音の鳴る箱

凪司工房

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 って、ちがーう!

 こんな壮大な話にしたい訳じゃない!

 私はただ普通に恋に落ちて恋愛したいだけ!

 毎日告白されるのに、付き合ったのは数回だけ。

 私自身に問題があるという訳でもない。

 イケメンなお兄ちゃんに愛されてて羨ましいなんて言われるけど、全くそんなことない。

 だって、私に彼氏ができない理由、それはずばり!

 お兄ちゃんのせいなんです!


 この前だって…


「ずっと前から好きだった。付き合って欲しい」

 私も彼のことが好きだった。
 返事はもちろん

「私も『ストープ』...お兄ちゃん」

 一体どこから聞き付けて来たの。

「初めまして」

「ど、どうも...」
美月みつきの事が好きなんだって?」

「えっと、この方は...」
「あ、私のお兄ちゃん」

 告白してるところを見られるとか嫌だよね。

「初めまして、」
「美月のこと好きなの?」

「はい!美月の事を好きな気持ちは、だ『誰にでも負けないって?口ばっかりじゃなぁ』」

「ちょっとお兄ちゃん!」

 もう、失礼なこと言わないでよ。

「俺よりも美月の事が好きだって証明できる?」

 また何を言い出すのかと思えば、

「はい」

 こんな人相手にしなくていいのに、

「じゃあ...美月のこの全部分かりきってるんだ」

「それは、」

 まだ付き合ってもないんだから、全部なんて知ってるわけない。私だって知らない。

「これから、お互い少しずつ知っていけばいいんだから」

「今は彼と話してるんだよ」

「だって…」

 こうなったら私でも止められない。

「ねぇ、美月の身長、体重、バスト、血液型、好きな食べ物、怖いものぜーんぶ知ってるのかって聞いてるんだけど?」

 今、聞いてはいけないものがあったような…

「ちょっとお兄ちゃん!」

 そんなの知ってる訳ないでしょ!?
 知ってるお兄ちゃんの方が怖いよ!

「えーっと、ごめん美月。やっぱり今の告白忘れて」

「え...」

 また…?
 また告白されて直ぐに振られるの?

「あー、ごめんね。なんか悪いことしちゃったみたいだね」

 全く悪いって顔してない。

「お兄ちゃんはなんでいつも私の邪魔ばっかりするの!?」

「なんの事?俺はたまたま通りかかっただけだよ」

 たまたま…

「嘘つかないで!」

 これで何回目だと思ってるの。

「俺が嘘なんかつくと思ってるんだ....」

「いや、それは...思ってないよ、」

 いつもこのやり口で負かされる。
 だって、そんな顔されたら、良心が痛むんだもん

「ならよかった」


 こうやって、いつもお兄ちゃんに言い負かされてしまう。


 もう、二度と恋人なんて作れないかもしれない。
 そう思っていたのに、転機が訪れた。
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