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リリーシェ王国・婚約編
これからのお話
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それから他愛もないことをあーだこーだと話していると、カチャ、とバルコニーと会場を繋ぐ扉が開いた。アリアだ。グレープジュースらしき紫の液体が入ったシャンパングラスを三つ乗せたトレーを片手で持っている。そして反対の手でこちらに手を振っている。その瞬間ぐらりとグラスの水面が揺れた。……うわ、危ない。
「お二人さん、話は纏まった?」
「おかげでね、ありがとう。……アリア、それ危ないわよ?」
トレーを私が指差すと、アリアは楽しげに笑いながらグラスを宙に浮かせて、一つは自分に、あと二つはそれぞれ私とトールの方へ向かわせる。
危なっかしく揺れるグラスが怖くて私もトールも急いでそれを受け取った。……あぁ、危ない。あんまり得意じゃないくせして、こういうことをしようとするアリアのお茶目さがとにかく怖い。
「よし成功」
「危なかったわよ……」
「……あはは」
じとっと目を見つめるとあからさまに逸らされた。
「で、話が纏まったってことは、ティアはフェルシアに行っちゃうってこと?」
「……あ、確かにそうね」
「会えなくなるのかぁ」
「適当にどこかしらで帰ってくるわよ。……たぶんね」
確かにフェルシアに嫁いでしまえば、もう戻ってくるのは中々厳しいだろう。……うーん、困った。アリアは唯一の本当の女友達なのに。会えなくなるのは辛い。
「アリア、フィティア。そう悩まなくても、アリアさえ良ければうちの国に来たらいいよ」
そこでトールの助け舟が。私達は勿論目を輝かせる。
「あの、アリア、こっちに戻ってこれなくなっちゃうけど……」
一緒に来てほしいの、と言い切る前に、アリアは身を乗り出して声を上げた。
「いいよ、行けるなら行きたい! 平民の方でも魔法が使えるせいであぶれてたし、貴族でもやっていけそうにないしね」
「よし、決まりだね。アリアの方はフェルシアの魔導士としての雇いあげでいけると思うから……」
「婚約の報告、ね」
こちらに目線を向けてきたトールに、分かってるの意を込めて深く頷く。
私の父の了承は簡単に取れるだろう。が、問題なのは王の方だ。
私は全属性だ。火、水、風、木、光、闇。これらの六つの属性をすべて有している。その証に、この世界を創ったと言われている大精霊と同じセルリアンブルーの瞳、いわゆる魔眼をしているので誰が見てもそれは明らかなこと。
そしてその魔眼の持ち主は同世代に平均で三人現れればいいところ。現に、今この国では私と私の祖母の二人だけだ。魔眼は国の魔術を発展させる、稀有で大切な存在なのだ。だからこそ、王は私と王子を婚約させてまで私のことを囲い込んでいた。
そんな王が意気揚々と諸手を挙げて私を差し出すわけがない。
「……とりあえず、今日は一緒にうちの実家に帰って婚約の報告を両親にしに帰りたいのだけれど、いいかしら、トール?」
「勿論。明日か明後日には王家と話し合いができればって思ってるし。あ、あとアリアをうちの国へ迎え入れる手続きは僕がしておくよ」
話がすんなり纏まり、宴もたけなわといったところだったので、私達はそこで一度解散することになった。着替えやアリアの入国準備を済ませてから、私とトールは再集合という段取りだ。
ちなみにアリアはフェルシア籍になるので手続きが終わり次第、トールやその御付き達に与えられている別棟にて一時的に居住して貰う予定らしい。
「じゃあ、また後で。アリアは着替え終わったら別棟の入口手前辺りまで来てもらえると助かる」
「了解ー! 早めに向かうね」
「じゃあ、また後でね」
それぞれ挨拶をして、目立たないように私達はそれぞれ会場から出た。
「お二人さん、話は纏まった?」
「おかげでね、ありがとう。……アリア、それ危ないわよ?」
トレーを私が指差すと、アリアは楽しげに笑いながらグラスを宙に浮かせて、一つは自分に、あと二つはそれぞれ私とトールの方へ向かわせる。
危なっかしく揺れるグラスが怖くて私もトールも急いでそれを受け取った。……あぁ、危ない。あんまり得意じゃないくせして、こういうことをしようとするアリアのお茶目さがとにかく怖い。
「よし成功」
「危なかったわよ……」
「……あはは」
じとっと目を見つめるとあからさまに逸らされた。
「で、話が纏まったってことは、ティアはフェルシアに行っちゃうってこと?」
「……あ、確かにそうね」
「会えなくなるのかぁ」
「適当にどこかしらで帰ってくるわよ。……たぶんね」
確かにフェルシアに嫁いでしまえば、もう戻ってくるのは中々厳しいだろう。……うーん、困った。アリアは唯一の本当の女友達なのに。会えなくなるのは辛い。
「アリア、フィティア。そう悩まなくても、アリアさえ良ければうちの国に来たらいいよ」
そこでトールの助け舟が。私達は勿論目を輝かせる。
「あの、アリア、こっちに戻ってこれなくなっちゃうけど……」
一緒に来てほしいの、と言い切る前に、アリアは身を乗り出して声を上げた。
「いいよ、行けるなら行きたい! 平民の方でも魔法が使えるせいであぶれてたし、貴族でもやっていけそうにないしね」
「よし、決まりだね。アリアの方はフェルシアの魔導士としての雇いあげでいけると思うから……」
「婚約の報告、ね」
こちらに目線を向けてきたトールに、分かってるの意を込めて深く頷く。
私の父の了承は簡単に取れるだろう。が、問題なのは王の方だ。
私は全属性だ。火、水、風、木、光、闇。これらの六つの属性をすべて有している。その証に、この世界を創ったと言われている大精霊と同じセルリアンブルーの瞳、いわゆる魔眼をしているので誰が見てもそれは明らかなこと。
そしてその魔眼の持ち主は同世代に平均で三人現れればいいところ。現に、今この国では私と私の祖母の二人だけだ。魔眼は国の魔術を発展させる、稀有で大切な存在なのだ。だからこそ、王は私と王子を婚約させてまで私のことを囲い込んでいた。
そんな王が意気揚々と諸手を挙げて私を差し出すわけがない。
「……とりあえず、今日は一緒にうちの実家に帰って婚約の報告を両親にしに帰りたいのだけれど、いいかしら、トール?」
「勿論。明日か明後日には王家と話し合いができればって思ってるし。あ、あとアリアをうちの国へ迎え入れる手続きは僕がしておくよ」
話がすんなり纏まり、宴もたけなわといったところだったので、私達はそこで一度解散することになった。着替えやアリアの入国準備を済ませてから、私とトールは再集合という段取りだ。
ちなみにアリアはフェルシア籍になるので手続きが終わり次第、トールやその御付き達に与えられている別棟にて一時的に居住して貰う予定らしい。
「じゃあ、また後で。アリアは着替え終わったら別棟の入口手前辺りまで来てもらえると助かる」
「了解ー! 早めに向かうね」
「じゃあ、また後でね」
それぞれ挨拶をして、目立たないように私達はそれぞれ会場から出た。
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