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フェルシア王国・陰謀編
夜中の密談
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あれから飛ぶように時は過ぎ、これもまた豪華な夕食を頂いてからしばらくして、私とアリアは寝室にいた。トールはやはりショックで疲れているらしかったので、夕食の後に無理やり諭して部屋で眠らせた。ロイに頼んで確認してもらったところ、驚くほどすぐに眠りに落ちてしまったらしい。
「まだ寝ない、よね?」
「まぁ、ね。トールには見せないほうがいいと思ったからこれを今のうちに終わらせないといけないもの」
ポケットに忍ばせていた、例の黒い魔石を取り出す。魔法が万が一にも発動しないように、魔力はすでに抜いてしまってあるので今は術式が刻まれているだけのただの石ころに成り果ててはいるが、これは相当のものだから解析しないというわけにはいかないのだ。
「だよね。見たら傷つくだろうし、早くやっちゃお」
「ええ、じゃあ早速始めるわよ」
魔石に右手をかざし、目を瞑る。そして深呼吸を数回。
さぁ、集中しなければ。術式の解析ほど繊細な作業は中々にない。術式を一つずつ、壊すことなく紐解いていかなければならないのだから。
「アリア、メモを頼んでも?」
「ん、任せて」
「……一番外に解析阻害の術式」
「はい」
魔力を流し込み、ぱりん、と割るイメージを。闇魔法で書き込まれた術式は光属性だけの魔力を流し込めば反発を起こして容易に壊せる。ただ、流しすぎると中の術式まで破壊してしまうから中々に難しい。術式は一番上のものしか読めないから、壊してしまえばゲームオーバー。
もう一度だけ深く息をつき、指先に体中を流れる魔力を収束させる。人差し指だけを魔石に乗せて、流し込む。ほんの少し、ほんの少しだけ。水滴を垂らす程度に。それをしばらく繰り返していれば、術式がパキリと壊れる感じがした。急いでそこで魔力を止める。
「……大丈夫そ?」
「……なんとか、ね。やっぱり苦手だわ」
「解析難しいもんね…… 私もできたらよかったんだけど……」
「あー、苦手だったわよね……」
思い出すのはいつしかの実験器具横着事件。彼女ほどの大きな魔力を完璧に扱うのは、バケツでビーカーに水を完璧に注ぐのと同じくらいには難しいから仕方ないのだけれど、それを考慮しても絶句してしまうくらい彼女は細かい魔法が苦手なのだ。だからもちろん、解析も苦手。授業は単位が取れずに危うく留年しかけていたっけ……
と、ぼんやり思い出してふと口元を綻ばせると、アリアがジト目でこちらを見つめる。
「なによぉ……」
「……解析の授業、苦手だったよねって」
「あぁ…… あれね…… もう二度とやりたくないや……」
遠い目をするのでつい吹き出すと、勿論ジト目で再び見つめられることになった。
「……あー、ええ。時間もないし、解析の続きをしましょうか。ね?」
「誤魔化すの下手か。まぁ、時間ないのは確かだし今回は見逃してあげるー」
「そういうところ好きよ」
「でしょ?」
と、雑談もほどほどにして、魔石に向き直る。
「これは……隠蔽魔法の術式ね。相当複雑に何重にも重ねて効果を数十倍に跳ね上げているわ」
「て、ことは、中々の手練れかな?」
「みたいね」
さっきと同じように、術式を壊す。ぱりん、と割れた気配の先に術式はない。
「あとは魔石の情報を読み取るだけ、ね」
「うん、流石だね。メモはばっちりだから、いつでも進めちゃってー」
アリアに頷き返し、詠唱する。
「闇よ、魔石に秘めしその魔力の全てを暴け」
途端に、脳内に情報が流れ込んでくる。映像が流れ込んでくるようなそれをぼうっと眺めていれば、ふとした違和感に私は声を上げた。
「……嘘。製作者が、一人じゃない……」
「まだ寝ない、よね?」
「まぁ、ね。トールには見せないほうがいいと思ったからこれを今のうちに終わらせないといけないもの」
ポケットに忍ばせていた、例の黒い魔石を取り出す。魔法が万が一にも発動しないように、魔力はすでに抜いてしまってあるので今は術式が刻まれているだけのただの石ころに成り果ててはいるが、これは相当のものだから解析しないというわけにはいかないのだ。
「だよね。見たら傷つくだろうし、早くやっちゃお」
「ええ、じゃあ早速始めるわよ」
魔石に右手をかざし、目を瞑る。そして深呼吸を数回。
さぁ、集中しなければ。術式の解析ほど繊細な作業は中々にない。術式を一つずつ、壊すことなく紐解いていかなければならないのだから。
「アリア、メモを頼んでも?」
「ん、任せて」
「……一番外に解析阻害の術式」
「はい」
魔力を流し込み、ぱりん、と割るイメージを。闇魔法で書き込まれた術式は光属性だけの魔力を流し込めば反発を起こして容易に壊せる。ただ、流しすぎると中の術式まで破壊してしまうから中々に難しい。術式は一番上のものしか読めないから、壊してしまえばゲームオーバー。
もう一度だけ深く息をつき、指先に体中を流れる魔力を収束させる。人差し指だけを魔石に乗せて、流し込む。ほんの少し、ほんの少しだけ。水滴を垂らす程度に。それをしばらく繰り返していれば、術式がパキリと壊れる感じがした。急いでそこで魔力を止める。
「……大丈夫そ?」
「……なんとか、ね。やっぱり苦手だわ」
「解析難しいもんね…… 私もできたらよかったんだけど……」
「あー、苦手だったわよね……」
思い出すのはいつしかの実験器具横着事件。彼女ほどの大きな魔力を完璧に扱うのは、バケツでビーカーに水を完璧に注ぐのと同じくらいには難しいから仕方ないのだけれど、それを考慮しても絶句してしまうくらい彼女は細かい魔法が苦手なのだ。だからもちろん、解析も苦手。授業は単位が取れずに危うく留年しかけていたっけ……
と、ぼんやり思い出してふと口元を綻ばせると、アリアがジト目でこちらを見つめる。
「なによぉ……」
「……解析の授業、苦手だったよねって」
「あぁ…… あれね…… もう二度とやりたくないや……」
遠い目をするのでつい吹き出すと、勿論ジト目で再び見つめられることになった。
「……あー、ええ。時間もないし、解析の続きをしましょうか。ね?」
「誤魔化すの下手か。まぁ、時間ないのは確かだし今回は見逃してあげるー」
「そういうところ好きよ」
「でしょ?」
と、雑談もほどほどにして、魔石に向き直る。
「これは……隠蔽魔法の術式ね。相当複雑に何重にも重ねて効果を数十倍に跳ね上げているわ」
「て、ことは、中々の手練れかな?」
「みたいね」
さっきと同じように、術式を壊す。ぱりん、と割れた気配の先に術式はない。
「あとは魔石の情報を読み取るだけ、ね」
「うん、流石だね。メモはばっちりだから、いつでも進めちゃってー」
アリアに頷き返し、詠唱する。
「闇よ、魔石に秘めしその魔力の全てを暴け」
途端に、脳内に情報が流れ込んでくる。映像が流れ込んでくるようなそれをぼうっと眺めていれば、ふとした違和感に私は声を上げた。
「……嘘。製作者が、一人じゃない……」
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