18 / 67
再編
しおりを挟む
「君が、次の信濃の艦長か。」
阿部は辞令表を見ていた。
「はっ!不肖ながらこの中曽根、信濃の艦長職を預かりました。」
「そんなに緊張するな。航空参謀から艦内の案内があるだろう。それまで部屋で休むといい。」
「ありがとうございます!」
中曽根が自室に戻っていく。
「なかなかいい青年だな。」
阿部は感想を口にしながら、航空隊の配備と出撃命令を確認する。
「戦闘隊を30機配備の代わりに艦攻と艦爆を1航戦に転属させる。当然と言えば当然か。」
次に出撃命令の方を見る。
「来月までに高雄に入港、その後詳細説明か。本国での政変でかなり司令部も変わった。そのせいでもあるだろうな。」
外は太陽が傾き、1日が終わろうとしている。
阿部は静かに残りの執務をこなしていった。
中曽根が着任してから3日後。
「中隊長、こちらです。」
坂井は柳谷に先導されながら中曽根の前に整列する。
「艦長、彼らが今日着任した戦闘機パイロット達です。」
「ありがとう。」
坂井は一目見てこの艦長は何か違うと感じていた。
中曽根は続ける。
「私が今、君たちに言えることは一つだけだ。生きろ!私の部下になったのならかならず生き残れ!」
ほとんどのものは少し驚いた。
これまでは死しても戦えと言われてきたからだ。
「私からは以上である。総員、訓練に励んでくれ。」
東条の退陣はそれまで左遷や予備役にされていた優秀な軍人を表の舞台に帰還させた。
今村均もその一人である。
「ご帰還、おめでとうございます。今村閣下。」
「おぁ、スカルノか。かなり日本語が達者になったな。」
今村は旧友にあったかのように喜んだ。
だが、次の瞬間彼の顔はひどく悲しい顔になった。
「すまなかった!私がラバウルにいってしまったばかりに…。」
スカルノの体躯は昔よりも小さくなっていた。
「閣下、私たちはあなたに帰ってきてくださっただけでいいのです。」
「ありがとう。」
今村は気を取り直し椅子に腰かける。
「先日、東条閣下が首相を辞された。だから私がここに帰ってこれたのだがな。」
「そうでしょうね。何もなくて日本政府に都合の悪い閣下を戻そうとは思いませんでしょうな。」
「なかなかひどいことを言ってくれるな。スカルノ。まぁそんなことはどうでも良くてだな。」
今村は少し間を置く。
「一時的に中国戦線の兵力を増強させるらしい。それに伴いここからもかなりの数の日本軍が引き抜かれる。その空白を埋めるべく、政府は現地民によるかなりの自治権を引き換えに現地軍を組織してもらいたい。」
「それは本当ですか!?」
スカルノは興奮気味になった。
「無論、少しは帝国の影響力は残るだろうがほとんど独立と考えてもらって構わん。」
「すぐに皆に伝えてきます!」
スカルノは部屋を飛び出していった。
阿部は辞令表を見ていた。
「はっ!不肖ながらこの中曽根、信濃の艦長職を預かりました。」
「そんなに緊張するな。航空参謀から艦内の案内があるだろう。それまで部屋で休むといい。」
「ありがとうございます!」
中曽根が自室に戻っていく。
「なかなかいい青年だな。」
阿部は感想を口にしながら、航空隊の配備と出撃命令を確認する。
「戦闘隊を30機配備の代わりに艦攻と艦爆を1航戦に転属させる。当然と言えば当然か。」
次に出撃命令の方を見る。
「来月までに高雄に入港、その後詳細説明か。本国での政変でかなり司令部も変わった。そのせいでもあるだろうな。」
外は太陽が傾き、1日が終わろうとしている。
阿部は静かに残りの執務をこなしていった。
中曽根が着任してから3日後。
「中隊長、こちらです。」
坂井は柳谷に先導されながら中曽根の前に整列する。
「艦長、彼らが今日着任した戦闘機パイロット達です。」
「ありがとう。」
坂井は一目見てこの艦長は何か違うと感じていた。
中曽根は続ける。
「私が今、君たちに言えることは一つだけだ。生きろ!私の部下になったのならかならず生き残れ!」
ほとんどのものは少し驚いた。
これまでは死しても戦えと言われてきたからだ。
「私からは以上である。総員、訓練に励んでくれ。」
東条の退陣はそれまで左遷や予備役にされていた優秀な軍人を表の舞台に帰還させた。
今村均もその一人である。
「ご帰還、おめでとうございます。今村閣下。」
「おぁ、スカルノか。かなり日本語が達者になったな。」
今村は旧友にあったかのように喜んだ。
だが、次の瞬間彼の顔はひどく悲しい顔になった。
「すまなかった!私がラバウルにいってしまったばかりに…。」
スカルノの体躯は昔よりも小さくなっていた。
「閣下、私たちはあなたに帰ってきてくださっただけでいいのです。」
「ありがとう。」
今村は気を取り直し椅子に腰かける。
「先日、東条閣下が首相を辞された。だから私がここに帰ってこれたのだがな。」
「そうでしょうね。何もなくて日本政府に都合の悪い閣下を戻そうとは思いませんでしょうな。」
「なかなかひどいことを言ってくれるな。スカルノ。まぁそんなことはどうでも良くてだな。」
今村は少し間を置く。
「一時的に中国戦線の兵力を増強させるらしい。それに伴いここからもかなりの数の日本軍が引き抜かれる。その空白を埋めるべく、政府は現地民によるかなりの自治権を引き換えに現地軍を組織してもらいたい。」
「それは本当ですか!?」
スカルノは興奮気味になった。
「無論、少しは帝国の影響力は残るだろうがほとんど独立と考えてもらって構わん。」
「すぐに皆に伝えてきます!」
スカルノは部屋を飛び出していった。
1
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

風を翔る
ypaaaaaaa
歴史・時代
彼の大戦争から80年近くが経ち、ミニオタであった高萩蒼(たかはぎ あおい)はある戦闘機について興味本位で調べることになる。二式艦上戦闘機、またの名を風翔。調べていく過程で、当時の凄惨な戦争についても知り高萩は現状を深く考えていくことになる。

【架空戦記】蒲生の忠
糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。
明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。
その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。
両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。
一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。
だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。
かくなる上は、戦うより他に道はなし。
信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
枢軸国
よもぎもちぱん
歴史・時代
時は1919年
第一次世界大戦の敗戦によりドイツ帝国は滅亡した。皇帝陛下 ヴィルヘルム二世の退位により、ドイツは共和制へと移行する。ヴェルサイユ条約により1320億金マルク 日本円で200兆円もの賠償金を課される。これに激怒したのは偉大なる我らが総統閣下"アドルフ ヒトラー"である。結果的に敗戦こそしたものの彼の及ぼした影響は非常に大きかった。
主人公はソフィア シュナイダー
彼女もまた、ドイツに転生してきた人物である。前世である2010年頃の記憶を全て保持しており、映像を写真として記憶することが出来る。
生き残る為に、彼女は持てる知識を総動員して戦う
偉大なる第三帝国に栄光あれ!
Sieg Heil(勝利万歳!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる