1 / 67
あ号作戦前夜
しおりを挟む
1944年、ミッドウェー海戦の大敗によって早期講和に失敗し、戦争の主導権を奪われた日本海軍は迫りくる米英の物量にじりじりと後退を余儀なくされていた。
そして、ついに前年に設定された絶対国防圏であるマリアナ諸島周辺に米軍の攻勢が行われようとしていた。
それに対応するため、豊田大将からこの作戦での機動部隊の指揮を委任された小沢治三郎第一航空戦隊司令官は呉にて最後の作戦会議を行っていた。
「ここは敵の攻撃範囲外から一方的に攻撃するしかないように思えるが、どうだろう?」
小沢は会議に参加している者たちにそう諮った。
「それでよろしかと。」
栗田健男がそれに同意した。
それを皮切りにほかの者たちも首を縦に振った。
2人を除いて。
「それはあまりに非現実的です。第一、航空機は搭乗員なしには動きません。長時間の飛行で疲労困憊の中、戦闘が始まればどんあ強者でもたちまち堕とされます。」
それを聞いた会議は静寂に包まれた。
そこに追い打ちをかけるようにもう一人の男が言う。
「われわれはガダルカナルでも同じことをして大損害を被りました。わざわざもう一度する必要はないでしょう。」
「ではどうすればいのだ!?」
小沢はこぶしを机にぶつけながらそう叫んだ。
「お任せを。すでに作戦案は考えてきました。こちらを。」
男は小沢に資料を手渡す。
「…本当にこの作戦を実行するのだな?」
「はい。」
「一歩間違えば機動部隊が全滅するぞ。」
「重々承知です。責任は私が取ります。」
「…わかった。この作戦で行く。阿部艦長、君は艦に戻って激励を。貴艦がこの作戦の要だ。角田二航戦司令官は詰めの協議を行いたいので少し待っていただく。それでは、各自持ち場に戻れ!」
「「「はっ!」」」
こうしてあ号作戦の下地は決められた。
日時は5月1日。
決戦までに残された時間を有効に活用するため、阿部俊雄大佐もとい、大和型三番艦『信濃』艦長は急いで艦にもどって訓練の指示をだした。
それは他の空母でも同様であり、艦隊には異様な雰囲気が立ち込めていた。
マリアナ諸島周辺には日本の基地航空隊が点在していた。
今は亡き山本五十六大将はこれと空母機動部隊を用いて米海軍に大打撃を与える作戦を立案していた。
それはこの作戦にも組み込まれていた。
ラバウルからの引き抜きも行われ、新米搭乗員にたいしては死んだ方が楽に思えるほどの過酷な訓練を施していた。
全ては決戦に勝つために。
次の世代にこの日本を残すために。
そして、ついに前年に設定された絶対国防圏であるマリアナ諸島周辺に米軍の攻勢が行われようとしていた。
それに対応するため、豊田大将からこの作戦での機動部隊の指揮を委任された小沢治三郎第一航空戦隊司令官は呉にて最後の作戦会議を行っていた。
「ここは敵の攻撃範囲外から一方的に攻撃するしかないように思えるが、どうだろう?」
小沢は会議に参加している者たちにそう諮った。
「それでよろしかと。」
栗田健男がそれに同意した。
それを皮切りにほかの者たちも首を縦に振った。
2人を除いて。
「それはあまりに非現実的です。第一、航空機は搭乗員なしには動きません。長時間の飛行で疲労困憊の中、戦闘が始まればどんあ強者でもたちまち堕とされます。」
それを聞いた会議は静寂に包まれた。
そこに追い打ちをかけるようにもう一人の男が言う。
「われわれはガダルカナルでも同じことをして大損害を被りました。わざわざもう一度する必要はないでしょう。」
「ではどうすればいのだ!?」
小沢はこぶしを机にぶつけながらそう叫んだ。
「お任せを。すでに作戦案は考えてきました。こちらを。」
男は小沢に資料を手渡す。
「…本当にこの作戦を実行するのだな?」
「はい。」
「一歩間違えば機動部隊が全滅するぞ。」
「重々承知です。責任は私が取ります。」
「…わかった。この作戦で行く。阿部艦長、君は艦に戻って激励を。貴艦がこの作戦の要だ。角田二航戦司令官は詰めの協議を行いたいので少し待っていただく。それでは、各自持ち場に戻れ!」
「「「はっ!」」」
こうしてあ号作戦の下地は決められた。
日時は5月1日。
決戦までに残された時間を有効に活用するため、阿部俊雄大佐もとい、大和型三番艦『信濃』艦長は急いで艦にもどって訓練の指示をだした。
それは他の空母でも同様であり、艦隊には異様な雰囲気が立ち込めていた。
マリアナ諸島周辺には日本の基地航空隊が点在していた。
今は亡き山本五十六大将はこれと空母機動部隊を用いて米海軍に大打撃を与える作戦を立案していた。
それはこの作戦にも組み込まれていた。
ラバウルからの引き抜きも行われ、新米搭乗員にたいしては死んだ方が楽に思えるほどの過酷な訓練を施していた。
全ては決戦に勝つために。
次の世代にこの日本を残すために。
20
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
空母鳳炎奮戦記
ypaaaaaaa
歴史・時代
1942年、世界初の装甲空母である鳳炎はトラック泊地に停泊していた。すでに戦時下であり、鳳炎は南洋艦隊の要とされていた。この物語はそんな鳳炎の4年に及ぶ奮戦記である。
というわけで、今回は山本双六さんの帝国の海に登場する装甲空母鳳炎の物語です!二次創作のようなものになると思うので原作と違うところも出てくると思います。(極力、なくしたいですが…。)ともかく、皆さまが楽しめたら幸いです!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
日は沈まず
ミリタリー好きの人
歴史・時代
1929年世界恐慌により大日本帝國も含め世界は大恐慌に陥る。これに対し大日本帝國は満州事変で満州を勢力圏に置き、積極的に工場や造船所などを建造し、経済再建と大幅な軍備拡張に成功する。そして1937年大日本帝國は志那事変をきっかけに戦争の道に走っていくことになる。当初、帝國軍は順調に進撃していたが、英米の援蔣ルートによる援助と和平の断念により戦争は泥沼化していくことになった。さらに1941年には英米とも戦争は避けられなくなっていた・・・あくまでも趣味の範囲での制作です。なので文章がおかしい場合もあります。
また参考資料も乏しいので設定がおかしい場合がありますがご了承ください。また、おかしな部分を次々に直していくので最初見た時から内容がかなり変わっている場合がありますので何か前の話と一致していないところがあった場合前の話を見直して見てください。おかしなところがあったら感想でお伝えしてもらえると幸いです。表紙は自作です。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
【架空戦記】蒲生の忠
糸冬
歴史・時代
天正十年六月二日、本能寺にて織田信長、死す――。
明智光秀は、腹心の明智秀満の進言を受けて決起当初の腹案を変更し、ごく少勢による奇襲により信長の命を狙う策を敢行する。
その結果、本能寺の信長、そして妙覚寺の織田信忠は、抵抗の暇もなく首級を挙げられる。
両名の首級を四条河原にさらした光秀は、織田政権の崩壊を満天下に明らかとし、畿内にて急速に地歩を固めていく。
一方、近江国日野の所領にいた蒲生賦秀(のちの氏郷)は、信長の悲報を知るや、亡き信長の家族を伊勢国松ヶ島城の織田信雄の元に送り届けるべく安土城に迎えに走る。
だが、瀬田の唐橋を無傷で確保した明智秀満の軍勢が安土城に急速に迫ったため、女子供を連れての逃避行は不可能となる。
かくなる上は、戦うより他に道はなし。
信長の遺した安土城を舞台に、若き闘将・蒲生賦秀の活躍が始まる。
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる