悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那

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 そうして色々としていればすぐに3年がたった。今日から学園に入学だ。確実にメインストーリー開始じゃんか、笑えない。というか泣きそう。


 でも、この3年、様々な収穫はあった。まず一つ、攻略対象が3名は判明した。


 一人は言わずもがな、私の義弟のカイル・リヴィエール。相変わらずのくるくるぴょんぴょんした可愛い栗色の癖っ毛を遊ばせつつ、色白で中性的な美少年になった。3年も経つと、肩幅ががっしりして背も伸びて男の子っぽさが増したけどそれでも可愛い。僕っ子のまま育ってくれたの本当に助かる。ほんとマジで可愛い。製作陣はキャラクター制作だけは神っていると思う。ストーリーと設定はクズだけれど。そしてこれは意味がわからないんだけれど、頭が良すぎて飛び級でなぜか二年も先に同時で私と入学するらしい。ゲームの補正かしら、と初めて聞いたときは乾いた笑いがちょっと漏れた。転生者の私並みに今の時点で勉強できるとか本当に意味がわからない。まあ可愛いからいいけど。


 そして二人目はこの国の第一王子だった。アルベルト・クロスフォード殿下。ちなみに同い年。金髪碧眼の俺様系だった。一人はいるよね、こういうキャラ。私、格的にはやっぱり公爵令嬢なんで残念ながら記憶を思い出したときには既に、親同士の口約束でこいつと婚約していた。もちろん丁重にお断りして破棄してきた。勝手に決めないでもらえます? 親は両方残念そうだったが、どちらかが拒否したらまぁやめとこうかくらいのノリだったらしく結構簡単に破棄できた。婚約なんてしていたら破滅フラグまっしぐらだったと思われるのでこれは割と神対応だったと思う。そもそも個人的に俺様キャラは好きじゃないからこれからも攻略対象云々を差し引いても仲良くしたくない人ナンバー1だった。婚約とか以ての外だわ。まじ無理。俺様は自分勝手と紙一重なのだ。うちの弟を見習え。


 そして三人目。彼は今年から学園で教師として勤める予定の侯爵令息だ。ウィリアム・アークライト、22歳。年上一枚上手系イケメン。アシンメトリーに伸ばされた濃紺の髪が大人っぽさを演出してて、あ、この人は確実に攻略対象だなってステータスボードを見なくても分かった。オーラが異彩を放っていた。なぜ私がこの教師(予定)と面識があるのかというと、彼が私の家庭教師に来ていたからである。前世的に言うならアルバイトといったところか。さすが公爵家、時給がすごくいいらしい。こそっと教えてくれた。わりと茶目っ気のある人なのだ。この人は割と嫌いじゃない。攻略対象でなければぜひ仲良くしたいくらいだ。


 あと何人いるかは知らないけれど、今のところ分かっているのはこの三人。他はまぁ、いるなら学園に入ったら見つかるだろう。


 そして他に分かったこと。これが一番の収穫だった。あの意味不スキル、フラグ破壊レベル∞の詳細がほとんど判明したのだ。まず、フラグは2色あるらしい。初めて見たとき弟の頭に出ていた黄色。これはある程度の大きめの怪我、事件のときに現れるらしい。そしてもう一つが赤色。これは生死に関わるような重大な何かが起こるときに現れる。これのときは本当にやばい。今まで見たのも3回程度で、一度目は通り魔、二度目は転落、三度目は殺人事件未遂。いやそれだけ死にそうな現場に出会ってるのも中々だと思われるかもしれないが、この世界中々に治安が悪い。前世のしょっちゅう人が死ぬ某探偵ものの少年漫画のあの町と張るくらいには、というのは言いすぎかもしれないがそのくらいには治安が悪い。今回の主題ではないので割愛するけれど、とにかく追い剥ぎ、強盗、置き引き、誘拐、襲撃、暗殺待ったなしの犯罪のオンパレードなのである。乙女ゲームの世界のくせにファンシーな世界観じゃないのよね。もっとキラキラ~ふわふわ~な感じにしてほしかった。


 はぁー、と大きくため息をつきつつ伸びをして部屋を出る。外には私を待っているのであろうカイルの姿が。普通に立っているだけで絵になるの本当に神だわ。眼福眼福、なんて心の内で呟き駆け寄る。


「姉さん! そろそろ行く?」

「そうね、カイル。ちゃんと荷物持った?」

「もちろん。姉さんこそ大丈夫? いつもそそっかしいから心配なんだけど」

「弟に心配されるほどじゃないってば。ちゃんと持ってるわよ。じゃあ、行きましょうか」


さぁいざ戦いの場へ。気合を入れるためにぺちんと両頬を叩いたら弟に、もぉ、そんなことしたら傷ついちゃうでしょ!と頬を膨らませて言われた。可愛い、好き。

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