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第九乃段
ゴミの星
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分厚い雲を抜けると、極彩色の地面が眼下に広がっていた。調査官のミゾグチは飛空艇の高度をやや落とし、目視で落ちているものが何なのかを確認しようとする。けれど細かくなった金属片のようなものやコンクリートの塊が幾重にもなっていて、よく分からない。
それは探査ドローンの寄越したレポートのままの光景だった。
――利用不明な有機物の塊に覆われた惑星。
かつての言葉で「ゴミ」と呼ばれるものだ。
ゴミの星。調査班の中でそう呼ばれていたが、今回近くまで有人探査船が航行する予定があり、実地探査を行うことになった。だが担当者として手を挙げる者はおらず、結局いつものようにくじ運の悪いミゾグチが担当になってしまった。
数分前に空中で採取した大気データは酸素も充分量あり、着陸しての調査も行えることを示していたが、一方でガスの量が多く、空気清浄器なしには息をすることは難しいとの結果も出ていた。つまり甚だしく臭いのだ。
一時間ほど飛行して、やっと小さな陸地らしき場所を発見する。と言っても、海水の流れが止まっているだけで大地があるかどうかは分からない。
ホバーモードにして地表近くまで降りていく。そこからロープを垂らし、慎重に足を下ろした。
そこはゴミが小さな山を築いていた。小さい、といっても標高で百メートルはある。
ミゾグチは足元を覆うゴミの一つを手に取る。それは長方形の形をした黒い機械だった。ハッチのように開く部分があり、開けてみるとこれまた四角いものに二つ穴が開いたデバイスが組み込まれている。手に取ると簡単に外れたが、それはどうやら磁気テープをぐるぐると巻いたもののようだ。
他にもノズルが付いた箱ややけに後ろに長いモニタのようなもの。回転式の羽根が付いた機械もあった。
どれも壊れていて動いたりはしないが、それ以前にミゾグチは目にしたことのないものばかりで、一つ一つ持ち帰って修理をしてみたい欲求がもたげてしまう。しかし持ち帰れるものの容量は厳格に決められている。
それでも見ていくのが楽しくなり、ミゾグチは発掘作業のように瓦礫の中から様々な遺物を取り出しては想像に花を咲かせた。
「これは……」
やがて赤黒く、巨大は鉄製の柱が足元に埋まっているのが分かった。それが露出するように可能な範囲でゴミを退かしていく。
「まさかな」
それはかつて地球と呼ばれた星の都市の一つのシンボルとして建てられていた、ある電波塔だった。
その名は東京タワー。
それは探査ドローンの寄越したレポートのままの光景だった。
――利用不明な有機物の塊に覆われた惑星。
かつての言葉で「ゴミ」と呼ばれるものだ。
ゴミの星。調査班の中でそう呼ばれていたが、今回近くまで有人探査船が航行する予定があり、実地探査を行うことになった。だが担当者として手を挙げる者はおらず、結局いつものようにくじ運の悪いミゾグチが担当になってしまった。
数分前に空中で採取した大気データは酸素も充分量あり、着陸しての調査も行えることを示していたが、一方でガスの量が多く、空気清浄器なしには息をすることは難しいとの結果も出ていた。つまり甚だしく臭いのだ。
一時間ほど飛行して、やっと小さな陸地らしき場所を発見する。と言っても、海水の流れが止まっているだけで大地があるかどうかは分からない。
ホバーモードにして地表近くまで降りていく。そこからロープを垂らし、慎重に足を下ろした。
そこはゴミが小さな山を築いていた。小さい、といっても標高で百メートルはある。
ミゾグチは足元を覆うゴミの一つを手に取る。それは長方形の形をした黒い機械だった。ハッチのように開く部分があり、開けてみるとこれまた四角いものに二つ穴が開いたデバイスが組み込まれている。手に取ると簡単に外れたが、それはどうやら磁気テープをぐるぐると巻いたもののようだ。
他にもノズルが付いた箱ややけに後ろに長いモニタのようなもの。回転式の羽根が付いた機械もあった。
どれも壊れていて動いたりはしないが、それ以前にミゾグチは目にしたことのないものばかりで、一つ一つ持ち帰って修理をしてみたい欲求がもたげてしまう。しかし持ち帰れるものの容量は厳格に決められている。
それでも見ていくのが楽しくなり、ミゾグチは発掘作業のように瓦礫の中から様々な遺物を取り出しては想像に花を咲かせた。
「これは……」
やがて赤黒く、巨大は鉄製の柱が足元に埋まっているのが分かった。それが露出するように可能な範囲でゴミを退かしていく。
「まさかな」
それはかつて地球と呼ばれた星の都市の一つのシンボルとして建てられていた、ある電波塔だった。
その名は東京タワー。
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