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盗賊と遭遇と

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「おぉ、お貴族様はやっぱりゴーカなものに乗ってんなあ! ちょっと分けてくれよ!」

疲れたので馬車の窓枠に寄りかかって眠っていたら、そんな叫び声で目が覚まされた。走っていたはずの馬車が止まっている。

 おそるおそるカーテンをほんの少し捲って外を見ると、野太い声と大きな体の賊が馬車を取り囲んでいた。私はひゅっとしゃがんで身を隠す。……怖い。やだ、もう! 私は不運に呪われてるの……?

「怖い怖い怖すぎだってば」

私は杖を手に取り、魔力を込めていく。これで大きめの攻撃魔法が十回は使えるだろう。

 とりあえず外に出なきゃ。中に入ってこられたら応戦のしようがない。私は片腕にシエルの入ったバスケット、もう片方で杖を持って外へ駆け出た。

「……ん? 女じゃね―か! 上玉だぞ、捕えろ!」

外に出た瞬間、一人と目が合い、叫ばれる。……ああ、不運。賊が一斉に此方を向いた。……軽くホラーなんですけども!

「ああーもうっ! 『ウォーターボール』!」

半透明な巨大な水の塊を叩きつける。その隙に私は走って逃げた。……捕まったら殺される。ああいうタイプの「不良」は自分が気に入らないことがあったらすぐ暴力を振るうと前世の記憶が私に訴えている。

『ジャンプ』

身体能力を適宜、魔法で向上させながらひたすらに走る。……ああ、他の人を置いてきてしまった。罪悪感が無いわけではないが、お母様と共に私を無視していたのが大半なのもあって自分のみを挺してまで構っていられなかったのだ。

「おお、いたぞ!」

追いつかれた。時間を更に稼ぐために杖を向けて、私を追ってきた数人が集まったところへ攻撃を放つ。

「『ウィンドカッター』!」

攻撃したが、それでも相手は立ち上がる。そもそも私には魔法の才が無いのだ。王族なのに上級貴族くらいがなんとか使えるような魔法しか使えない。その上燃費が悪い。だから数回使ったせいで杖に必死で溜めた魔力は既にゼロ。

「よくもやってくれたな……」

相手は私を睨みつけている。憎しみの籠もった目で、今にも飛びかかってきて攻撃してきそうだ。

「やだ、怖い。どうすればっ、」

「……『スリープ』」

心地よい、テノールの男性の声が聞こえる。優しそうな、柔らかい声。私は身体を捻ってその人を見た。

 黒髪黒目のどことなく日本人っぽい見た目をしている。私はその人になんとなく安心感を覚えて目を合わせた。

「災難だったね。どこかの貴族様かな? とりあえずおいで、処置したげる」

彼は私に手を差し出して立ち上がらせてくれる。私は彼の後ろをひょこひょこ着いていった。……危ない人じゃないことをせめて願おう。

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