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学園編
おサボリとチョコレートケーキ
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「昨日からずっと気になっていたんですが、このスキルって……」
「聖女の癒やしとやらですね」
興味津々といった様子の先生。……これがマッドサイエンティストか。
「良ければ一緒に研究しませんか!? 聖女の癒やしスキルは滅多に居ないので依然として謎な部分が多いのです。気になるでしょう?」
気になりません。そう言いたいが、そうは言わせないぞ的な雰囲気を纏っていて言いにくい。私、KYではないからね。流石に無理。
「すいません、差し出がましいかもしれませんがミカエルは聖女の癒やしスキル関連で何回も嫌な目に遭っているんです。なので触れられるのは……」
ソフィが来てくれた。謎設定をうそぶいて助けてくれる。助かった、あとでなにかしてあげよう。
「あら、そうでしたの。それは大変失礼いたしました。気が変わったら是非お声掛けくださいませ」
やっと開放される。……あの先生とはあまり関わらないようにしよう。ネロとソフィがひどくなったバージョンだ。可愛くもかっこよくもないのにそんなオタクとは関わっていられない。
「災難だったね。あの先生、結構すごいからねえ」
死んだような目をして言うソフィ。なにがあったかは聞かないでおこう。
そうこうしているうちに授業が終わる。私達生徒は講堂から出て行った。
「……フィレネーゼ公爵令嬢」
「なんでしょう?」
王子様が話しかけてくる。私に構わないでくれ。ひたすらそう願う。
「今日のいざこざの件だが……」
いざこざ、と言われて、あの古典的ないじめをしてきた少女たちを思い出した。……王子が一応見ていたから公式の場で処分するか否かということか。
「処分は必要ないですよ。あの場で注意したのでもうしないでしょうし、処分することで新たないざこざを生む気もありません」
相手に公式の場で恥をかかせてやろう、なんてことを考えるほど私は性格が悪くはない。王子もそう返ってくると予想していたようで、サラリと返してきた。
「なら大丈夫。多少彼女らへの今後は出世は望めなくなるようにはしようと思うが、それ以上の処分はフィレネーゼ公爵令嬢が言うなら止めておこう」
次は騎士になるための訓練の授業があるらしく、騎士の着けるマントを翻して王子は去っていく。ソフィはやれやれというように此方を見た。
「なんでこんなに攻略対象と関わってるの」
「不可抗力よ」
私が会おうと思って会っているわけでは断じて無い。行く先に攻略対象がいるだけなのだ。私は何も悪くない。
「そうだ、お兄ちゃんが良かったら一緒にカフェに行かないかって。気になっていたんだって。お兄ちゃん甘党だから。城下街に貴族をターゲットにしている新しく出来たところが今人気らしいの。チョコレートケーキが売ってるらしいよ。お兄ちゃん、奢ってくれるって。迎えに来るのって七時間目が終わったところででしょ? 今はまだ五時間目でしょ。バレないだろうしちょっと行っちゃおうよ」
兄、つまりネロ、そしてそれとチョコレートケーキ。ちなみに、チョコの原料であるカカオはこの世界ではそれなりの高級品。他の暖かい国からの輸入品だからだ。だからなかなか食べる機会がない。そして、チョコは私の大好物。……ソフィったら、チョコを出したら絶対私が悩むことを分かっててチョイスしたな。
私はきちんと優等生でいることとそれを天秤にかける。そして、カフェへ行く方にすぐにあっさり傾いた。
「おいひぃっ……」
数年ぶりのチョコレートケーキ。貴族としての品位とやらを気にすることなく頬張る。……やっぱりケーキっておいしい。
「それは良かった。僕もずっと気になってたからこれてよかった」
嬉しそうに私と同じチョコレートケーキを頬張っている。……甘党だったんだ、かわいっ。いつまでも見つめていられる、なんて思っていたら。
「私、先に帰っとくねー 家で研究の続きやらないと」
にやっと笑って、ごゆっくり、と呟いてソフィが出ていく。……わざとだ。わざとふたりきりにされた。私達の間で突如気まずい沈黙が流れる。……いや、こうやって本当にふたりっきりなんてこと滅多にないから何話したらいいか本当に分からない。家庭教師としてのときは、近くにお付きが絶対にいるし、プライベートでもソフィがほぼ必ずといっていいくらい一緒だ。……うわぁ、何話そう。これ以上ないくらいの焦りを、一緒に居られる嬉しさ以上に感じて、私はそれを誤魔化すかのように口の中にチョコレートケーキを放り込んだ。
「聖女の癒やしとやらですね」
興味津々といった様子の先生。……これがマッドサイエンティストか。
「良ければ一緒に研究しませんか!? 聖女の癒やしスキルは滅多に居ないので依然として謎な部分が多いのです。気になるでしょう?」
気になりません。そう言いたいが、そうは言わせないぞ的な雰囲気を纏っていて言いにくい。私、KYではないからね。流石に無理。
「すいません、差し出がましいかもしれませんがミカエルは聖女の癒やしスキル関連で何回も嫌な目に遭っているんです。なので触れられるのは……」
ソフィが来てくれた。謎設定をうそぶいて助けてくれる。助かった、あとでなにかしてあげよう。
「あら、そうでしたの。それは大変失礼いたしました。気が変わったら是非お声掛けくださいませ」
やっと開放される。……あの先生とはあまり関わらないようにしよう。ネロとソフィがひどくなったバージョンだ。可愛くもかっこよくもないのにそんなオタクとは関わっていられない。
「災難だったね。あの先生、結構すごいからねえ」
死んだような目をして言うソフィ。なにがあったかは聞かないでおこう。
そうこうしているうちに授業が終わる。私達生徒は講堂から出て行った。
「……フィレネーゼ公爵令嬢」
「なんでしょう?」
王子様が話しかけてくる。私に構わないでくれ。ひたすらそう願う。
「今日のいざこざの件だが……」
いざこざ、と言われて、あの古典的ないじめをしてきた少女たちを思い出した。……王子が一応見ていたから公式の場で処分するか否かということか。
「処分は必要ないですよ。あの場で注意したのでもうしないでしょうし、処分することで新たないざこざを生む気もありません」
相手に公式の場で恥をかかせてやろう、なんてことを考えるほど私は性格が悪くはない。王子もそう返ってくると予想していたようで、サラリと返してきた。
「なら大丈夫。多少彼女らへの今後は出世は望めなくなるようにはしようと思うが、それ以上の処分はフィレネーゼ公爵令嬢が言うなら止めておこう」
次は騎士になるための訓練の授業があるらしく、騎士の着けるマントを翻して王子は去っていく。ソフィはやれやれというように此方を見た。
「なんでこんなに攻略対象と関わってるの」
「不可抗力よ」
私が会おうと思って会っているわけでは断じて無い。行く先に攻略対象がいるだけなのだ。私は何も悪くない。
「そうだ、お兄ちゃんが良かったら一緒にカフェに行かないかって。気になっていたんだって。お兄ちゃん甘党だから。城下街に貴族をターゲットにしている新しく出来たところが今人気らしいの。チョコレートケーキが売ってるらしいよ。お兄ちゃん、奢ってくれるって。迎えに来るのって七時間目が終わったところででしょ? 今はまだ五時間目でしょ。バレないだろうしちょっと行っちゃおうよ」
兄、つまりネロ、そしてそれとチョコレートケーキ。ちなみに、チョコの原料であるカカオはこの世界ではそれなりの高級品。他の暖かい国からの輸入品だからだ。だからなかなか食べる機会がない。そして、チョコは私の大好物。……ソフィったら、チョコを出したら絶対私が悩むことを分かっててチョイスしたな。
私はきちんと優等生でいることとそれを天秤にかける。そして、カフェへ行く方にすぐにあっさり傾いた。
「おいひぃっ……」
数年ぶりのチョコレートケーキ。貴族としての品位とやらを気にすることなく頬張る。……やっぱりケーキっておいしい。
「それは良かった。僕もずっと気になってたからこれてよかった」
嬉しそうに私と同じチョコレートケーキを頬張っている。……甘党だったんだ、かわいっ。いつまでも見つめていられる、なんて思っていたら。
「私、先に帰っとくねー 家で研究の続きやらないと」
にやっと笑って、ごゆっくり、と呟いてソフィが出ていく。……わざとだ。わざとふたりきりにされた。私達の間で突如気まずい沈黙が流れる。……いや、こうやって本当にふたりっきりなんてこと滅多にないから何話したらいいか本当に分からない。家庭教師としてのときは、近くにお付きが絶対にいるし、プライベートでもソフィがほぼ必ずといっていいくらい一緒だ。……うわぁ、何話そう。これ以上ないくらいの焦りを、一緒に居られる嬉しさ以上に感じて、私はそれを誤魔化すかのように口の中にチョコレートケーキを放り込んだ。
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