信濃の大空

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帰還

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午後7時18分。
太陽が沈みかけている所に第一次攻撃隊の残存機が母艦に戻ってきた。
「長官、攻撃隊帰投しました。すでに着艦作業に入っているとのこと。」
「そうか。戦果は?」
そう聞かれた草鹿は嬉しそうな顔をした。
「我が方は80機ほどを失いましたが、敵は少なくとも120機を失ったとのことです。」
戦果を聞いた小沢はほくそえんだ。
これで米海軍の戦闘機はかなり削っただろう。
サイパンの上空でかなり消耗していただろうからかなりの打撃のはず。
戦闘機数でやっと互角に持ち込むことができた。
あとは明日に備えるだけだ。
「搭乗員たちにはしっかり休むように伝えてくれ。明日からも大いに働いてもらわないといけないからな。」
「分かりました。伝えておきます。」
草鹿はそう言って部屋を出ていった。


目前に瑞鶴の飛行甲板が迫ってくる。
機体を平行にして降下する。
大きな衝撃のすぐ後に後ろから引っ張られ機体が停止する。
エンジンを止め、坂井は甲板にひょいと飛び降りた。
「中隊長。」
飛行帽を脱いでいると柳谷が声をかけた。
「なんだ?柳谷。」
「見えるんですか?」
「声色で大体わかる。」
ぼやけていてちゃんとは見えないが後ろにも何人かいるのが分かった。
「中隊全機、1機も欠けることなく帰還いたしました!」
「…よかった。」
坂井はそうポツリと言って彼らを見据える。
「今日はゆっくりと休め。明日からはまた三途の川に近づくことになる。気を引き締めろ。」
「「「はっ!」」」
この夜間着艦では9機が海に落ちたものの搭乗員は全員救助された。


アメリカ海軍も艦載機の着艦を開始したが、ほぼすべての機体が何らかの損傷を負っていて着艦できない機体は海面に不時着していった。
そして数少ない無傷の機体であるカールはエンタープライズに降下していた。
衝撃と共に彼はあの戦いから生還したと改めて実感した。
直に夜だ。
今日はこれで終わりだろう。
そこまで考えて明日もあの地獄を戦い抜かなければならないことを悟った。
「今日ぐらい…一杯やるか。」
そうぼやいて自室に戻ろうとした時に呼び止められた。
「あなたは、先ほどの…。」
「君がサザーランドか。こうしてご対面するのは初めてだな。」
「はい。」
ちょうど飲み仲間が欲しかったところだ。
お礼代わりに付き合ってもらおう。
「今日、一緒に飲まないか?」
それを聞くとサザーランドは困った顔をした。
「お礼にうかがっただけなのですが…。」
「お礼代わりだ。それでいいだろう?」
するとサザーランドは少し微笑んだ。
「なら、仕方ありません。ですが少なめですよ?」
「分かっているさ。」
アメリカ海軍の着艦が完了したのは結局6時34分だった。
結果的に150機を喪失。
生き残った者たちは明日に向けて英気を養っていた。
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