気づいたときには遅かったんだ。

水無瀬流那

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気づかなかった、馬鹿な俺。

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 陽菜は、幼馴染だった。三歳の頃から、通ってた水泳教室が一緒だったから、そのままなんとなく一緒にいた。小学校も中学校も一緒だったから、そのまま。

 俺も陽菜も、たぶんお互いがなんとなく好きだった。ふわふわした、友情と恋情の真ん中みたいな、感情。

 だから、中二で付き合った。幼馴染の延長線上にあるような関係のままだったけれど。

「こうくん、大好きだよ!」

「俺もだよ」

笑いながら、いつもそう返した。「大好き」を俺から言うのはなんとなくこそばゆくて、同意しかできなかったんだ。

 でも、そのままだって思ってた。砂糖菓子みたいなふわふわした関係を続けられるって思ってた。……思ってたんだ。

「別れよ」

「な、んで」

「三年の先輩に告られちゃったから。ほら、だって私達、付き合ってるっていったって幼馴染と変わんない感じだったじゃん? ……私はさ、好きだったけど、こうくんはそうでもなかったみたいだし。疲れちゃった」

頭が真っ白になって、言葉が出てこない。

「じゃあね、今までありがとう」

「……っ、待っ、」

彼女はもう、走り去っていた。

 ……あぁ、好きだったんだ。気づいたときには、遅かった。

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