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第6段階

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「……え、霧時さん死ん……えっ、え?」

私の手元には深田さんのタブレット。
私は深田さんのお屋敷にお邪魔して半ば定例となりつつある読書会をしていた。
深田さんが毎週もしくは毎月電子で買って読んでいる原作最新話を見せてもらう代わりに、私が過去に買った薄い本やおすすめのBL作品をお貸しする、というとても楽しい会だ。inヤクザさんのお屋敷で組長と一緒っていうのがすごく異質だけど。
しかし今日は……

「もう、信じられない」

推しが死んだ。
あまりにも唐突すぎて、私は和室の天井を見上げて放心する。
先月号じゃあんなに活躍してたのに。むしろあの活躍が伏線?いやでも、あんなに一生懸命戦ったのにこんな結末……

「だから今日ちょっと深田さんのテンション低いんですね」
「まあ、霧時のおかげで延命寺が救われた過去もあるわけだからな……」

楽しみにしていた鬼槍の最新話で、まさかこんなお通夜みたいになってしまうとは。
先月号の霧時さんの活躍を受けてイラスト描いて待ってたのに、こんなことになるとは。

「他の人たちもピンチですし、もしかして水岡さんも死んじゃったり……」
「縁起でもないこと言うな……と言いたいところだが、原作者なら殺りかねねぇよな」

私はタブレットを畳の上に置いて大きく息を吐く。
一旦落ち着こう。ちょっと他のものを読んで気を紛らすんだ。
深田さんに貸した竹×梅本でも読もう。ちょっと幸せな世界に行きたい。

「……そういえば深田さん、この前色々買われてたみたいですけど、どこにしまってるんですか?」
「そこの金庫に入れてる。そのうち溢れるからもう一箱買うつもりだ」

そう言って深田さんは懐から鍵を取り出して鍵穴に差し、暗証番号を入力する。ちなみに暗証番号は推しだという画家スト、ゴーキンの誕生日らしい。徹底している。
開けていただいた金庫の中は……え、ちょっと祭壇っぽい。そこそこ大きい金庫だから、中で仕切ったりしてジャンル別に、パッと見てわかるようにか、しれっとアクリルスタンドが置いてあった。

「本当はこの中押入れ全体でやりたいんだが、流石にな……」

うん。押入れ開けて全面がこれだったら圧倒されるな。深田さんの財力なら等身サイン入りパネルとか置いててもおかしくない。
……というか、なんか端っこの申し訳程度のスペースに輪ゴムで束ねた国内外の札束とか怪しげな古い箱とか入ってるけど、それ一緒に入れていいやつなんですかね。早めに金庫もう一個買ってください。

「私もお金とスペースがあったらもっと色々並べたり新しい漫画買ったりしたいんですけどね……」
「漫画なら電子でもいいだろ」
「電子はたまに裏切ります。紙は手元にある限り裏切りません」

描いてる途中に電源が落ちたり突然フリーズしたり、うっかり上書きで保存したり、何度泣き寝入りをしたことか。
ただ深田さんのタブレットお借りして漫画を読んでいると、場所取らないし発売日の0時に最速で読めるし、いいなとは思う。あとはちょっと際どい、本棚に並べるのを躊躇するやつとか読むには最適。
深田さんはあれもこれも購入されてるから、そういうのあっても埋もれてるけど。というか、深田さんめちゃくちゃ買ってますね。財力って最強だな。

「これもうすぐアニメ始まるらしくて気になってたんですよね。やっぱり面白いですか?」
「欲しいなら買って送るぞ。ああ、ハーバ×ボッシがお薦めだ」

それはつまり、買うから書けと。

「あとはこの新作もよかったな。先生好きだろ、ヤンキー×アウトロー」

……よくわかっていらっしゃる。
というか、深田さんの存在がまさにそのアウトローなんですがね。それは黙っとこう。
最近じゃお兄さんがいることも判明したし。
そのお兄さん、コスプレイヤーのヨカゼさんだったわけだけど、あれから何度かDMのやりとりをしている。
あんまり詳しいことは残せないからと、結局詳しいことはよくわかっていない。途中普通にイベントの感想とかで盛り上がったりしちゃったし。
深田さんも、イベントの後もお兄さんについては触れてなかったから、色々複雑なのかもと聞いていないし。
ちょうどその時、私のスマホが鳴った。

『ねこみや先生、今度オフ会しませんか?弟も呼んでいただいて構いませんよ。俺からも声かけます』

そして少し遅れて、深田さんのスマホにも着信が入ったのか、深田さんがスマホを手に取る。
私と深田さんは顔を見合わせた。






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