13 / 28
リリーシェ王国・婚約編
アイミヤと両親と話し合い
しおりを挟む
「お初にお目にかかります、ヴィオテール公爵。突然こうして訪問することになり申し訳ございません。私はトール・フェルシアと申します」
そうトールがにこやかに告げれば、お父様は一瞬目を見張ってからすぐに笑顔で取り繕った。
大方、フェルシアの王族の予期せぬ来訪に度肝を抜かれた、というところか。
「……フェルシア…… 隣国の王族、ということでしょうか」
「ええ、フェルシアの第三王子です」
◇◇◇
卒業パーティから数時間。領地にあるヴィヴィテールの屋敷に到着して、話し合いの席にいるのは私とトール、父母、そしてアイミヤだ。
話し合い、といっても返事は九割方了承に決まっている。婚約者を失った私の体の良い引取先ができたのに断るはずがない。
しばらくトールが流暢に私との出会いを説明したことにより、父はすぐに事情を飲み込んで、トールに問う。
「……つまり、お忍びで学園に留学しに来ていた際にフィティアに出会い、婚約したいという話になったと。そういうことだと考えてもよろしいでしょうか?」
「はい。なので、卒業を機にこうして訪ねさせていただきました。突然ながら迎え入れてくださったこと、非常に感謝しております」
「なるほど。わざわざ婚約の報告をしてくださり有り難いです」
やはり予想通りに、それからは反対されることは勿論なく、トントン拍子ですんなりと話が進み、婚約は承認された。
「また明日。ちょっとでも困ったことがあったらすぐに呼んで」
「ええ」
そしてトールは客室に案内されることになったので話し合っていた応接間でお別れをした。
◇◇◇
コンコン、と部屋のドアが叩かれる。メイドだろうか。とりあえず、ドアノブを引く。
「……っ」
ドアの前にいたのは、アイミヤだった。
「お姉様、少しいいですか?」
「……アイミヤ」
思わず体を固くしてしまって、目を見開いてしまう。
「婚約のお祝いをしに来ましたの。とても素敵な婚約者を見つけられてよかったですわね。このままでは、お姉様はドルード様のところにでも嫁ぐことになっていたでしょうし」
口元は綺麗な弧を描いていたが、アイミヤの目は笑っていない。馬鹿にしているような、嘲笑するような、嫌な色を纏っている。
「……」
「ふふ、ねぇお姉様。私の部屋で紅茶を一杯、飲んでいかれない? この前、茶葉を取り寄せましたの。久々にね、折角ですしいかがですか?」
「……疲れているの、ごめんなさい」
「そう、残念。……あぁ、そうだ。これからトール様とお話ししてきますね。義妹になるわけですし。お姉様と飲もうと思っていた紅茶、折角なので持っていきましょ」
「は」
なるほど、お茶会をしろという脅しらしい。……あぁ、本当に。アイミヤのこういうところが苦手で苦手でたまらない。私がアイミヤをトールと会わせたくないということを理解して、それを利用してくるようなところが。
目を細めて、私の返答を待つアイミヤ。答えはイエスだと確信したような自信にあふれた笑みを浮かべている。
アイミヤに苛立ちが募るが、そんな表情を見せるのは自分から敗北を認めるようなもの。笑顔でその感情を握りつぶして、彼女の思い通りであろう返事をした。
「分かったわ、一杯だけなら」
「ふふ、嬉しいわ」
にこにこと笑って私の前を歩いていくアイミヤの後ろを、私は静かに着いていった。
そうトールがにこやかに告げれば、お父様は一瞬目を見張ってからすぐに笑顔で取り繕った。
大方、フェルシアの王族の予期せぬ来訪に度肝を抜かれた、というところか。
「……フェルシア…… 隣国の王族、ということでしょうか」
「ええ、フェルシアの第三王子です」
◇◇◇
卒業パーティから数時間。領地にあるヴィヴィテールの屋敷に到着して、話し合いの席にいるのは私とトール、父母、そしてアイミヤだ。
話し合い、といっても返事は九割方了承に決まっている。婚約者を失った私の体の良い引取先ができたのに断るはずがない。
しばらくトールが流暢に私との出会いを説明したことにより、父はすぐに事情を飲み込んで、トールに問う。
「……つまり、お忍びで学園に留学しに来ていた際にフィティアに出会い、婚約したいという話になったと。そういうことだと考えてもよろしいでしょうか?」
「はい。なので、卒業を機にこうして訪ねさせていただきました。突然ながら迎え入れてくださったこと、非常に感謝しております」
「なるほど。わざわざ婚約の報告をしてくださり有り難いです」
やはり予想通りに、それからは反対されることは勿論なく、トントン拍子ですんなりと話が進み、婚約は承認された。
「また明日。ちょっとでも困ったことがあったらすぐに呼んで」
「ええ」
そしてトールは客室に案内されることになったので話し合っていた応接間でお別れをした。
◇◇◇
コンコン、と部屋のドアが叩かれる。メイドだろうか。とりあえず、ドアノブを引く。
「……っ」
ドアの前にいたのは、アイミヤだった。
「お姉様、少しいいですか?」
「……アイミヤ」
思わず体を固くしてしまって、目を見開いてしまう。
「婚約のお祝いをしに来ましたの。とても素敵な婚約者を見つけられてよかったですわね。このままでは、お姉様はドルード様のところにでも嫁ぐことになっていたでしょうし」
口元は綺麗な弧を描いていたが、アイミヤの目は笑っていない。馬鹿にしているような、嘲笑するような、嫌な色を纏っている。
「……」
「ふふ、ねぇお姉様。私の部屋で紅茶を一杯、飲んでいかれない? この前、茶葉を取り寄せましたの。久々にね、折角ですしいかがですか?」
「……疲れているの、ごめんなさい」
「そう、残念。……あぁ、そうだ。これからトール様とお話ししてきますね。義妹になるわけですし。お姉様と飲もうと思っていた紅茶、折角なので持っていきましょ」
「は」
なるほど、お茶会をしろという脅しらしい。……あぁ、本当に。アイミヤのこういうところが苦手で苦手でたまらない。私がアイミヤをトールと会わせたくないということを理解して、それを利用してくるようなところが。
目を細めて、私の返答を待つアイミヤ。答えはイエスだと確信したような自信にあふれた笑みを浮かべている。
アイミヤに苛立ちが募るが、そんな表情を見せるのは自分から敗北を認めるようなもの。笑顔でその感情を握りつぶして、彼女の思い通りであろう返事をした。
「分かったわ、一杯だけなら」
「ふふ、嬉しいわ」
にこにこと笑って私の前を歩いていくアイミヤの後ろを、私は静かに着いていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる