信濃の大空

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第一次攻撃隊発艦

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6月18日。
小沢は自らの指揮下にある航空戦隊から40機を超える偵察機を発進させた。
「何としてでも、敵艦隊を先に見つけなければ。」
小沢は静かに報告を待っていた。
「司令、もし敵艦隊が発見できたとしても今からでは夜間着艦になると思いますが。いかがなさいます?」
参謀長の草鹿龍之介は時計を見ながら聞いた。
「無論、出撃させる。この作戦ではなんとしてでも我が艦隊を発見してもらわねばならない。それが破綻した時点で趨勢は決する。」
「一種の博打ですね。私にはそんなことを実行できる勇気がありません、長官はやはり肝っ玉というか器というかそういう類のものが優れてらっしゃるのですね。」
草鹿は自らを小ばかにするような目をした。
「この戦争自体、博打だ。時に大きな決断をしなければならない時がある。ミッドウェーの時、南雲中将はそれができなかったから敗北してしまった。我々は同じ轍を踏まないようにしなければならない。」
草鹿は心の中で『自分は、参謀長がお似合いだな』と人知れず思っていた。
その時、部屋のドアが開けられた。
「司令官!ついに見つけました!10隻の空母を中核に据える大艦隊です!」
小沢は少し間をおいてから命令した。
「攻撃隊、発艦用意!」
すぐに飛行甲板は騒がしくなり次々に航空機が並べられていく。
そんな光景を小沢は眺めていた。
「さぁ。昭和の秋山である先生の置き土産がどこまで通用するかな。」
小沢は懐かしそうにぼやいた。


ついに出撃命令がでた。
坂井三郎は笹井の仇が取れると心の底から喜んでいた。
「中隊長、燃料補給が完了しました。5分後に発艦が開始されます。」
不意に声をかけられた。
目が悪く誰か分からない。
「あ、柳谷か。」
そう言われて柳谷謙治は顔を坂井に近づける。
「見えましたか?」
「あぁ。見えた。」
「そうですか。ではご武運を。」
柳谷は自らの愛機に向かっていく。
「お前もな。」
坂井も同じく零戦に乗り込む。
そして一番機が発艦。
続々と後続が発艦していき、坂井の番になる。
加速していく機体。
まだ少し見える左の情景がどんどん変わっていく。
次の瞬間、浮遊感が彼を包み発艦したと実感する。
集まってくる自らの中隊機達。
坂井は目標に仇取りと若き後輩たちを守ることを据えると、敵艦隊に向けて飛んで行った。
この時、出撃した第一次攻撃隊の総数は231機を数えた。
各々、厳しい訓練や過酷な戦場を切り抜けてきた猛者だ。
彼らはそれぞれの感情を抱え、飛んで行った。
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