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宝石の解放
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1942年6月1日。
ついに第二段作戦が発令。
各方面にて攻勢が始まった。
インド戦線においても例外ではなかった。
角田率いる三航戦と四航戦はインド洋にいた。
彼らはマドラスに上陸するインド国民軍と日本陸軍の支援のため配置転換でここに来た。
もともといた山口機動部隊がもう一方の作戦に駆りだされたからだ。
「全機、発艦!」
角田が命令する。
そうして戦爆連合98機を送り出して超甲巡以下の艦艇に上陸部隊の直掩を命じた。
「提督、英艦隊はほんとに出てこないのでしょうか?」
副官の一人がそう尋ねる。
「おそらくな。先の海戦で東洋艦隊が壊滅した分の補填は2か月程度ではできまい。」
そういうと副官は残念そうな顔をして下がっていった。
「俺も、戦いたかった。」
角田はそう零した。
船坂は完全に回復し、またも上陸戦に参加していた。
大発を乗り捨て、浜辺に向かう。
今回はセイロンの時と違い、弾幕が厚い。
艦砲射撃によっていくらかは破壊したが結構な数のトーチカが残っていた。
どうしようか迷っていると不意にある兵士達が飛び出した。
明らかに日本人とは違う。
するとトーチカからの銃声が止んだ。
船坂はトーチカまで走った。
そこには先ほど飛び出した兵士達とトーチカにいた兵士がなにか話していた。
トーチカの兵士もイギリス人とは程遠かった。
ここで船坂は理解した。
彼らはインド人なのだと。
トーチカの兵士は同胞を殺したくないから発砲をやめたのだと。
結局、マドラスにはイギリス人兵士は一人もいなかった。
大半がインド人を無理やり徴兵した部隊だった。
国民軍の兵士は国民軍に入るか、それとも故郷に帰るかを聞いていた。
彼らも香港やマレー半島、ビルマ戦線で捕虜になって国民軍に入った者たちだった。
結局、マドラスでの捕虜はほぼす全てが国民軍に入り即戦力として北上を開始した。
インド副王兼総督のヴィクター・ホープは絶望していた。
「戦線はどうなっている!」
彼は副官に怒鳴る。
「もうすでに崩壊しています!日本軍のマドラス上陸を皮切りにバングラディシュにおいて武装蜂起が起こり、補給が寸断されました!またインド人兵士が次々に寝返り、国内でも暴動が頻発しており警察では抑えきれません!」
「援軍は?援軍はどうした!チャーチル首相は送ると約束してくれていたではないか!」
「それが…北アフリカの総督にも同じことを約束しており、北アフリカの方が優先され我々には一兵たりとも来ません!」
ここでホープの絶望は頂点に達した。
そして弱弱しく言った。
「まさか外国だけではなく、内部にも二枚舌を使うとは。私だけでも生き残ってやる。」
そういうとホープは輸送機を手配させた。
「総督!本国からは死守命令が出されています!」
「だから何だというのだ?その命令が嘘か本当か分からないのだぞ。」
彼を乗せた輸送機はイエメンを目指した。
板倉は攻撃機の発艦を命令した。
「戦艦でも沈めたかったなぁ。」
「思いの外残存艦艇が少なかったですね。」
板倉の横の藤田も同意した。
「まあいいか。では藤田、少し暴れてこい。」
「はっ!」
そういうと藤田はすぐに航空機に乗り、飛んで行った。
母艦から発艦した藤田率いる30機の攻撃隊はムンバイの海軍基地を目指した。
そこに先の海戦で傷ついた軽巡以下の艦隊が停泊していると偵察機が発見したからだ。
「ん?あれは双発機か?なら落とせるな。」
藤田は遠くに見えた航空機に近づいていく。
そして機首に備え付けられていた7.7ミリをエンジンに撃ち込んだ。
するとエンジンはすぐに火を噴いて爆発した。
方角的にはイエメンを目指していたようだった。
結果的にムンバイにいた艦隊は半数が沈没。
残った半数もインドの降伏が近いと悟り、エジプトへ撤退した。
インドは2週間の間戦い続けたが6月18日、ついにデリーで武装蜂起が起き降伏した。
既にインド国民軍は国軍規模をほこっているため、2週間の間だけ日本軍の軍政が敷かれることになった。
「…それは…本当か。」
電話を持ったままチャーチルは膝から崩れ落ちた。
イギリスの宝石のインドの降伏の報が届いたからだ。
それはつまり、イギリスの没落だけではなく中東で日本軍と枢軸軍の挟み撃ちを受けることになることを表していた。
事実、イラン駐留軍はインド国境付近で攻撃を受けていた。
「もしスエズまで陥落したら…。」
チャーチルは最悪のシナリオを想定し、葉巻すら吸えないほどに狼狽していた。
日本がアメリカを引き連れて世界大戦に参加したと聞いた時とは似つかない様子で。
ついに第二段作戦が発令。
各方面にて攻勢が始まった。
インド戦線においても例外ではなかった。
角田率いる三航戦と四航戦はインド洋にいた。
彼らはマドラスに上陸するインド国民軍と日本陸軍の支援のため配置転換でここに来た。
もともといた山口機動部隊がもう一方の作戦に駆りだされたからだ。
「全機、発艦!」
角田が命令する。
そうして戦爆連合98機を送り出して超甲巡以下の艦艇に上陸部隊の直掩を命じた。
「提督、英艦隊はほんとに出てこないのでしょうか?」
副官の一人がそう尋ねる。
「おそらくな。先の海戦で東洋艦隊が壊滅した分の補填は2か月程度ではできまい。」
そういうと副官は残念そうな顔をして下がっていった。
「俺も、戦いたかった。」
角田はそう零した。
船坂は完全に回復し、またも上陸戦に参加していた。
大発を乗り捨て、浜辺に向かう。
今回はセイロンの時と違い、弾幕が厚い。
艦砲射撃によっていくらかは破壊したが結構な数のトーチカが残っていた。
どうしようか迷っていると不意にある兵士達が飛び出した。
明らかに日本人とは違う。
するとトーチカからの銃声が止んだ。
船坂はトーチカまで走った。
そこには先ほど飛び出した兵士達とトーチカにいた兵士がなにか話していた。
トーチカの兵士もイギリス人とは程遠かった。
ここで船坂は理解した。
彼らはインド人なのだと。
トーチカの兵士は同胞を殺したくないから発砲をやめたのだと。
結局、マドラスにはイギリス人兵士は一人もいなかった。
大半がインド人を無理やり徴兵した部隊だった。
国民軍の兵士は国民軍に入るか、それとも故郷に帰るかを聞いていた。
彼らも香港やマレー半島、ビルマ戦線で捕虜になって国民軍に入った者たちだった。
結局、マドラスでの捕虜はほぼす全てが国民軍に入り即戦力として北上を開始した。
インド副王兼総督のヴィクター・ホープは絶望していた。
「戦線はどうなっている!」
彼は副官に怒鳴る。
「もうすでに崩壊しています!日本軍のマドラス上陸を皮切りにバングラディシュにおいて武装蜂起が起こり、補給が寸断されました!またインド人兵士が次々に寝返り、国内でも暴動が頻発しており警察では抑えきれません!」
「援軍は?援軍はどうした!チャーチル首相は送ると約束してくれていたではないか!」
「それが…北アフリカの総督にも同じことを約束しており、北アフリカの方が優先され我々には一兵たりとも来ません!」
ここでホープの絶望は頂点に達した。
そして弱弱しく言った。
「まさか外国だけではなく、内部にも二枚舌を使うとは。私だけでも生き残ってやる。」
そういうとホープは輸送機を手配させた。
「総督!本国からは死守命令が出されています!」
「だから何だというのだ?その命令が嘘か本当か分からないのだぞ。」
彼を乗せた輸送機はイエメンを目指した。
板倉は攻撃機の発艦を命令した。
「戦艦でも沈めたかったなぁ。」
「思いの外残存艦艇が少なかったですね。」
板倉の横の藤田も同意した。
「まあいいか。では藤田、少し暴れてこい。」
「はっ!」
そういうと藤田はすぐに航空機に乗り、飛んで行った。
母艦から発艦した藤田率いる30機の攻撃隊はムンバイの海軍基地を目指した。
そこに先の海戦で傷ついた軽巡以下の艦隊が停泊していると偵察機が発見したからだ。
「ん?あれは双発機か?なら落とせるな。」
藤田は遠くに見えた航空機に近づいていく。
そして機首に備え付けられていた7.7ミリをエンジンに撃ち込んだ。
するとエンジンはすぐに火を噴いて爆発した。
方角的にはイエメンを目指していたようだった。
結果的にムンバイにいた艦隊は半数が沈没。
残った半数もインドの降伏が近いと悟り、エジプトへ撤退した。
インドは2週間の間戦い続けたが6月18日、ついにデリーで武装蜂起が起き降伏した。
既にインド国民軍は国軍規模をほこっているため、2週間の間だけ日本軍の軍政が敷かれることになった。
「…それは…本当か。」
電話を持ったままチャーチルは膝から崩れ落ちた。
イギリスの宝石のインドの降伏の報が届いたからだ。
それはつまり、イギリスの没落だけではなく中東で日本軍と枢軸軍の挟み撃ちを受けることになることを表していた。
事実、イラン駐留軍はインド国境付近で攻撃を受けていた。
「もしスエズまで陥落したら…。」
チャーチルは最悪のシナリオを想定し、葉巻すら吸えないほどに狼狽していた。
日本がアメリカを引き連れて世界大戦に参加したと聞いた時とは似つかない様子で。
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