信濃の大空

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決戦開始

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朝日が昇る前の5時12分。
阿部は攻撃隊に全力出撃を命令した。
無論、迎撃隊は40機ほど残していた。
それでも、攻撃隊の数は200機を超えた。
次々と母艦から飛び立っていく流星や紫電改。
これが、最後の光景となるかもしれないという思いを抱えながら見守る乗組員。
太陽が水平線から顔を覗かし始めたころには、攻撃隊は水平線の遥か向こう側を飛んでいた。
「敵の攻撃に備えろ!奴らも攻撃隊を出撃させているはずだ!」
すでにどちらの位置も把握している。
なら、必然的に先に攻撃した方が有利となる。


「攻撃隊、出撃だ!」
ミッチャーは5時ちょうどには出撃命令を出していた。
阿部と同じ考えだった。
「80機は迎撃隊として母艦に待機させ、その他の航空隊は敵艦隊の攻撃せよ!」
バークがすぐに補足を入れる。
既に、発艦準備は完了していた。
なのですでに甲板を滑って空に舞い上がっていく。
数は300機は超えるだろう。
その中にカールもいた。


「中隊各機、攻撃隊の護衛が第一だ。日本の戦闘機を撃墜はしなくていい。追い返せ!」
そう厳命しておいた。
なぜならここまで残っているということは、かなりの強者であるということだ。
我々は、数が多かったということもあり生きのこっているということが強者であるとは限らない。
対して日本海軍は数がもともと少ないということもあり、強者が順当に生き残っている。
もちろん、自分の中隊がそいつらに負けず劣らずの実力を持っていると自負している。
だが、日本海軍にはどうしようもなく強いものもいるのだ。
そう、あの悪魔のように。
もしかしたら、自分の隊が鉢合わせるかもしれない。
そんなことになれば、自分でも生き残れるか怪しい。
そう考えてカールは坂井と鉢合わせないことを祈るのだった。


『中隊長、そろそろ敵艦隊に到達します。』
柳谷の言葉に坂井は殺気立つ。
盟友の仇をまだ討てていない。
それが、彼を戦闘へと突き進ませた。
この機会を逃せば、次はいつめぐり合うか分からない。
「了解。全機、敵の迎撃機に注意せよ。敵の迎撃隊を抑え込めれば十分だ。攻撃隊が攻撃を終えるまで持たせろ!」
坂井も中隊員を死なす気はなかった。
だから、できるだけ戦闘を避けさせようとしていた。
だが、そんな坂井の考えをよそに迎撃隊が坂井の中隊をめがけて飛んできて来た。
「訂正だ。自らに襲い掛かってくる敵機を撃破しろ!」
洗練された動きで2機編隊が組まれていく。
そして、他の中隊とともに降下していった。
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