26 / 80
第四章 「ひび割れた白熱球」
4
しおりを挟む
「中学を出てからは、まともな仕事なんて出来なくて。それこそ水商売の男や女にこびへつらって、店の手伝いや掃除、買い物なんかをしながら何とか生活資金を稼いで、それで生きていくしかなかったんですよ」
そんな過去を生きてきた人だから、あんなにも穏やかに振る舞えるのだろうか。私は鳥井祐二という男性に対して自分が抱いていたものが、ちっとも太刀打ちできないくらいのバックグラウンドがあるのだと、思い知らされていた。
上着が捲り上げられていく。
露出したブラの隙間から毛の多い金森の指が滑り込み、私の汗ばむ乳房を揉んだ。
「それでも高校くらいは出たくて、土下座して金を借りて何とか定時制に通っていたら、今度は自分が働いていた店のオーナーが夜逃げして、その上放火のおまけ付きだ。警察がやってきて、第一発見者だったあいつが一番に疑われましてね」
まるでマッサージでもしているかのような、ゆったりとしたリズムと強さだった。目の前で燃え続けるアロマキャンドルは鼓動が早くなる私に、落ち着いてリラックスをすればいいよ、と囁《ささや》きかけているみたいに優しい。
「そんな時でした。私が鳥井と出会ったのは。そういうガキどもの世話を頼まれていた頃があったんですよ」
私は金森の成すがままに腕を上げて上着を脱いでしまう。ブラのホックが外れて、するりとズリ落ちた。露になった乳首はつんと背伸びをしていて、部屋の空気を感じてじとりと汗ばむ。パートで動かした体のべたつきが気になって、
「仕事が終わって、そのままなんですよ……」
そう口にするけれど、彼は気にせず話を続ける。
「あの当時はあいつも荒れててね。今みたいにとても人前に出して仕事させるなんて無理でしたよ。そこらの不良どもと殴り合ってる方が性に合ってる。そんな奴でした」
彼は私の前に回り込むと、二つの丘の間に頭を滑り込ませる。
「あの、駄目です……」
抵抗しようと手で彼の肩を押さえるけれど、胸の谷間を埋める頭は動かない。金森はくぐもった声で、
「あいつは、俺が買ったんです」
そう言って、両手で胸を揉みしだく。
あ……、と思わず声が漏れて、私はそのままソファに背を預けてしまった。彼の唇が乳首の上を這う。転がすように舌がうねり、私の声は吐息に変わった。
「男を買う。その意味が、海月さんみたいなずっと日向を歩いてきた人に、理解できますかね」
頭が働かなかった。
ぽわんとして、乳首の先端に何かが触れる度に背中まで痺れが走る。
「どういう、意味なんですか」
それでも必死に声を出すと、彼は笑ってから、私の双丘にしゃぶりつく。唾液にまみれて、温かい。
「男が、男を買う。つまりね、己の欲望の捌け口にするということですよ」
その意味を理解しようとした私を、金森の腕が押し倒した。ソファに横になり、スカートがめくれ上がる。私は必死に押さえたけど、彼は脚を掴んでそのまま持ち上げた。腿が露出し、その間にあるショーツが掴まれる。
「嫌……」
声が、大きくならない。
想像の中で、金森を前に何も言えないまま服を脱がされている鳥井祐二が、涙を浮かべていた。首を横に振りながらも、彼はその乳首を露出させ、金森にされるがまま、蹂躙される。どんな声で我慢していたのか、私にはとてもそこまで想像が及ばなかったけれど、息苦しくて、口を開けば、吐息は炎のようだった。
「彼も……こんな風に?」
涙で、視界が震える。
「祐二はね、いい体をしているんですよ。筋肉質すぎず、それでいて尻の形なんかきゅっと締まっている」
「そんなの……」
男の人同士。
信じたくはなかったけれど、金森の話を嘘とは言えない私もいた。
「海月さんだって、ほら、こんなにしっかりと欲しそうになってる。あいつのアレを想像して、自分で慰めているんでしょう?」
「私はそんな!」
「したこと、ありますよね?」
金森の目から、戸惑いの視線を外した。「正直な人だ」
そう言って、彼の頭が私の股間に押し入ってくる。
舌が、敏感な部分を攫う。唾液と私のものが混ざり合い、音を立てて彼はそれを啜った。
熱い。
どうしようもなく、火照る。
私の中に、まだこんな火種があったなんて……。
涙が顔を、愛液が金森を、濡らした。
抵抗しようという力は徐々に弱くなっていき、私は、彼を、受け入れた。
久しぶりの、挿入だった。
心は何とか意識を保とうとするけれど、それは霞み掛かったようにぼんやりとして、ただ心地良いことだけが頭を支配した。
はぁ。
はぁ。
吐息が、熱い。
体が、熱い。
落ちる涙も、熱かった。
しょんぼりとしたコンドームが、床に投げ出された。
私も、金森も、ただ息荒く、裸のまま、互いを見た。
ソファに腕を預けて体を起こした私は、彼の屹立したままのペニスを見て、尋ねる。
「どうして、射さなかったんですか」
だが金森はその問いに答えず、ただ笑顔を浮かべて浴室に向かった。
私は落ちている服をまとめて、汗でまとわりつくのも構わずにそれを纏い、さっさと部屋を抜け出した。外は既に真っ暗で、タクシーの明かりを求めて大通りへと急いだ。
そんな過去を生きてきた人だから、あんなにも穏やかに振る舞えるのだろうか。私は鳥井祐二という男性に対して自分が抱いていたものが、ちっとも太刀打ちできないくらいのバックグラウンドがあるのだと、思い知らされていた。
上着が捲り上げられていく。
露出したブラの隙間から毛の多い金森の指が滑り込み、私の汗ばむ乳房を揉んだ。
「それでも高校くらいは出たくて、土下座して金を借りて何とか定時制に通っていたら、今度は自分が働いていた店のオーナーが夜逃げして、その上放火のおまけ付きだ。警察がやってきて、第一発見者だったあいつが一番に疑われましてね」
まるでマッサージでもしているかのような、ゆったりとしたリズムと強さだった。目の前で燃え続けるアロマキャンドルは鼓動が早くなる私に、落ち着いてリラックスをすればいいよ、と囁《ささや》きかけているみたいに優しい。
「そんな時でした。私が鳥井と出会ったのは。そういうガキどもの世話を頼まれていた頃があったんですよ」
私は金森の成すがままに腕を上げて上着を脱いでしまう。ブラのホックが外れて、するりとズリ落ちた。露になった乳首はつんと背伸びをしていて、部屋の空気を感じてじとりと汗ばむ。パートで動かした体のべたつきが気になって、
「仕事が終わって、そのままなんですよ……」
そう口にするけれど、彼は気にせず話を続ける。
「あの当時はあいつも荒れててね。今みたいにとても人前に出して仕事させるなんて無理でしたよ。そこらの不良どもと殴り合ってる方が性に合ってる。そんな奴でした」
彼は私の前に回り込むと、二つの丘の間に頭を滑り込ませる。
「あの、駄目です……」
抵抗しようと手で彼の肩を押さえるけれど、胸の谷間を埋める頭は動かない。金森はくぐもった声で、
「あいつは、俺が買ったんです」
そう言って、両手で胸を揉みしだく。
あ……、と思わず声が漏れて、私はそのままソファに背を預けてしまった。彼の唇が乳首の上を這う。転がすように舌がうねり、私の声は吐息に変わった。
「男を買う。その意味が、海月さんみたいなずっと日向を歩いてきた人に、理解できますかね」
頭が働かなかった。
ぽわんとして、乳首の先端に何かが触れる度に背中まで痺れが走る。
「どういう、意味なんですか」
それでも必死に声を出すと、彼は笑ってから、私の双丘にしゃぶりつく。唾液にまみれて、温かい。
「男が、男を買う。つまりね、己の欲望の捌け口にするということですよ」
その意味を理解しようとした私を、金森の腕が押し倒した。ソファに横になり、スカートがめくれ上がる。私は必死に押さえたけど、彼は脚を掴んでそのまま持ち上げた。腿が露出し、その間にあるショーツが掴まれる。
「嫌……」
声が、大きくならない。
想像の中で、金森を前に何も言えないまま服を脱がされている鳥井祐二が、涙を浮かべていた。首を横に振りながらも、彼はその乳首を露出させ、金森にされるがまま、蹂躙される。どんな声で我慢していたのか、私にはとてもそこまで想像が及ばなかったけれど、息苦しくて、口を開けば、吐息は炎のようだった。
「彼も……こんな風に?」
涙で、視界が震える。
「祐二はね、いい体をしているんですよ。筋肉質すぎず、それでいて尻の形なんかきゅっと締まっている」
「そんなの……」
男の人同士。
信じたくはなかったけれど、金森の話を嘘とは言えない私もいた。
「海月さんだって、ほら、こんなにしっかりと欲しそうになってる。あいつのアレを想像して、自分で慰めているんでしょう?」
「私はそんな!」
「したこと、ありますよね?」
金森の目から、戸惑いの視線を外した。「正直な人だ」
そう言って、彼の頭が私の股間に押し入ってくる。
舌が、敏感な部分を攫う。唾液と私のものが混ざり合い、音を立てて彼はそれを啜った。
熱い。
どうしようもなく、火照る。
私の中に、まだこんな火種があったなんて……。
涙が顔を、愛液が金森を、濡らした。
抵抗しようという力は徐々に弱くなっていき、私は、彼を、受け入れた。
久しぶりの、挿入だった。
心は何とか意識を保とうとするけれど、それは霞み掛かったようにぼんやりとして、ただ心地良いことだけが頭を支配した。
はぁ。
はぁ。
吐息が、熱い。
体が、熱い。
落ちる涙も、熱かった。
しょんぼりとしたコンドームが、床に投げ出された。
私も、金森も、ただ息荒く、裸のまま、互いを見た。
ソファに腕を預けて体を起こした私は、彼の屹立したままのペニスを見て、尋ねる。
「どうして、射さなかったんですか」
だが金森はその問いに答えず、ただ笑顔を浮かべて浴室に向かった。
私は落ちている服をまとめて、汗でまとわりつくのも構わずにそれを纏い、さっさと部屋を抜け出した。外は既に真っ暗で、タクシーの明かりを求めて大通りへと急いだ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる