信濃の大空

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覚悟

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「敵機、20分以内に襲来します!」
「直掩隊を出せ!」
ミッチャーにはそう命令するしかなかった。
一体、どうなっている!
敵空母はいても1隻だけのはずだ。
それにも関わらず、襲来したのは200機だ。
敵の基地航空隊が進出できるような島もない。
計算が合わない…。
ここで彼はふとビアク上陸戦のことを思い出した。
そういえば、ビアクでは突然空襲を受けた。
あの時は索敵網のミスで片づけた。
だがあれがもし空母からの攻撃機ならば、基地を見張っていた偵察隊が発見できないのも辻妻が合う。
「見逃していたか…。」
そう悟ったころにはもう遅かった。


「ビアクの時と同じく、隼鷹、大鳳隊は酒樹の指揮の元一番手前の機動群を狙え!我々は2番目を叩く!」
『敵戦闘機接近!』
山口が指示を出したのと同じくして敵直掩機が向かってくる。
「全機、散開しつつ接近せよ!」
そうして自らも機体を上に引き上げる。
何機かは敵機にまとわりつかれたようだ。
それでも、かなり粘っている。
そうしているとついに対空砲火が始まる。
VT 信管の威力はすさまじく、次々と攻撃隊を落としていく。
だが、米軍戦闘機は攻撃隊を追撃し続けたため対空砲火に巻き込まれていた。
事前に決められていなかったその行動に、米軍の対空火器が一瞬緩慢になった。
山口とその他2機は隙を見逃さず、雲の切れ間から急降下を仕掛けた。
体がふわりと浮く。
そして、急降下特有の負荷がかかってくる。
対空砲火の炸裂音がすぐそこに聞こえ心臓まで響いてくる。
あと、700。
ひと際大きな爆発音とともに横を飛んでいた戦友達が見えなくなる。
視界が滲むがそれをぬぐい集中する。
あと、500。
もうすこしだ!
もうすこしで先に逝った奴らに顔向けできる。
覚悟を決めろ!
そして、400。
「投下っ!」
2機の彗星からそれぞれ800キロ爆弾が敵空母の甲板に吸い込まれるように落ちていった。
その後数秒間は何事もなかったように航行していた。
突然、巨大な爆発音とともにその空母は2つに分かれ沈んでいった。


一方、酒樹も同様に彗星で急降下爆撃を敢行していた。
「2番機がっ!」
「構うな!」
偵察手にそう叫ぶと、どんどん距離が近くなっていく空母の甲板に神経を研ぎ澄ませる。
対空砲火が厳しい!
だが、何としてでも!
その時、左翼に火が付いた。
「機長!火がっ!」
「分かってる!だが逃げるわけには行かない!」
操縦桿を握る手は汗が滲んでいた。
周囲を見ると、ほかにもう1機いた彗星がいなかった。
そしてついに左翼の端が折れた。
「くそっ!なんとかお前だけでも…。」
偵察手だけでも生かそうと口に出す前に言葉が遮られた。
「機長!私はすでに覚悟を決めています!この命、あなたに預けます!なので、どうか仇を取らせてください!」
その言葉は決意にみなぎっていた。
「…わかった!では、靖国でまた会おう。」


「おい!あいつはまだそれないのか!」
『エセックス』の下士官がそう怒鳴るが状況は変わらない。
「全くそれません!もう直700を切ります!」
「クソが!」
彼らが見上げる先には片翼の端がすでにない爆撃機がいた。
すると、やっともう一発命中し皆が安堵した。
だが、その機体は進路を変えず急降下してきた。
「奴らはっ…死を恐れないのか!?」
誰かが畏怖の念を込めて言い放った時、彼らを巨大な衝撃が襲った。
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