にこれを搭載し最後の確認を行った後、各空母や火薬式射出機を搭載している艦艇に搭載する予定だった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
第二艦隊転進ス 進路目標ハ未来
みにみ
歴史・時代
太平洋戦争末期 世界最大の46㎝という巨砲を
搭載する戦艦
大和を旗艦とする大日本帝国海軍第二艦隊 戦艦、榛名、伊勢、日向
空母天城、葛城、重巡利根、青葉、軽巡矢矧
駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、響は
日向灘沖を航行していた
そこで米潜水艦の魚雷攻撃を受け
大和や葛城が被雷 伊藤長官はGFに無断で
作戦の中止を命令し、反転佐世保へと向かう
途中、米軍の新型兵器らしき爆弾を葛城が被弾したりなどもするが
無事に佐世保に到着
しかし、そこにあったのは………
ぜひ、伊藤長官率いる第一遊撃艦隊の進む道をご覧ください
どうか感想ください…心が折れそう
どんな感想でも114514!!!
批判でも結構だぜ!見られてるって確信できるだけで
モチベーション上がるから!
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる