ぼくたちの理解者

凪司工房

文字の大きさ
上 下
18 / 18
第四章 「聖夜の理解者」

6

しおりを挟む
「あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しく」

 次に三人で会ったのは、年を越した初詣の明治神宮だった。あまりにも混み合っていて紅葉も美亜もよく目立つ桜庭の両腕にしがみついて歩いていたが、なかなか行列は前に進まない。

「こんなになるんだったら、わざわざ来なきゃよかった」
「美亜が今年は行きたいって言い出したんだろ」
「だって来年は受験だからこんなことしてる余裕ないでしょ?」
「そういや二人は大学もう決めたのか?」
「ボクは美亜の行くところでいいかなーって」
「わたし専門学校にしようかなって思ってるんだけど」
「そんなの聞いてない」
「言ってないし」

 クリスマスイブにそれぞれが渡そうと思っていたプレゼントは、結局年末になってから渡すことになった。あの日、帰り際に美亜が「それぞれ一対一で告白することにしない?」と提案して、三人合意の上でそれを受け入れた。
 結果は、三人仲良く初詣に来ていることで、なんとなく察しがつくかも知れない。
 そう。まだ何も答えは出ていなかった。答えなんて、そんな簡単に出せる問題じゃない。だから今はまだもう少し、この三人でもいいかなって、紅葉は思っていた。美亜や桜庭は実際どうなんだろう。

「ちょっと桜庭くん、勝手に前行かないでよ」
「そんなにひっつくなよ。おい、ベニ。お前も」
「なんでー? こういうの、好きなんだろ?」
「何言ってんだよ、ったく」

 少なくとも、以前よりは互いの理解者に、なれたのかな。
 そんな想像をして、紅葉は空を見上げた。


「みんな、ばっかやろーだ!」


(了)

※けれど物語は終わっても彼ら、彼女らの人生は続いていく。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

顔の良い灰勿くんに着てほしい服があるの

えにけりおあ
恋愛
私の友達の灰勿(はいな)くんは、男の子で、成績はそこそこ良くて、そしてなにより顔がいい。 ……でも、その隣に居る私は至って平凡だ。 灰勿くんの顔が大好きなちょっと卑屈な女の子のえちゃんと、大好きな幼馴染の女の子の頼みを断りきれずに可愛いワンピースを着ることになった灰勿くんの話。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

僕は絶倫女子大生

五十音 順(いそおと じゅん)
恋愛
僕のコンプレックスは、男らしくないこと…見た目は勿論、声や名前まで男らしくありませんでした…。 大学生になり一人暮らしを始めた僕は、周りから勝手に女だと思われていました。 異性としてのバリアを失った僕に対して、女性たちは下着姿や裸を平気で見せてきました。 そんな僕は何故か女性にモテ始め、ハーレムのような生活をすることに…。

処理中です...