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3章
22.帰省はのんびり4
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大原さんとがっつり目が合ってしまったけど、幸いなことに先輩たちには気付かれなかった。
まあだからといってこの状況が良くなることはないですよね!あー、大原さんの目が怖い。
そしてこの男の人は、藤沢造園って書いてあるからたぶんだけど先輩のお父さんだよね……?なんで大原さんと先輩のお父さんが一緒にいるの!?
「親父もいたのか」
先輩はあまり驚いた様子もなく、さらにちらりと大原さんの方を見た。明らかにそっち方向の人ってビジュアルの大原さんを見ても特に不思議に思っていなさそう。造園の職人さんの中にもあれくらい迫力ある人が普通にいるんでしょうか。
「店主にお前が彼女を連れてきたかもとか何とか言われてな。そちらのお嬢さんがそうなのか」
先輩のお父さんは私の方をじっと見る。
これは、ちゃんと否定しておかないとまずい。
「い、いえ。先輩とは、そういうことはないです……」
先輩のお父さんの前で、おたくの息子さんには一切興味がありませんだなんて言えるはずもないので、付き合ってはいませんと伝えてみる。
向かい側にいる大原さんの目が、だんだんと据わってきてるんですけど、もっとちゃんと否定しろということでしょうか。これ後で絶対お小言食うぞ……私、何も悪いことしてないと思うんですけど。
「というか親父、いきなり出てこないでくれよ。山野が驚いてる」
「ああ、悪かった。でもな、彼女はお前の彼女じゃないと言っているが……どういうことだ?」
「まだ違うだけだ。な?山野」
なぜ同意を求めてくるんですか!?言いましたよね、彼氏いるって!
「そうなのか?」
あれ?なにかを期待されている……?そう言えばさっき聞いた会話で、早く本命をとかなんとか言ってた気がする。
「ち、違います!私は、その……」
言っちゃっていいのかなと、私は大原さんの方をちらっと見る。でも、大原さんは微かに首を横に振った。う……話さない方がいいってことですね。わかったけど、どうしよう。下手なこと喋ったら墓穴掘るかもしれないし、でも通すものは通しとかないと。
「彼氏、いるので」
堂々と言えない自分が憎い。この状況でも、彼氏いますと公言するのは恥ずかしいらしい。
私の様子を見た先輩のお父さんは、やれやれとため息をついた。
「……翔、お前はもう少し節度を持て。見境なしに手を出すからこうなる」
「見境なくはねーよ。高校の頃から気にはなってた。昨日久々に会ったら、なんつーか可愛くなってたんだ」
そうだったんですか!?いや、だからといって先輩のことを改めてどうこう思ったりはしませんけど。
ああ、大原さんの目が怒りとかそういうの通り越して呆れてる。ん?なんで私呆れられてるの?悪いことはしてないですよ!?
「それは男ができたから可愛くなったんだろう。お前のためじゃない」
「でもよ、高校の時に俺のこと好きだったんだろ?それで偶々会ったから脈アリかもって思ったんだよ」
「それなら尚更、なぜ高校の時に捕まえておかなかったんだ」
あの、それ本人の目の前でする話じゃないと思うんですけど……あ、まだ続く感じでしょうか。
そこで突然、私のスマホが鳴った。
……って、昌治さん!?
「噂をすれば、お嬢さんの彼氏か?馬鹿息子のことなど気にせず出なさい」
いや先輩どうこうじゃなくて、この状況で気にしないは無理ですよ。
まあでも、出ないのはおかしいのかな。
なんでよりによってこのタイミングで……
「……はい」
『今、時間いいか?』
「ええと、今ちょっと手が離せなくて……」
「俺は気にしねーぞ、山野」
そこで、ブツッと通話が切れた。
「え……ちょ、しょ……」
手が離せないって言われて切ったにしてはあまりにも早急すぎるよね?というか、切られたときのタイミングを考えたら嫌な予感しかしないんですけど。
変な汗が背中を伝っていく。
大原さんは死に際に天に祈るような顔をしていた。
「気にせず話せばよかっただろ。俺だって敵を知るいい機会だ」
敵って……んん?待って、どうして敵なんですか!
「俺は諦めるつもりねーから。どんなやつか知らねーけど、俺のが絶対いいって思わせる。昨日会えたのは偶然じゃないはずなんだよ」
「まあ、お前がそこまで言うなら俺は止めはしない」
先輩のお父さんがなぜか乗り気に!?そこは止めてくださいっ!
「あの、か……そちらの山野さんの意見も大事だと思うんですが」
本当にその通りです大原さん。
私はうんうんと頷いた。
「それはその通りだ。本人の意思がなければ意味がない」
そうです。意見は大事です。
……いや、でも彼氏いるって言いましたよね。そこでそもそも終わりだと思うんですが。
「じゃあ聞くけど、山野はどういう男がタイプなんだ?」
意見ってそこ!?いきなり好きなタイプを聞かれましても……まあ、意見として言わないのはおかしい気もするから答えるけど……下手に昌治さんっぽいタイプは言わない方がいいのかな?でもそうしたら、どういう人物像?
世間一般の女性の皆さんの男のタイプって……優しいとか?爽やかイケメンお兄さん?一周回ってボディビルダー?渋くでダンディなおじ様系?
いろんな男性像を頭の中でぐるぐるさせて悩む私の視界の端にちらちらと入ってくるのは、大原さんの頭部。
「スキンヘッド……?」
まあだからといってこの状況が良くなることはないですよね!あー、大原さんの目が怖い。
そしてこの男の人は、藤沢造園って書いてあるからたぶんだけど先輩のお父さんだよね……?なんで大原さんと先輩のお父さんが一緒にいるの!?
「親父もいたのか」
先輩はあまり驚いた様子もなく、さらにちらりと大原さんの方を見た。明らかにそっち方向の人ってビジュアルの大原さんを見ても特に不思議に思っていなさそう。造園の職人さんの中にもあれくらい迫力ある人が普通にいるんでしょうか。
「店主にお前が彼女を連れてきたかもとか何とか言われてな。そちらのお嬢さんがそうなのか」
先輩のお父さんは私の方をじっと見る。
これは、ちゃんと否定しておかないとまずい。
「い、いえ。先輩とは、そういうことはないです……」
先輩のお父さんの前で、おたくの息子さんには一切興味がありませんだなんて言えるはずもないので、付き合ってはいませんと伝えてみる。
向かい側にいる大原さんの目が、だんだんと据わってきてるんですけど、もっとちゃんと否定しろということでしょうか。これ後で絶対お小言食うぞ……私、何も悪いことしてないと思うんですけど。
「というか親父、いきなり出てこないでくれよ。山野が驚いてる」
「ああ、悪かった。でもな、彼女はお前の彼女じゃないと言っているが……どういうことだ?」
「まだ違うだけだ。な?山野」
なぜ同意を求めてくるんですか!?言いましたよね、彼氏いるって!
「そうなのか?」
あれ?なにかを期待されている……?そう言えばさっき聞いた会話で、早く本命をとかなんとか言ってた気がする。
「ち、違います!私は、その……」
言っちゃっていいのかなと、私は大原さんの方をちらっと見る。でも、大原さんは微かに首を横に振った。う……話さない方がいいってことですね。わかったけど、どうしよう。下手なこと喋ったら墓穴掘るかもしれないし、でも通すものは通しとかないと。
「彼氏、いるので」
堂々と言えない自分が憎い。この状況でも、彼氏いますと公言するのは恥ずかしいらしい。
私の様子を見た先輩のお父さんは、やれやれとため息をついた。
「……翔、お前はもう少し節度を持て。見境なしに手を出すからこうなる」
「見境なくはねーよ。高校の頃から気にはなってた。昨日久々に会ったら、なんつーか可愛くなってたんだ」
そうだったんですか!?いや、だからといって先輩のことを改めてどうこう思ったりはしませんけど。
ああ、大原さんの目が怒りとかそういうの通り越して呆れてる。ん?なんで私呆れられてるの?悪いことはしてないですよ!?
「それは男ができたから可愛くなったんだろう。お前のためじゃない」
「でもよ、高校の時に俺のこと好きだったんだろ?それで偶々会ったから脈アリかもって思ったんだよ」
「それなら尚更、なぜ高校の時に捕まえておかなかったんだ」
あの、それ本人の目の前でする話じゃないと思うんですけど……あ、まだ続く感じでしょうか。
そこで突然、私のスマホが鳴った。
……って、昌治さん!?
「噂をすれば、お嬢さんの彼氏か?馬鹿息子のことなど気にせず出なさい」
いや先輩どうこうじゃなくて、この状況で気にしないは無理ですよ。
まあでも、出ないのはおかしいのかな。
なんでよりによってこのタイミングで……
「……はい」
『今、時間いいか?』
「ええと、今ちょっと手が離せなくて……」
「俺は気にしねーぞ、山野」
そこで、ブツッと通話が切れた。
「え……ちょ、しょ……」
手が離せないって言われて切ったにしてはあまりにも早急すぎるよね?というか、切られたときのタイミングを考えたら嫌な予感しかしないんですけど。
変な汗が背中を伝っていく。
大原さんは死に際に天に祈るような顔をしていた。
「気にせず話せばよかっただろ。俺だって敵を知るいい機会だ」
敵って……んん?待って、どうして敵なんですか!
「俺は諦めるつもりねーから。どんなやつか知らねーけど、俺のが絶対いいって思わせる。昨日会えたのは偶然じゃないはずなんだよ」
「まあ、お前がそこまで言うなら俺は止めはしない」
先輩のお父さんがなぜか乗り気に!?そこは止めてくださいっ!
「あの、か……そちらの山野さんの意見も大事だと思うんですが」
本当にその通りです大原さん。
私はうんうんと頷いた。
「それはその通りだ。本人の意思がなければ意味がない」
そうです。意見は大事です。
……いや、でも彼氏いるって言いましたよね。そこでそもそも終わりだと思うんですが。
「じゃあ聞くけど、山野はどういう男がタイプなんだ?」
意見ってそこ!?いきなり好きなタイプを聞かれましても……まあ、意見として言わないのはおかしい気もするから答えるけど……下手に昌治さんっぽいタイプは言わない方がいいのかな?でもそうしたら、どういう人物像?
世間一般の女性の皆さんの男のタイプって……優しいとか?爽やかイケメンお兄さん?一周回ってボディビルダー?渋くでダンディなおじ様系?
いろんな男性像を頭の中でぐるぐるさせて悩む私の視界の端にちらちらと入ってくるのは、大原さんの頭部。
「スキンヘッド……?」
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