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第三十九話影武者の言い分⑱『初恋』
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「ど……どういうお願いなんですか……それって……」
今私は多分酸欠の金魚みたいになっているだろう。
そんな私を優越感丸出しのミシェル様が、生温かい眼差しで見つめてきます。
腹立つ! なんか腹立つし!
「教えてやろうか、つまりこういうことだ」
といってミシェル様が私の手を取りました。
(手のつなぎ方が、恋人繋ぎ、だと?)
「は……はあ? い……意味がわかりませんけど?」
言葉だけは勢いがあって、だけどお互いに恥ずかしくて、
そっぽを向きますが、手は繋ぎっぱなしです。
「ドキドキしてる?」
そういう台詞を素面で、耳元に囁くな!
動悸が半端なくって、ただでさえ酸欠なのに……。
「は、はあ? べ……べべべ別にっ!
ミシェル様相手に今更手を繋いだって……。
私は……全然……なんとも……」
駄目だ。もう、強がれない。
何言っても、声がひっくり返ってしまいます。
わ~、色々な意味で泣きそうです。
「私はすっごいドキドキしてる。
お前に見せてやりたいくらいだ。
触ってみる?」
ミシェル様の目がマジです。
ちょっと待て、『友達以上恋人未満』ってこういう羞恥プレイをいうのでしょうか。
ある意味、キスより破壊力すごくない?
「ん?ん?ん? さ……触ってって……?」
その言葉に動揺しまくって、私は今、挙動不審がこの上ないことになっています。
「お前にだったら……いいよ」
下から斜め45度に見上げる視線。
そ……そんな乙女チックに言われても、困ります。
ちょっと待って? 状況を冷静に分析してみようか。
ミシェル様ってば、今絶賛女装中なんです。
これで男装した私がミシェル様の胸に手を当ててたら、
完璧に変態じゃないですか。
「は~い、間もなく9時になりますので、
ミシェル様とゼノア様はこれでお暇いたしましょうね」
頃合いを見はがらったように、アレックが控室を覗き込みました。
助かった~、マジ助かった~。
ちょっと涙目でアレックに心の中で感謝を捧げました。
「ふ~ん、ファーストキスの後で、
恋人繋ぎですかぁ~。
ふ~ん、そうでしたか~」
アレックが意味あり気な視線を、送ってきます。
「あの……アレック……これには……そのっ……」
何? 何なの? この居たたまれない感じはっ!
お宅の息子さんの唇を奪ったこと、もしかして怒っていらっしゃるのですか?
責任をとれと?
そういうことですか?
「うん、まあ、そういう感じかな?
そういうわけだから、今度パパンと母上には正式に紹介しようかなって思ってる」
ミシェル様、何さらっと外堀埋めてんの?
色々なことすっ飛ばして
結婚させられる前提で、話進んでる感じなんですけど?
「ええ、まあ、そういうことでしたら……わかりました。
では早速ロザリアに連絡して予定を調整し、そのように取り計らいますので
家で一度食事会でも……」
執事さん? ねぇ、落ち着いて?
私まだ12歳。
これでも一応隣国の王太子(影武者)だぞ?
性別の秘密とか色々あってですねぇ……。
それにしてもバカの破壊力ってすごいです。
私が強烈に抱いていたコンプレックスを、ミシェル様は全く気にしていないのです。
これって案外すごいことだと思います。
器でかすぎ?
とか思っている自分はかなり末期です。
「とりあえず、その辺の話はまた後でいたしましょう。
今夜はお疲れでしょう? ミシェルも着替えて、東宮殿に帰りましょう」
アレックの指示により、私たちは東宮殿へと返されることになりました。
アレックはロザリア様の補佐でその場を離れられないらしく、
東宮殿付の侍女が車で迎えに来ました。
「お二方を東宮殿にお連れするように。
それとこちらを処分しておいてくれ」
そう言ってアレックは侍女に、白薔薇の花束を渡しました。
「まあ、何と見事な」
花束に見とれてうっとりとする侍女に、アレックは少し複雑な顔をしました。
「お二人ともお疲れ様でしたね、今夜はゆっくりとお休みください」
そう言ってアレックが、労ってくれました。
「アレックこそ大変ですね。宴は遅くまで続くのでしょう?」
そう気遣うと、
「まあ、ある程度で切り上げて戻るつもりではいるのですが、
不本意ながらも今夜は東宮殿を留守にしてしまうことをお許しください」
そう言ってアレックが私に頭を下げました。
「いえ、そんなつもりでは……」
恐縮です。
お義父さん。
頭を上げて下さい。
そんなことを心の中で思ってしまった自分の頭は、かなりヤバいです。
いや、もう疲れているのですよ。
全ては疲労のせいです。
疲れてないわけ、ないじゃないですか。
ハハハ……。
って……、車が動き出したらまたミシェル様に手を繋がれましたし。
恥ずかしいので寝たふりをします。
私は目を閉じて、ミシェル様は窓の外を見ています。
だけどお互いに手は繋いだまま。
ミシェル様に『友達以上、恋人未満』について聞いてみたいけど、
なんかこれ以上踏み込んではいけない気もします。
『お互いに両想いにはなったけど、まだ恋人ではない』
という状態のことをいうのでしょうか。
だとしたらお互い好き同士なのに、報われないですね。
それは前以上に温もりはそこにあって、だけどひどく不安定な関係で、
優しくされればされるほど、不安になってしまうのです。
だからきっとこうして私たちは手を繋ぐんだろうな。
私は寝たふりをして、ミシェル様の肩に頭を持たせかけました。
今私は多分酸欠の金魚みたいになっているだろう。
そんな私を優越感丸出しのミシェル様が、生温かい眼差しで見つめてきます。
腹立つ! なんか腹立つし!
「教えてやろうか、つまりこういうことだ」
といってミシェル様が私の手を取りました。
(手のつなぎ方が、恋人繋ぎ、だと?)
「は……はあ? い……意味がわかりませんけど?」
言葉だけは勢いがあって、だけどお互いに恥ずかしくて、
そっぽを向きますが、手は繋ぎっぱなしです。
「ドキドキしてる?」
そういう台詞を素面で、耳元に囁くな!
動悸が半端なくって、ただでさえ酸欠なのに……。
「は、はあ? べ……べべべ別にっ!
ミシェル様相手に今更手を繋いだって……。
私は……全然……なんとも……」
駄目だ。もう、強がれない。
何言っても、声がひっくり返ってしまいます。
わ~、色々な意味で泣きそうです。
「私はすっごいドキドキしてる。
お前に見せてやりたいくらいだ。
触ってみる?」
ミシェル様の目がマジです。
ちょっと待て、『友達以上恋人未満』ってこういう羞恥プレイをいうのでしょうか。
ある意味、キスより破壊力すごくない?
「ん?ん?ん? さ……触ってって……?」
その言葉に動揺しまくって、私は今、挙動不審がこの上ないことになっています。
「お前にだったら……いいよ」
下から斜め45度に見上げる視線。
そ……そんな乙女チックに言われても、困ります。
ちょっと待って? 状況を冷静に分析してみようか。
ミシェル様ってば、今絶賛女装中なんです。
これで男装した私がミシェル様の胸に手を当ててたら、
完璧に変態じゃないですか。
「は~い、間もなく9時になりますので、
ミシェル様とゼノア様はこれでお暇いたしましょうね」
頃合いを見はがらったように、アレックが控室を覗き込みました。
助かった~、マジ助かった~。
ちょっと涙目でアレックに心の中で感謝を捧げました。
「ふ~ん、ファーストキスの後で、
恋人繋ぎですかぁ~。
ふ~ん、そうでしたか~」
アレックが意味あり気な視線を、送ってきます。
「あの……アレック……これには……そのっ……」
何? 何なの? この居たたまれない感じはっ!
お宅の息子さんの唇を奪ったこと、もしかして怒っていらっしゃるのですか?
責任をとれと?
そういうことですか?
「うん、まあ、そういう感じかな?
そういうわけだから、今度パパンと母上には正式に紹介しようかなって思ってる」
ミシェル様、何さらっと外堀埋めてんの?
色々なことすっ飛ばして
結婚させられる前提で、話進んでる感じなんですけど?
「ええ、まあ、そういうことでしたら……わかりました。
では早速ロザリアに連絡して予定を調整し、そのように取り計らいますので
家で一度食事会でも……」
執事さん? ねぇ、落ち着いて?
私まだ12歳。
これでも一応隣国の王太子(影武者)だぞ?
性別の秘密とか色々あってですねぇ……。
それにしてもバカの破壊力ってすごいです。
私が強烈に抱いていたコンプレックスを、ミシェル様は全く気にしていないのです。
これって案外すごいことだと思います。
器でかすぎ?
とか思っている自分はかなり末期です。
「とりあえず、その辺の話はまた後でいたしましょう。
今夜はお疲れでしょう? ミシェルも着替えて、東宮殿に帰りましょう」
アレックの指示により、私たちは東宮殿へと返されることになりました。
アレックはロザリア様の補佐でその場を離れられないらしく、
東宮殿付の侍女が車で迎えに来ました。
「お二方を東宮殿にお連れするように。
それとこちらを処分しておいてくれ」
そう言ってアレックは侍女に、白薔薇の花束を渡しました。
「まあ、何と見事な」
花束に見とれてうっとりとする侍女に、アレックは少し複雑な顔をしました。
「お二人ともお疲れ様でしたね、今夜はゆっくりとお休みください」
そう言ってアレックが、労ってくれました。
「アレックこそ大変ですね。宴は遅くまで続くのでしょう?」
そう気遣うと、
「まあ、ある程度で切り上げて戻るつもりではいるのですが、
不本意ながらも今夜は東宮殿を留守にしてしまうことをお許しください」
そう言ってアレックが私に頭を下げました。
「いえ、そんなつもりでは……」
恐縮です。
お義父さん。
頭を上げて下さい。
そんなことを心の中で思ってしまった自分の頭は、かなりヤバいです。
いや、もう疲れているのですよ。
全ては疲労のせいです。
疲れてないわけ、ないじゃないですか。
ハハハ……。
って……、車が動き出したらまたミシェル様に手を繋がれましたし。
恥ずかしいので寝たふりをします。
私は目を閉じて、ミシェル様は窓の外を見ています。
だけどお互いに手は繋いだまま。
ミシェル様に『友達以上、恋人未満』について聞いてみたいけど、
なんかこれ以上踏み込んではいけない気もします。
『お互いに両想いにはなったけど、まだ恋人ではない』
という状態のことをいうのでしょうか。
だとしたらお互い好き同士なのに、報われないですね。
それは前以上に温もりはそこにあって、だけどひどく不安定な関係で、
優しくされればされるほど、不安になってしまうのです。
だからきっとこうして私たちは手を繋ぐんだろうな。
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