千文字小説百物騙

凪司工房

文字の大きさ
上 下
62 / 100
第七乃段

精神曼解叫(せいしんまんげきょう)

しおりを挟む
 真っ白な壁に囲まれた診察室には小さな絵が一枚だけ掛けられていた。並木はその絵に描かれた何も入っていないグラスをじっと見つめて立っていた。

「こんにちは。それは伴怪堂ばんかいどうという作家の作品です。興味深いでしょう」

 入ってきた土屋医師はカルテを置いて、席に座った。

「調子はどうですか?」
「それがどんどん酷くなるんです」

 並木は眉を寄せて椅子に座り、土屋に周囲で起こる奇妙な現象と夢と現実が混ざりつつあることについて簡単に説明した。

「分かりました。それでは一度録音しますので最初からお願いします」

    ※

全ての始まりは百物語ひゃくものがたりになぞらえてショートストーリーを百本書くという企画でし ヤクザの鉄砲玉として人生の一発逆転を狙っ ずっと男運のない女でした 裕福だが複雑な家庭で生まれ 瞳の色が他人と違うでしょう? 田舎から出てきて何とか刑事になって 小さい頃から変な家族と 最初に気づいたのは部屋から物が無くなっていたんで 刑務所から出て色んなバイトをやったよ 看護学校を出て看護師として この街で一番高いビルを建ててね 大切にしていた犬が死んだわ 不器用な男ですよ いつか月に帰ると本気で信じてい 次に記憶の欠落 ヒーローになりたかったのに結局俺に合うのは戦闘員 妻子ある男性に恋心を抱い 愛人も何人かいた いつも疎外感そがいかんを味わいながら学生生活を送っ 担当した事件の一人はね人を殺したことはあるかと壇上から問いかけ 小さい頃からクリスマスは祝わない方針で 朝起きたら勝手に原稿が書き上がっていたことも 駅の清掃員を辞めて人妻と駆け落ちを あきらめて結婚した男はただの車好きの変人 議員にもなった 路上で歌っていたらラジオDJをやらないかって ある連続通り魔事件を追っていた時だ 大学の時に付き合った人は見返りという言葉で罰を与え 夢の中で何度も編集の彼女を殺したんです 工場でベルトコンベアを前に作業してるのが全部自分で まだローンの残っていた家を燃やしました 社会的な地位は得たが妻は入院し娘は家を出てしまった 歌手としてデビュー 妻をね、殺したんです 二十歳の時にいきなり異星人だって モデルガンで撃つとその作家も作品も世界から消えてしまう いつも悪い方ばかり選択し 離婚した後はキャバクラで働きながら愛人として 愛人の一人はね、自殺したよ でも今は引退してしまいました 今は殺人犯として逃げ回ってます 今はちょっと変わった団体で事務員を 最後には自分の作品に銃口を向けました

    ※

「それで、誰が本当のあなたなんです?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

春を売る少年

凪司工房
現代文学
少年は男娼をして生計を立てていた。ある時、彼を買った紳士は少年に服と住処を与え、自分の屋敷に住まわせる。 何故そんなことをしたのか? 一体彼が買った「少年の春」とは何なのか? 疑問を抱いたまま日々を過ごし、やがて彼はある回答に至るのだが。 これは少年たちの春を巡る大人のファンタジー作品。

きもきもものがたり集

モア神
現代文学
この物語は、…きもいです。 [この物語を読むに当たってのお願い] ①本当に気持ち悪い物語も混じっているので、読む時には十分に気をつける事。(マジできもいやつはきもいです) ②きもい事はもう伝えてるので、コンテンツ報告をしない事。(したくなるかもしれませんが、見るのは自己責任でお願いします!) ③話の構成などはあまり考えずにやっているので、優しい目で見ること。(あまり考えてなくてごめんなさい)

霧崎時計塔の裂け目

葉羽
ミステリー
高校2年生で天才的な推理力を誇る神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、異常な霧に包まれた街で次々と起こる不可解な失踪事件に直面する。街はまるで時間が狂い始めたかのように歪んでいき、時計が逆行する、記憶が消えるなど、現実離れした現象が続発していた。 転校生・霧崎璃久の登場を機に、街はさらに不気味な雰囲気を漂わせ、二人は彼が何かを隠していると感じ始める。調査を進める中で、霧崎は実は「時間を操る一族」の最後の生き残りであり、街全体が時間の裂け目に飲み込まれつつあることを告白する。 全ての鍵は、街の中心にそびえる古い時計塔にあった。振り子時計と「時の墓」が、街の時間を支配し、崩壊を招こうとしていることを知った葉羽たちは、街を救うために命を懸けて真実に挑む。霧崎の犠牲を避けるべく、葉羽は自らの推理力を駆使して時間の歪みを解消する方法を見つけ出すが、その過程でさらなる謎が明らかに――。 果たして、葉羽は時間の裂け目を封じ、街を救うことができるのか?時間と命が交錯する究極の選択を迫られる二人の運命は――。

140字の想い

須賀マサキ(まー)
現代文学
 診断メーカーでもらったお題をもとにTwitterで呟いた140文字以内の掌小説です。1日2つずつ作り、100日間続けたので、合計200作になりました。SF、ホラー、甘々のものにツンデレ妹など、豊富なテーマで書いているので、変化が楽しめること請け合いです。  どこから読んでも解りますので、隙間時間のお供にぜひお読みください。  ※毎日7:40と19:40に1話ずつ公開します。

ノイズノウティスの鐘の音に

有箱
現代文学
鐘の鳴る午前10時、これは処刑の時間だ。 数年前、某国に支配された自国において、原住民達は捕獲対象とされていた。捕らえられれば重労働を強いられ、使えなくなった人間は処刑される。 逃げなければ、待つのは死――。 これは、生きるため逃げ続ける、少年たちの逃亡劇である。 2016.10完結作品です。

処理中です...