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第十章 「恋」

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「はぁ……何とかなった、のかな」

 長い長いメールだった。
 恋愛教室について、今までメモをしていたことを思い出しながら、それを原田に上手く伝わるようにと文章にしてみたのだけれど、読み返すと支離滅裂で、国語の成績が悪かったことがすぐ彼にバレてしまいそうだな、と愛里は苦笑した。
 一瞬緊張してから、送信を押す。
 どうやら上手く送られたみたいで、届かなかった等と返信されることはなかった。
 時刻を確認すればもう夕方だ。高正先生も義母の葉子も何も言ってこないから、まだ姉に変化はないのだろう。このまま今夜を安定した状態で超えられると一息つけるだろう、と担当の吉崎医師が言っていた。
 心臓のことはよく分からない。
 移植が必要なのかと尋ねたら、そういうものではないと返され、それから色々と薬やリハビリを含めた対処療法について説明された。
 でも学がないからか、それとも誰にとっても理解が難しいからか、愛里にはよく分からなかった。
 隣で話を聞いていた葉子はただうなずくだけだったし、この場に原田がいれば愛里に分かるように説明してくれただろうか、とぼんやり思った。
 ドアがノックされる。
 葉子だろう、と思ったから返事をしたが、

「え……」

 それを開けて入ってきたのは、濃いグレィのスーツを着た髭の男性、つまり愛里たちの父親だった。
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