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転生編
甘い物は正義
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ぱちっ、と目が覚めた。すると突然本当に寝ていたのか疑わしいほどの疲労感に襲われる。本物のミカエルと夢で話していたからだろうか。……おお、体が重い。インフルエンザの関節痛みたい。……っていうのは大袈裟か。筋肉痛の酷いバージョンくらいだ。
起き上がると、窓から差し込む光が私の顔に当たる。そのことから外は快晴なのだと分かった。……晴れとか無理。前世なら引きこもりデーになること決定ですな。家でゴロゴロして過ごすべきだと思う。あくまで個人の感想ではあるが。
「お嬢様、起きてください! 奥様がお呼びです!」
屋敷全体に響いてしまっているのではないかというくらいの大きな声。足音が近づいてきていたことからアンナが扉の向こうから声を掛けているのが分かった。……お母様が呼び出しているのならば起きたくないが、起きねばならない。
「はーい」
|私(ミカエル)の一日は壮絶な着替えから始まる。今日は特に酷い。外から客が来るらしく、正装に着替えねばならないからだ。最早私ではどうやって着るのか分からないレベルにまで達したふわふわひらひらリボン一杯のお洋服。今日は青ベースらしくまだ可愛らしさは抑え目な服になっているが、これがピンクとかだったら正に悲惨である。私の好みは飾り気のないシンプルな洋服なのに。パーカーにジーンズは正に最高の組み合わせといえるだろう。着ていて非常に楽だ。
「さて、ちょっと締めますよー」
にっこり笑って軽い口調で言われた言葉。これが最も大変な作業というのに。ミカエルの体は十歳の割に発育が良く、女性らしい体になってきているのでコルセットが必要らしい。そして、そんなに要らないだろうと言いたくなるほど締め付けるのだ。どこが「ちょっと」だ。
「うぇっ……」
こんな風に吐きそうになる。コルセットなんて着けなくてもいいだろう。……本物のミカエルがこの貴族生活を嫌になったのも分かる。
「はいっ、終わりました。では朝食を食べる前に奥様の元へ向かいましょう」
少しくらい休憩させて? そんな私の思いは届くことなく、アンナは非情にも私を引っ張りお母様の元へと引っ張っていく。お母様の部屋が近いので、アンナに抵抗して叫べば何事かと大騒ぎになってしまう。アンナもそのことが分かっているからやったのだろう。私はされるがままになり、何時の間にかお母様の部屋へとたどり着いていた。
「アンナ……」
怒りを込めて軽くジト目で見つめる。
「はいはい疲れましたね。これでもどうぞ。お話の後でお食べください」
べっこう飴のようなものを入れた可愛い透明な箱を渡してくるアンナ。アンナは私の扱いを心得ているらしく、本物のミカエルが甘いものに目がないことだって知っている。そして、甘いものに目がないのは残念なことに私も同じである。……よっていくら怒っていても許してしまうのだ。
「ミカエルちゃーん? いるの?」
カチャっとドアが開けられる。隙間から顔を覗かしたお母様の可愛らしいことよ。推しキャラじゃなかったとしてもこれは萌える。
「はい、今入ります」
入るとベッドの上に座るように促される。私はお行儀が少しばかし悪いのでは、と考えながら言われた通りにした。
「ミカエルちゃん、魔法を学びたくない?」
魔法。興味が無いわけでは無い。ラノベに出てくるようなかっこいいのをやってみたいっていう気持ちはある。……でも、勉強って面倒じゃないか。私は前世では所謂、天才型サボリ人間だった。勉強は得意だし、やらなくても出来たからこんな乙女ゲームだって全クリするまでやれた。でも魔法となったらそういう訳にはいかない。全く知らない、何一つ分からないこと。真面目に勉強せねばならない。
「まあ学びたくなくてもやらなきゃいけないんだけどねー」
お母様によると公爵令嬢が学園に入った段階で魔法を自在に使えないのは恥らしい。そういえば裁縫でも同じようなことを言っていたな。全く、世知辛い世の中だ。貴族って辛い。
「……分かりました」
「でね、家庭教師を雇ったのね。確か、ルートヴェング家の……」
ルートヴェング。その単語に私の耳は即座に反応した。……もしかして家庭教師って推しなのでは? 私は少し母様の言葉に被せて叫ぶ。
「ネロ・ルートヴェング様ですか?」
もしそうなのだとしたら話は別だ。本気で勉強する。私めっちゃ頑張る。
「あら、よく知ってるのねー うちの隣の領地だから、比較的近いしいいって向こうも言ってくださったのよねー」
母様が良く勉強しているのね、と嬉しそうにしているが、私は全く別のことを考える。……推しに勉強教えて貰えるとか最高シチュじゃないか! 心変わりしました、私、魔法の勉強を一生懸命頑張ることにします。
起き上がると、窓から差し込む光が私の顔に当たる。そのことから外は快晴なのだと分かった。……晴れとか無理。前世なら引きこもりデーになること決定ですな。家でゴロゴロして過ごすべきだと思う。あくまで個人の感想ではあるが。
「お嬢様、起きてください! 奥様がお呼びです!」
屋敷全体に響いてしまっているのではないかというくらいの大きな声。足音が近づいてきていたことからアンナが扉の向こうから声を掛けているのが分かった。……お母様が呼び出しているのならば起きたくないが、起きねばならない。
「はーい」
|私(ミカエル)の一日は壮絶な着替えから始まる。今日は特に酷い。外から客が来るらしく、正装に着替えねばならないからだ。最早私ではどうやって着るのか分からないレベルにまで達したふわふわひらひらリボン一杯のお洋服。今日は青ベースらしくまだ可愛らしさは抑え目な服になっているが、これがピンクとかだったら正に悲惨である。私の好みは飾り気のないシンプルな洋服なのに。パーカーにジーンズは正に最高の組み合わせといえるだろう。着ていて非常に楽だ。
「さて、ちょっと締めますよー」
にっこり笑って軽い口調で言われた言葉。これが最も大変な作業というのに。ミカエルの体は十歳の割に発育が良く、女性らしい体になってきているのでコルセットが必要らしい。そして、そんなに要らないだろうと言いたくなるほど締め付けるのだ。どこが「ちょっと」だ。
「うぇっ……」
こんな風に吐きそうになる。コルセットなんて着けなくてもいいだろう。……本物のミカエルがこの貴族生活を嫌になったのも分かる。
「はいっ、終わりました。では朝食を食べる前に奥様の元へ向かいましょう」
少しくらい休憩させて? そんな私の思いは届くことなく、アンナは非情にも私を引っ張りお母様の元へと引っ張っていく。お母様の部屋が近いので、アンナに抵抗して叫べば何事かと大騒ぎになってしまう。アンナもそのことが分かっているからやったのだろう。私はされるがままになり、何時の間にかお母様の部屋へとたどり着いていた。
「アンナ……」
怒りを込めて軽くジト目で見つめる。
「はいはい疲れましたね。これでもどうぞ。お話の後でお食べください」
べっこう飴のようなものを入れた可愛い透明な箱を渡してくるアンナ。アンナは私の扱いを心得ているらしく、本物のミカエルが甘いものに目がないことだって知っている。そして、甘いものに目がないのは残念なことに私も同じである。……よっていくら怒っていても許してしまうのだ。
「ミカエルちゃーん? いるの?」
カチャっとドアが開けられる。隙間から顔を覗かしたお母様の可愛らしいことよ。推しキャラじゃなかったとしてもこれは萌える。
「はい、今入ります」
入るとベッドの上に座るように促される。私はお行儀が少しばかし悪いのでは、と考えながら言われた通りにした。
「ミカエルちゃん、魔法を学びたくない?」
魔法。興味が無いわけでは無い。ラノベに出てくるようなかっこいいのをやってみたいっていう気持ちはある。……でも、勉強って面倒じゃないか。私は前世では所謂、天才型サボリ人間だった。勉強は得意だし、やらなくても出来たからこんな乙女ゲームだって全クリするまでやれた。でも魔法となったらそういう訳にはいかない。全く知らない、何一つ分からないこと。真面目に勉強せねばならない。
「まあ学びたくなくてもやらなきゃいけないんだけどねー」
お母様によると公爵令嬢が学園に入った段階で魔法を自在に使えないのは恥らしい。そういえば裁縫でも同じようなことを言っていたな。全く、世知辛い世の中だ。貴族って辛い。
「……分かりました」
「でね、家庭教師を雇ったのね。確か、ルートヴェング家の……」
ルートヴェング。その単語に私の耳は即座に反応した。……もしかして家庭教師って推しなのでは? 私は少し母様の言葉に被せて叫ぶ。
「ネロ・ルートヴェング様ですか?」
もしそうなのだとしたら話は別だ。本気で勉強する。私めっちゃ頑張る。
「あら、よく知ってるのねー うちの隣の領地だから、比較的近いしいいって向こうも言ってくださったのよねー」
母様が良く勉強しているのね、と嬉しそうにしているが、私は全く別のことを考える。……推しに勉強教えて貰えるとか最高シチュじゃないか! 心変わりしました、私、魔法の勉強を一生懸命頑張ることにします。
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追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
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