転生魔女(悪役)は悪役令嬢を救いたい!

水瀬流那

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一章 転生と魔女

1-2 転生

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 映っていたのは、白銀の長い髪に青い瞳の美女。と、いうか美少女。十歳かそこらだろう。髪はぼさぼさ、肌も荒れているし、着ている服はボロボロ、なんならなぜか血だらけではあるが。

 なんか既視感、なんて思っていると、ふと昔読んでいた本の挿絵が脳裏に浮かんだ。

 ……似ている。こんなちっちゃくなかったし、もっとナイスバディで美人さんだったし、もっと悪役ぽかったけれど、似ている。

「……ルティアナ……?」

ぽつり。つい衝動的に、あの物語の彼女の名が口から零れた。

 その途端に、頭の中にどっと記憶が、奔流のように溢れて、流れてこんできた。

 物語の一節のような、自分のことという意識はない、誰かの一生。黒髪の少女の哀しい一生が、否応なしに私を襲った。



 私は、どうやら転生したらしい。



ありえないけど、そうとしか思えない。数十分、叩きつけるように流れて入ってくる大量の記憶に翻弄されながら考え抜いた結論、出たのはそれだった。

 この少女の名はルティアナ。十歳。リリーシア王国の辺境、リムル村に生まれた平民だ。それにも拘わらず浄化、治癒の【光】、人の心を操る【闇】、炎を操る【火】、風、空気を操る【風】、植物を操る【木】、水を操る【水】の6属性、つまり全ての属性に適正があるスーパー魔法少女だったらしい。

 ちなみに、この世界では、全体の約1割弱、魔力がある人間がいるらしい。そして勿論、魔力がある人間は魔法が使える。また、魔法が使える人間は、十歳のときに実施される検査で魔力持ちと判明すれば国立魔法学園に入学を義務付けられ、卒業後、貴族に昇格するらしい。(魔力持ちの子供はたいてい魔力持ちになるから)

 魔力のある人にはさっき挙げた6属性のうち、一つ以上適正があるらしく、適性がある属性の魔法は容易に使えるんだと。詳しいことは分からないが、普通は属性は一つで、それ以上適正がある人は天才と呼ばれ魔法師団という魔法使いが集まったスペシャルな研究所で働くことになるということだ。

 で、話を戻すと、このルティアナは、先週十歳の誕生日を迎えて、魔力検査が実施され、全属性の天才少女と判明した。4属性持ちまではそれなりにいるものの、【光】、【闇】の2つの属性までもを持ち合わせる人間は滅多にいない。先例は今まで二人ほどだとか。だから、それはそれは持て囃されて、入学する前に青田刈りということで先に公爵家に養子入りして貴族になることになったのだ。

 残念なことに、親はルティアナが大金と引き換えに親元を離れ貴族となり、二度と会えなくなることを喜んでいた。この世界、実は黒髪は珍しいらしく、黒髪の子は魔物の子と言われるほど不吉な存在だったそう。(魔王の髪も黒髪だったから)だから魔力検査の前からルティアナは親に疎まれていた。まぁ、幸い親は悪人ではなかったので面倒は見ていたようだが、金髪の普通の子であるルティアナの妹よりは扱いがおざなりになってしまっていたようだ。

 ルティアナも今までずっとそれを肌で感じてはいたものの、気づかないふりをしていたらしい。しかし、今回それを目の当たりにしたルティアナはひどく傷ついて、無我夢中で家を出て、村から逃げ出した。

 ところが運悪く、夜中だったこともあって道に迷ってしまい、魔物が蠢く恐ろしい森、通称「死の森」に迷い込んでしまったらしい。んでもって、焦って走って足を滑らして崖から落下。そこで記憶は途切れている。


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