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番外編
4-7
しおりを挟む海の水は冷たくて、中途半端に脱がされたドレスがまとわりつくせいでうまく泳ぐ事ができない。
それでも何とか腕と足を動かし、船の灯りなのか、僅かに明るい方に向かった。
「ぷはっ!」
限界まで酸素を消費しきった身体に、新鮮な空気が沁みる。肺から全身に酸素が行き渡っていくのを感じた。
波に揉まれながらも何度も水面に顔を出し、大きく息を吸っているうちに、耳元で早鐘を打っていた心臓は落ち着いてきた。辺りを見回すと、巨大な壁のように見える客船の船体がすぐ近くにあった。
こんな大きい船の動きに巻き込まれたらひとたまりもない。
なんとか離れようと泳いでみたけど、波が高いせいでまともに動けない。
顔を出そうとするだけでもかなりの体力を消耗する。
やがて浮かんでいるのがやっとになり、身体も冷えてきて意識が朦朧としてきた時だった。
波とは違う、慌ただしい水音が近付いてくる。
「捕まれ!」
その必死な声に、私の意識は叩き起こされた。
「た、貴也さん……」
貴也さんの手が私の腕を掴む。
掴まれたところから温かい感覚が広がっていき、私は残った力を振り絞って貴也さんの身体にしがみついた。
「待ってろ。すぐ船だ」
貴也さんはそう言って自身の腰に巻き付けていた綱を手に取り、それを手繰り寄せるように引いた。
上から見えた小さな船、きっとそれに繋がっているんだろう。
助かったんだ、と安心したけど、冷たい海と波で消耗した身体は、隙あらば意識を手放そうとしていた。
「もう少しだから耐えてくれ」
貴也さんはそれがわかっているのか、何度も声をかけてくれる。
やがて貴也さんは動きを止めて、私の身体を抱きしめた。
しばらくして、私の身体がずっしりと重くなる。海から上がったみたいだ。
外の空気に触れたら寒いかと思ったけど、既に極限まで冷え切ってしまっていたせいで何も感じなかった。
寒さの事しか考えられないでいると、濡れていた服を脱がされて、代わりに温められた毛布を巻かれる。
「風呂に入れてやりたいが、小さい船だからもう少し我慢してくれ」
貴也さんはそう言ってカイロや温かいお湯の入ったペットボトルを私の身体にあててくれた。
大きいペットボトルを何本か抱き抱えるようにしているうちに、少しずつ身体の震えはおさまってきて、感覚もだいぶはっきりとしてきた。
「スープ持ってきたんだが、飲めそうか?」
貴也さんが金属製のマグカップを持ってやってくる。ふわりと漂う湯気からは生姜の香りがした。
「ほら、口開けろ」
口元にスプーンが近付けられて、口を開けるとスープが口の中に広がった。
程よい温度に冷まされたスープは、身体が熱を求めるあまり味わう間もなく喉の奥に吸い込まれていく。
ああ、温かい。
お腹からじんわりと温もりが広がっていくのがわかった。
同時に、恐怖と緊張で張り詰めていた糸が緩んでいき、その裏で渦巻いていた感情たちが顔を出す。
「あ……う……」
逃げたかった、助けて欲しかった、自分が悪いのか、どうすればよかったのか、寂しかった、怖かった。腕を掴まれる感触や頬にかかる荒い息遣いを思い出すと、その感覚が再現されるようで、でも思い出すことをやめられない。
色々な感情が次から次へと溢れ出て涙が止まらなかった。
「梢……」
貴也さんの声が私の名前を呼ぶ。
その硬い指先が頬に触れた時だった。
「熊谷お前、何自分の女泣かせてんだ?」
低いのによく通る声が小さな船室に響いた。
声のした方を見ると、子綺麗な身なりの初老の男性が入り口に立って私たちを見ていた。
貴也さんみたいにガタイが良いというわけでも強面というわけでもないのに、妙な存在感のある人だ。
「おお、嬢ちゃんが熊谷のコレか」
小指を立てるその仕草はある程度の年齢を感じさせるけど、違和感は無くむしろ様になってすらいる。
「お前は会うの初めてだよな。神木組(ウチ)の若頭だ」
貴也さんが小声で教えてくれる。
この人が若頭……あんまり若くない。
いや、次の頭候補って意味で年齢は関係ないのは知ってるけど、どうも名前の響きが耳慣れない。
あと「若」と言うにはこのお方あまりにもイケオジすぎる。
歳を重ねたからこそ出る渋みが、元から整っていたであろう顔に添加されて深みを生み出している。
さぞやモテるんだろう。
そんなことを思いながらぼーっと見ていたら、貴也さんの腕が伸びてきて身体を抱き寄せられた。
「何余計な心配してんだ。余裕のねぇ男は嫌われるぞ」
「相手が頭なので」
「俺もそこまで見境無くはねぇよ。特にお前は怒らせると怖ぇからな」
そう言ってイケオジな若頭は低い声で笑う。
「まあ、興味はあったが。コイツを骨抜きにするたぁどんな魔女かと思えば、可愛らしい嬢ちゃんだったからな」
イケオジは渋いお顔によく似合う含みのある笑みを浮かべた。
その破壊力たるや、横に貴也さんがいながら私の身体が強張るレベル。「大人の色気」が血肉を得て歩いてるみたいな人だ。
「あんまり見ない方がいいぞ」
貴也さんは私の首の後ろに手を回して視線を逸らせようとする。若頭に対して失礼な気がしたけど、目に毒なのは確かだ。
「随分と過保護だな。そこまでされると燃えて……いや、冗談だよ冗談。怖ぇ顔すんな」
私から貴也さんの顔は見えないけど、気の弱い人なら倒れてそうな顔をしているのはなんとなくわかった。
そしてそんな顔を見てもこのイケオジは手をヒラヒラと振って面白がっていらっしゃる。さすが若頭。
「それにお前の女を俺が満足させられるわけねぇだろ」
「当然です。俺を満足させる女ですよ」
「んじゃあ尚更、俺が相手じゃ不満だろうな」
「でしょうね」
お二人とも私をなんだと思っているんだろうか。私は貴也さんが好きなんであって、そういうことが好きなわけでは……
「梢を満足させられるのは俺だけです」
「お前にそんなことを言わせるたぁ相当だな」
「惚れてますからね」
先程から会話の内容がその……居た堪れないのでやめてくださいっ……!
でも私が口を開いて止めるないとたぶん止まらない。でもこの会話に割っていく勇気がない。恥ずかしいし。そもそも何を言えば?
満足も何もいつも力尽きて倒れるのは私の方で……なんて言えるかっ!
恥ずかしさで全身が燃えそうだ。冷え切ってたはずなのに。
押入れの中とかに引き篭もりたい衝動に駆られていたら、貴也さんがため息をついて私に耳打ちする。
「あんまり関わるな。俺が言うのもなんだが、女癖が悪い」
本当に貴也さんが言うのもなんだがなお話ですね!?
確かにとても経験豊富そうではありますが。もしかして年の功というよりもこれまでの遍歴か……?
「大体何言ったかわかるが、お前に言われたかねぇだろ」
「そう……ですね?」
思わず返事をしてしまう。
まあ貴也さんの場合は女癖というか性癖?性癖が手広くて尽きない……?
「まあそいつに嫌気がさしたら俺に相談しろ。匿ってやる」
「生憎ですが若頭のお手を煩わせる事はないかと」
貴也さんが私を抱く腕に力が籠る。
それをしっかりと見ていたイケオジはよく響く声でひとしきり笑うと、大きく手を叩いた。
すると先ほどまでの浮き足だっていたような空気が一変してまとまった。
「とりあえず貸しだな、熊谷」
「わかってますよ」
貴也さんはやれやれと息を吐く。
……そういえば前に貴也さん、「あの人に借りは作りたくない」とか言ってたような。
この船ってもしかして、貴也さんがこの人に頼んで出してもらったのかな。そうだとしたらかなり大きい借りになってしまうんじゃ?
「心配すんな。嬢ちゃんからは取り立てねぇから」
「でも、貴也さんには何かあるんですよね……?」
ヤクザ間の貸し借りって、あんまり良い予感がしないのですが。
「なに、俺が組長になったら今以上にこき使うって話だよ。ああ、極道に定時はねぇが、欲求不満にならねぇ程度には帰すから」
楽しそうにイケオジは言う。貴也さんは何かを覚悟した表情を浮かべていた。
「す、すみません……」
「気にするな。今と大して変わらねぇよ。お前が無事だったんだ。それでいい」
貴也さんの大きな手が私の頭を撫でる。
その様子をイケオジ若頭が妙に温かい目で見守っていた。
「熊谷、あとで外に来い。荒れてて危ないから嬢ちゃんは中で休ませろよ」
そう言い残してイケオジは去っていった。
ここではできない話とかがあるんだろう。私は熊谷さんから離れた。
「助けに来てくれてありがとうございます。私はここにいるので行ってきてください」
「悪いな。中のものは好きに使っていい。奥の袋の中に寝袋もあったはずだ」
貴也さんは私の頬に口付けを落とした。
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貴也さんはゆっくりと息を吐いた。
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見とれてしまったのは事実なので素直に謝る。
でもあんな俳優顔負けの色気しかないイケオジ、視界に入れない方が無理だと思います。
そんな私の心の奥底の声が伝わってしまったのか、もしくは貴也さんの通常運転なのか、貴也さんは妙い据わった目で私を見る。
「明日は休ませてやれねぇから、今日は早く休めよ」
貴也さんはそんな不穏な言葉を残して外に出ていった。
ーーーーー
貴也さんは有言実行する人だ。
だからあの言葉も文字通り実行されるんだろう。
昨日はあの後、港に着いてすぐに私だけマンションに送られた。
お風呂に入ったら一気に疲れが出てベッドに倒れ込んでしまい……起きたら昼だった。
そしていつの間にか戻ってきていた貴也さんに、私は押し倒されている。
「お、おはよう……貴也さん」
おはよう、つまりこれから起きるので、起き上がらせてほしい。
私の背中とお布団はくっ付いたままだ。
「よく寝たみたいだな」
「は、はい。おかげさまで」
外はすっかり明るい。何時間寝たのやら。
貴也さんは腕時計を外して私に見せる。時間はお昼を少し過ぎたくらい。うん、よく寝た。
「もう半分もねぇな」
「そ、そうですね」
半分とは「今日」の事。確か貴也さんは昨日、「明日は休ませない」と言った。
つまり、これから休ませる気はないと、そういう事だ。
いつ帰ってきていたのかはわからないけど、起こさなかったのは貴也さんなりの優しさだろう。
「あんまり時間もねぇから始めるか」
いや、まだ10時間以上もあるので十分ではないでしょうか。
そう言うと、貴也さんは首を横に振った。
「何日抱いてなかったと思ってんだ?」
「1週間くらい……ですよね」
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「昨日の事は……だって金谷さんもまだ……」
貴也さんだって暇ではないはずだ。昨日の誘拐は金谷さんが仕組んだ事で、金谷さんは組のお金の持ち逃げもしている。見つかったとはいえ、船の上にいることには変わりない。放っておけば海外に逃げてしまう。
「……安心しろ。全部終わったから」
「え?」
どう相談するべきか考えていると、貴也さんが私の頭を優しく撫でてくれた。
「お前は何も心配しなくていい」
「そんなこと言われても、今回のことは私のせいなんですよね?私がいなければこんな事には……んっ!」
続けようとした言葉は口付けで押し込められた。
唇を重ねるなんてそんな生易しいものじゃない。開いていた口の中に舌をねじ込まれて、唇を強く吸われる。
「ん!んんっ!」
口が塞がれてしまって息ができない。酸素が足りず視界がくらくらし始めてようやく、貴也さんは唇を離した。
「お前は悪くねぇ。元凶はあいつだ」
「で、でも金谷さんが……んんっ!」
まだ呼吸は落ち着いていないのに、貴也さんは再び私の口を塞いだ。二度目のそれは先ほどよりも長く、激しいものだった。
背中を叩いたり肩を押したりして抵抗を試みても、貴也さんの体はびくともしない。
「……っ!はぁっ!」
やっと解放されたと思って大きく息を吸っても、次の瞬間には再び唇を塞がれてしまい、それを繰り返されるうちに私の口は乱れた呼吸音しか発しなくなってしまった。
「俺以外の男の名前を出すな」
貴也さんの不機嫌な声が降ってくる。
私は肩で息をしながらなんとか頷いた。
私に他の人の名前を呼ばせないために、貴也さんはここまでしたのか。
回らない頭でそんなことを考えていると、貴也さんの手がバスローブの上から私の胸元に触れた。
ゆっくりと馴染ませるように触れながら、その手は少しずつ服の内側に入り込んでいく。
「んっ……」
どうすれば私が感じるのか、誰よりも熟知している貴也さんの手の動きに迷いはない。
下着をずらして先端を露出させると、指の後ろで撫でるように優しく刺激される。
やがて胸元から腰へ、腰から大腿へと触れられる場所が変わっていく。
その間にバスローブは完全に服の体をなさなくなり、貴也さんも上着を脱ぎ捨てていつしか直接肌が触れ合っている。
このまま身を任せてしまえば快楽に溺れる事ができる。
けれど私の中で一抹の不安が消えていなかった。
本当に全て終わったのか。
「どうした。金谷じゃなくて頭か?あの人は……」
「ち、違いますよ!」
私の不安と違うところを貴也さんは気にしていた。
貴也さんがこんな嫉妬する人だったとは……嫌ではないけど、嫌いには全然ならないんだけど……!
「本当に大丈夫なのか、不安なだけです」
そう伝えると貴也さんの手が止まって、眼差しが真剣なものになる。
射るような視線に心臓が跳ねた。
「俺を信じろ。絶対にお前の事は守る」
そんな風に言われたら、頷く事しかできない。
貴也さんの事はこの世で一番信頼している。だから信じるしかなかった。
「ありがとう、梢」
貴也さんは私の身体を強く抱きしめる。私も背中に腕を回した。
「それに、す、好きなのは貴也さんだけだから……あうっ!」
「俺もお前だけだ。だからお前は俺だけを見てろ」
貴也さんの指先が湿った秘所に入り込み、内側から私の身体を刺激する。
指の腹で撫でられた部分は熱を帯びて、触れられるたびにどんどん高まっていく。
全身を巡る熱は疼きに変わり、絡まった脚が擦れる感覚すらも心地良い。
柔らかな愛撫は私の身体を甘く蕩けさせる。
ほんの少し弄られただけで、止めどなく蜜が溢れて赤く熟れた花芯を濡らす。
貴也さんの指で広げられた入り口は、内側から湧き上がる疼きと期待でひくついていた。
「もう十分すぎるくらい濡れてるな」
濡れた指先を挿れられても、包み込むようにして受け入れてしまう。
もう指では足りない。そんな身体にされてしまった。
「貴也さんがほしい。で、でもあんまり激しくは……」
「ちゃんと言えても我儘だな。お前の足腰が使い物にならなくなるまではやるぞ」
「動けなくなるのは困りま……んあっ!」
普段でも容赦無いのに、わざわざ口に出すということは手加減をする気が一切無いということだ。
その意思表示か、奥に猛りを叩き付けられる。
内側が一気に貴也さんで満たされて、私の身体はひとりでに震えていた。
「お前が欲しいって言ったんだろ?」
貴也さんは悪い笑みを浮かべて奥に猛りを押し付ける。
「で、でも……」
言葉とは裏腹に、刺激を求める私の身体は貴也さんのものを締め付けて離さない。
それをわかっている貴也さんは焦らすようにゆっくりと猛りを引き抜こうとする。
私の身体が追い縋ることを知っているから。
「相変わらず口は素直じゃねぇな。身体に聞いた方が早い」
貴也さんは擦られ熟れた花芯に手を伸ばし、容赦なく押し潰した。
敏感になりすぎている部分にその刺激はあまりにも強すぎる。
一瞬で頭の中が真っ白になって視界の端で星が瞬いた。
争うことを許さない快楽が全身を駆け巡り、ひくひくと痙攣する腰を貴也さんの手が優しく撫でる。
「まあただ脚を開かせるより楽しいからな。それに恥ずかしがってるお前は可愛い。ぐちゃぐちゃにしてやりたくなる」
貴也さんのものが私の中で質量を増した気がした。
溢れる蜜と汗がシーツを濡らして皮膚に張り付く。
出し入れを繰り返す貴也さんのものは、艶やかに蜜をまとっていた。
「あっ!やぁ……っ!」
激しく奥を突かれるたびに、大きく身体が震える。
それなのにぐずぐずに濡れた部分を見下ろす貴也さんの表情はまだ物足りなさげで、内側を掻き回しながら次の事を考えているようだった。
貴也さんは私の身体をうつ伏せに転がすと、腰を引き上げて膝立ちにさせる。
そして四つん這いになった私の背後から、休む事を知らない猛りを挿し込んだ。
挿入の角度を変えられて、さっきまであまり刺激されてこなかった部分に快楽が与えられる。
貴也さんの腕に揺すられるがままに腰を動かしているうちに、自分の身体が自分のものではないないような感覚に陥った。
与えられる快楽が大きすぎて、処理が追いつかない。
「このままここに閉じ込めてぇな。二度と同じことが起きねぇように」
「……っ!それは、いやです……困ります……!」
「困らせねぇよ。全部俺に任せればいい。前にも言ったろ」
貴也さんは私の奥に欲望を突き立てたまま、腰を支えていた手をゆっくりと移動させて私の腹部を撫でる。
内側にあるものの存在を知らしめられているようで、貴也さんの輪郭が妙にはっきりと浮かび上がった。
「あっ……」
それを感じてしまった刹那、私の意志とは無関係に内側が貴也さんのものを締め付けるように動く。
「……っ、欲しがってるのか?」
貴也さんは余裕を失いつつある声で言う。
私はほんの少し悩んで、頷いた。
自分の方からねだるなんて恥ずかしい。でもそんなちっぽけな感情なんてどうでもよくなるくらい、私の身体は貪欲になっていた。
「貴也さんの、せいですから。責任を取ってください……っ」
髪の毛が逆立つくらいの快楽も、離れた時の切なさも、内側を巡る熱の心地よさも、私に教えたのは貴也さんだ。
「ああ、わかってるよ」
貴也さんは私の身体を仰向けに転がして、両脚を開かせる。
そして入り口を大きく広げると、そこに再び楔を勢いよく打ち込んだ。
ずるりと内側に侵入したそれは、肥大した先端を擦り付けながら深部に到達し、最奥をこじ開けた。
「ああっ!」
衝撃と、それ以上の快楽が全身を震わせる。
奥深くまで入り込んだ貴也さんのものは、質量と熱を増しながら小刻みに行き来を繰り返して、私を満たした。
同時に熟れて蜜に塗れた花芯を弾かれる。
貴也さんのもので擦られながら、さらに与えられる強い刺激に私の身体は大きく跳ねた。
「いっ……んあっ!や、やめ……っん!」
快楽でひくつく半身は、私の意思を無視して縋るように貴也さんの身体に身を寄せる。
そして私の内側も、疼きに耐え切れず貴也さんの半身を締め付けた。
「何回目でも、お前の中は最高だな」
「わ、私もっ……!」
回を重ねるたびに慣れるどころか感度が高まっていく一方だ。
もうこの人なしで居られないのは、私の方だった。
身体を抱きしめる腕に力を込めると、貴也さんはその猛りを私の身体の奥深くに沈める。
「……っあ!」
「ぐっ……」
ぐちゃぐちゃになった身体がぶつり合うたびに繋がった場所が卑猥な水音を立てる。
はっきりと聞こえるその音は耳からも私を犯した。
私の内側を満たす熱がどんどん膨張して、はち切れそうだ。
「んんっ!」
限界まで高まった熱が弾けて、私と貴也さんは同時に果てた。
お互いに荒く息を吐きながら、言葉を交わす事を忘れて唇を何度も重ね合わせる。
呼吸が落ち着くまでゆっくりとした口付けを続けて、やがて離れた。
貴也さんの黒い瞳がじっと私を見つめている。
私も貴也さんの鋭くて怖い、それすらも愛おしい目を見つめ返した。
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