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フィティア10歳・領地立て直し編
領地視察に行ってみましょう
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「お母様、お父様。少しこのあと外出しても?」
まずは領地のことを知らなければ。ユリウスに多少習っているとはいえ、詳しくはほとんど知らない。何があるのか、自分の目で見て知りたいのだ。
知らないままでは、何一つ生み出せない。
「どこへ行くんだい?」
「少し、領地を一周りして帰ってこようかと。よろしいでしょうか?」
「遠乗りに行きたいのか。もちろんいいが、誰かは連れて行ってくれよ。……ユリウス……は目立つな。どうしようか……」
お父様は困ったように後ろで控えていたユリウスを見る。そう、彼は護衛としては優秀なのだが、お忍びに連れて行くにはあまり向かない。とにかく豪華で派手なのだ。外見からして、銀髪だし。変装しても整った容姿から滲み出る隠せない美しさで目立ってしまう。舞踏会なんかでは最適なのだけれど。従者としても、護衛としても両方を兼ねて連れられるから。
「リンクスはいかがでしょう。彼女なら腕も立ちますし、丁度いいのではないでしょうか。普段なら難しいかもしれませんが、今回はお忍びの遠乗りですし、大丈夫かと」
リンクスか。彼女は私付きのメイドである。ユリウスが伯爵家から奉公のような形でヴィヴィテール家に雇われたのに対して、彼女が平民出身だったせいで、私は良くても私の外聞的によくないのであまり連れて行くことができないのですっかり候補から抜け落ちていた。
たしかリンクスは私と常にいるから、ユリウスに鍛えられてたんだっけ。
一度、うちに泥棒が入ったときも、すぐに見つけ出して、彼女よりも体格のいい男3人を一瞬で拘束してスピード解決していた記憶がある。確かに護衛としては申し分ないし、私と一緒にいることが多いから安心して話せる。
「あぁ! 確かにな。リンクス、フィティアのことは任せたぞ」
「承知いたしました」
すっと流れるように、音もなく前に出てリンクスが頭を垂れる。
「じゃあ、日が暮れる前に帰ってくるようにな」
「はい、行ってきます!」
リンクスが手を差し出してくれる。私はそこに自分の右手を重ねて、彼女に手を引かれるままについていく。
「お忍びですので、服を着替えたほうがよいのではありませんか? お嬢様には少々、その、相応しいとは言い難いのですが、私が城下街などに出かけるとき用のよそ行きの服があるのでそれを着られたらいかがでしょう?」
「いいんですか? なら、貸してほしいです!」
「では、お嬢様のサイズに合うものを数着、ここから見繕うので、その中から好きなのを選んでくださいませ」
そう言われて、ふと目についた薄桃色の柔らかい生地のワンピースを手に取る。
「これにします」
豪奢なドレスをリンクスに脱がせてもらって、それを身に纏う。
「どう?」
「素敵だと思います! では、行きましょうか、お嬢様」
「はい!」
さぁ、行こう。絶対に今日、何かを見つけ出してみせるんだから。
私は胸の前でぐっと拳を握りしめて意気込んだ。
まずは領地のことを知らなければ。ユリウスに多少習っているとはいえ、詳しくはほとんど知らない。何があるのか、自分の目で見て知りたいのだ。
知らないままでは、何一つ生み出せない。
「どこへ行くんだい?」
「少し、領地を一周りして帰ってこようかと。よろしいでしょうか?」
「遠乗りに行きたいのか。もちろんいいが、誰かは連れて行ってくれよ。……ユリウス……は目立つな。どうしようか……」
お父様は困ったように後ろで控えていたユリウスを見る。そう、彼は護衛としては優秀なのだが、お忍びに連れて行くにはあまり向かない。とにかく豪華で派手なのだ。外見からして、銀髪だし。変装しても整った容姿から滲み出る隠せない美しさで目立ってしまう。舞踏会なんかでは最適なのだけれど。従者としても、護衛としても両方を兼ねて連れられるから。
「リンクスはいかがでしょう。彼女なら腕も立ちますし、丁度いいのではないでしょうか。普段なら難しいかもしれませんが、今回はお忍びの遠乗りですし、大丈夫かと」
リンクスか。彼女は私付きのメイドである。ユリウスが伯爵家から奉公のような形でヴィヴィテール家に雇われたのに対して、彼女が平民出身だったせいで、私は良くても私の外聞的によくないのであまり連れて行くことができないのですっかり候補から抜け落ちていた。
たしかリンクスは私と常にいるから、ユリウスに鍛えられてたんだっけ。
一度、うちに泥棒が入ったときも、すぐに見つけ出して、彼女よりも体格のいい男3人を一瞬で拘束してスピード解決していた記憶がある。確かに護衛としては申し分ないし、私と一緒にいることが多いから安心して話せる。
「あぁ! 確かにな。リンクス、フィティアのことは任せたぞ」
「承知いたしました」
すっと流れるように、音もなく前に出てリンクスが頭を垂れる。
「じゃあ、日が暮れる前に帰ってくるようにな」
「はい、行ってきます!」
リンクスが手を差し出してくれる。私はそこに自分の右手を重ねて、彼女に手を引かれるままについていく。
「お忍びですので、服を着替えたほうがよいのではありませんか? お嬢様には少々、その、相応しいとは言い難いのですが、私が城下街などに出かけるとき用のよそ行きの服があるのでそれを着られたらいかがでしょう?」
「いいんですか? なら、貸してほしいです!」
「では、お嬢様のサイズに合うものを数着、ここから見繕うので、その中から好きなのを選んでくださいませ」
そう言われて、ふと目についた薄桃色の柔らかい生地のワンピースを手に取る。
「これにします」
豪奢なドレスをリンクスに脱がせてもらって、それを身に纏う。
「どう?」
「素敵だと思います! では、行きましょうか、お嬢様」
「はい!」
さぁ、行こう。絶対に今日、何かを見つけ出してみせるんだから。
私は胸の前でぐっと拳を握りしめて意気込んだ。
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