空母鳳炎奮戦記

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南洋艦隊

空母対空母

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レキシントンはガダルカナル島まであと600㎞に迫っていた。
「日本の偵察機に発見されただと!?」
ブラウンにとってそれは青天の霹靂だった。
その偵察機は単発機だったらしい。
そしてこの海域に飛行場はない。
つまり、その偵察機は空母艦載機だということだ。
だがこれで参謀長を責めるのは違う。
あの状況ではいるかどうか分からない空母より、確実に戦果を挙げられる飛行場攻撃の方がやる価値があるのは自明だ。
「参謀長、こちらも偵察機を出せるか?」
「はい。ドーントレスを6機ほど。」
参謀長は自分を責めているようで少し気を落としていた。
「参謀長、なにも君の責任ではない。むしろ感謝している。決めかねていた我が艦隊に明確に方針を示してくれた。ありがとう。」
ブラウンがそう言うと、参謀長の顔は明るくなった。
「ありがとうございます!」
その数分後にドーントレスは放射状に索敵を開始した。


「我が艦隊からおよそ300㎞、攻撃は可能だな。」
井上は偵察報告から判断する。
「戦闘機を多めに編成した方がいいでしょう。アメリカ軍も電探を装備しているはずですから、待ち伏せされていても不思議はありません。」
「…なるほど、その考えはなかった。」
井上は素直に認める。
「それでは、2波に分けよう。」
「了解しました。」
そして3空母から艦戦50機、艦爆34機、艦攻28機を出撃していった。


レキシントンのレーダーが南洋艦隊の攻撃隊を発見したのは午後4時28分だった。
「敵は100機を超えます!」
参謀長の声からも驚きが伝ってくる。
どうやら、我々は敵戦力を見誤っていたようだ。
「ワイルドキャットとドーントレスで待ち伏せを行う!」
ドーントレスは急降下爆撃機ながらも爆弾を抱えなければ準戦闘機の活躍ができるというのが米軍の認識だった。
そして、53機が発艦した。


「襲撃が来るとすれば、そろそろだな。」
護衛戦闘機隊の隊長である笹井醇一あたりを注意する。
『敵機、上空より接近!』
その報告を聞いて、護衛に就いていた50機を急上昇する。
正面火力では、零戦と風翔のほうが格段に上だった。

初撃で半数のアメリカ軍戦闘機がぼろぼろになる。
残りの半数が攻撃隊を攻撃する。
だが、撃墜したのはわずかに艦爆3機と艦攻2機だけだった。
反撃として、降下してきた2倍の数の戦闘機に攻撃され少しの抵抗を示したが全滅した。


「敵編隊、突入してきます!」
参謀長は悲鳴に近い声で報告してくる。
「対空戦闘始め!」
ブラウンはそう命令するしかなった。


まず、艦爆隊が急降下を行う。
対空砲火はサウスダコタ級が2隻でレキシントンを守っていることもあり重厚だった。
4機が撃墜されながらも艦爆隊はレキシントンに6発を命中させた。
6発の500㎏徹甲弾は飛行甲板を貫通し格納庫で爆発した。


「司令!レキシントンはすでに艦としての戦闘力を失いました。退艦の用意を…。」
参謀がそう言いかけた時だった。
レキシントンは完全密閉がたの格納庫を採用していた。
そこに6発の徹甲弾が爆発し、混乱の中気化したガスが引火し大爆発を起こした。
その振動はこれから雷撃を行おうとしていた雷撃隊にも届き、急遽目標をサウスダコタとマサチューセッツに変更した。
艦爆隊も同様である。
戦艦は水雷防御は高かった。
そのため、魚雷は6発命中したが致命傷にはならなかった。
だが爆撃は違う。
いかなる戦艦も同様だが、設計は真珠湾攻撃以前に行われていて甲板にはそこまで装甲が厚くなかった。
どちらの戦艦も5発が命中し、被雷の損傷個所にさらなる負荷がかかった。
そして、サウスダコタの弾薬庫に引火し爆沈。
ここで明確な指揮官が不在な中艦隊は撤退を開始した。


「敵空母撃沈!」
その報告に艦橋では歓声が上がった。
だが、そんな時上空から米軍のドーントレスが現れた。
「敵機直上!」
そのドーントレスは目標を山城に据えた。
少しづつ距離が縮まっていく。
だが、対空砲火が命中し爆弾を抱えたまま山城の電探を掠め海中に激突した。
「あれが、執念か。」
井上は鳳炎からその様子を見守っていた。
救助が行われたが、すでに亡くなっていた。
そして、敬意をもってその一人の勇敢な搭乗員を夕日を背にしながら水葬した。
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