49 / 57
帝国議会議事堂での会議
しおりを挟む
5月25日。
犬養の死去に伴い首相代行に就任した石原は議会議事堂にいた。
「そろそろお時間です。閣下。」
安藤がそう声をかける。
「分かった。では行こう。」
石原はどこか弱弱しい声で答えた。
今朝から、帝都東京は異様な警戒態勢が敷かれていた。
万が一の事態に備えた陸軍1個師団が議事堂周辺を警備していて、空では疾風が轟音を轟かせていた。
そして、議事堂の中では日本により欧米の植民地から独立した国々の首長が集まっていた。
「今日はお集り下さりありがとうございます。只今より第一回大亜細亜会議を開催いたします。」
石原がそう言うと各国の首長は拍手でもって応えた。
その後、蒋介石、スカルノやホセユーロ、バアモウ等がアジアの結束の重要性を演説し、最後に石原が壇上に立った。
「大日本帝国を代表させていただいてアジアに住む幾億の人々にこの場を借りて伝えたいことがあります。」
石原は少し間を置いて口を開く。
「我々は犬養首相の元、東亜全局の平和のために戦い続けてまいりました。中頃からは東亜のみならず、全てのアジア民族を解放せんがためにその戦火を広げました。結果として現在、アジア全域は独立を手にしました。ですが、それでもな依然として欧米は征服の野望を無くしておりません。これ以上の流血は無駄なことであります。我々はここに欧米に講和を迫る東京宣言とアジア全域の独立を宣言する大亜細亜宣言を採択致します。」
石原が話し終わると議場は万雷の拍手に包まれた。
「お疲れ様でした、閣下 。」
安藤はそう労いの言葉をかけた。
「あぁ、これでこの戦争が終わればいいのだが。」
石原は思案気味な顔をしながら言った。
「英国は十中八九受諾するでしょう。ですが米国は…。」
「米国は応じないだろうな。彼らには世界最を敵に回しても勝ててしまう工業力がある。既に艦隊の再建に着手しているそうだ。」
「やはり彼の国に受諾させるには世論に打撃を与えなければいけませんね。そうなると、海軍のあれを使うしか…。」
安藤がそういうと石原は怒気を孕んだ声で言った。
「あれは最後の手段だ。通常の砲弾のように使った時、我が国は末代まで虐殺者罵りを受けることになるだろう。」
[…思慮不足で申し訳ございませんでした。」
すると石原は口を開いた。
「だが、このまま戦争が長引けば無駄な血が流れるのは確実だ。2か月後だ。2か月後までに米国が講和に応じなければ使用を許可する。」
安藤は石原の顔を見た。
苦悩と葛藤に満ちた顔だった。
犬養の死去に伴い首相代行に就任した石原は議会議事堂にいた。
「そろそろお時間です。閣下。」
安藤がそう声をかける。
「分かった。では行こう。」
石原はどこか弱弱しい声で答えた。
今朝から、帝都東京は異様な警戒態勢が敷かれていた。
万が一の事態に備えた陸軍1個師団が議事堂周辺を警備していて、空では疾風が轟音を轟かせていた。
そして、議事堂の中では日本により欧米の植民地から独立した国々の首長が集まっていた。
「今日はお集り下さりありがとうございます。只今より第一回大亜細亜会議を開催いたします。」
石原がそう言うと各国の首長は拍手でもって応えた。
その後、蒋介石、スカルノやホセユーロ、バアモウ等がアジアの結束の重要性を演説し、最後に石原が壇上に立った。
「大日本帝国を代表させていただいてアジアに住む幾億の人々にこの場を借りて伝えたいことがあります。」
石原は少し間を置いて口を開く。
「我々は犬養首相の元、東亜全局の平和のために戦い続けてまいりました。中頃からは東亜のみならず、全てのアジア民族を解放せんがためにその戦火を広げました。結果として現在、アジア全域は独立を手にしました。ですが、それでもな依然として欧米は征服の野望を無くしておりません。これ以上の流血は無駄なことであります。我々はここに欧米に講和を迫る東京宣言とアジア全域の独立を宣言する大亜細亜宣言を採択致します。」
石原が話し終わると議場は万雷の拍手に包まれた。
「お疲れ様でした、閣下 。」
安藤はそう労いの言葉をかけた。
「あぁ、これでこの戦争が終わればいいのだが。」
石原は思案気味な顔をしながら言った。
「英国は十中八九受諾するでしょう。ですが米国は…。」
「米国は応じないだろうな。彼らには世界最を敵に回しても勝ててしまう工業力がある。既に艦隊の再建に着手しているそうだ。」
「やはり彼の国に受諾させるには世論に打撃を与えなければいけませんね。そうなると、海軍のあれを使うしか…。」
安藤がそういうと石原は怒気を孕んだ声で言った。
「あれは最後の手段だ。通常の砲弾のように使った時、我が国は末代まで虐殺者罵りを受けることになるだろう。」
[…思慮不足で申し訳ございませんでした。」
すると石原は口を開いた。
「だが、このまま戦争が長引けば無駄な血が流れるのは確実だ。2か月後だ。2か月後までに米国が講和に応じなければ使用を許可する。」
安藤は石原の顔を見た。
苦悩と葛藤に満ちた顔だった。
16
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。

連合航空艦隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年のロンドン海軍軍縮条約を機に海軍内では新時代の軍備についての議論が活発に行われるようになった。その中で生れたのが”航空艦隊主義”だった。この考えは当初、一部の中堅将校や青年将校が唱えていたものだが途中からいわゆる海軍左派である山本五十六や米内光政がこの考えを支持し始めて実現のためにの政治力を駆使し始めた。この航空艦隊主義と言うものは”重巡以上の大型艦を全て空母に改装する”というかなり極端なものだった。それでも1936年の条約失効を持って日本海軍は航空艦隊主義に傾注していくことになる。
デモ版と言っては何ですが、こんなものも書く予定があるんだなぁ程度に思ってい頂けると幸いです。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

【架空戦記】炎立つ真珠湾
糸冬
歴史・時代
一九四一年十二月八日。
日本海軍による真珠湾攻撃は成功裡に終わった。
さらなる戦果を求めて第二次攻撃を求める声に対し、南雲忠一司令は、歴史を覆す決断を下す。
「吉と出れば天啓、凶と出れば悪魔のささやき」と内心で呟きつつ……。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる