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今宮瑠奈という少女

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「夢、か……」

ジリリリリ、という目覚まし時計のけたたましい音で目が覚める。

 死ぬ瞬間の夢なんて、今日は随分と縁起が悪い。妙にリアルだった。まだ心臓がどくどくと鳴り止まない。

ベッドの脇のハンガーに掛かっているセーラー服を、ベッドからぐっと起き上がり、引っ張って取る。パジャマを雑に脱ぎ捨てて、それを急いで身に纏った。

 スクールバッグを肩に引っ提げて、部屋を小走りで出る。

 今更何故、前世の夢などを見たのだろう。ふと、朝の用意をしながら考える。

 ルジェッタ・リリアージュ。死の森という魔物の住まう森の奥深くに住む魔女。それが前世の私だった。魔力が高すぎたことで、老化を全て怪我と捉えられて自動治癒されて老いなくなってしまい、不本意ながらずっと若い姿を保っていたことで「世界一悪い死の森の魔女」と、若い女の皮を剥いで若返りの薬を作っているなどという残虐な噂を流され、森の中で魔物に殺された人をすべて私が殺したことにされて、最終的には賞金首にかけられて聖女や兵士など世界中の人間から殺そうとされて、二百歳ほどで傷心して自殺した。

 結構最初から最後まで哀れな人生だったと自分でも思う。

 でも別にそれだけで、そこまで辛いとも憎いとも苦しいとも思っていない。はじめの数年はそう思っていたかもしれないけれど、今宮瑠奈として16年生きてもう思い出すことも滅多になくなったほどなのに。

 突然、ああも鮮明に、それも死ぬ瞬間を思い出すなんて。

 なんとなく、不吉な予感がして、身体がぶるりと震える。

 ――昔から、それはもう前世から、嫌な予感ほどよく当たっていた。

 それが分かっていたのに、知っていたのに、私はそれを無視して、そのままダイニングに向かった。

「おはよう」

ダイニングテーブルのチェアに座っている父母からの返事はない。いつものことだ。

 両親が私のことが嫌いらしい。妙に大人びていて、達観しているのが気持ち悪いのだと。同級生は誤魔化せても、流石に共にいる時間の長い両親には違和感を隠しきれなかったらしい。

 ルジェッタも孤児だったし、慣れてはいる。けれど、居心地が悪いのは否定できなくて、冷蔵庫から取り出したあんぱんを一袋引っ掴んですぐにダイニングを出た。

「……学校行こ」

そう、一歩を踏み出した、そのときのことだった。

 きらきらきら、と輝く金粉が周りを舞う。

 あ、と思ったときには遅かった。

 次第に粉は魔法陣を形成して、私を取り囲む。

 これ、前世の世界のものだ。早く、読まなきゃ、効果を調べなきゃ、そう思いはするもののどんどん力が抜けていく。

 そのまま私の意識はブラックアウトしていった。
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