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3章
13.朝風呂とお酒2
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私が既に裸なので脱衣所はスルーされて、そのままお風呂に連行された。
朝風呂じゃなくてもはや昼風呂だななんて思いつつ、どんなお風呂かなとちょっぴり期待して進行方向を見た私は言葉を失った。
「え……」
部屋のお風呂と聞いててっきり、一般家庭にあるようなお風呂がちょっぴり豪華になった感じだと思っていたんだけど、全然違った。
普通に温泉だ。露天風呂だ。
広々とした庭のようなところに、石造りのゴツゴツした浴槽があった。四角いその浴槽は市民プールの子供向けコーナーくらいの広さがある。
そこに褐色がかった温泉らしいお湯が張られていた。
昌治さんは驚いている私をシャワーの前の木製の椅子に座らせると、お湯の温度を確かめ始めた。
その手にはどこから持ってきたのかスポンジが握られている。
「あの、体くらい自分で洗いますから……というかそのままじゃスーツが濡れちゃいます」
「……じゃあ脱いでくるから待ってろ」
「え……ちょ、昌治さん!いいです自分でやりますから!」
そう言っているのに、昌治さんは脱衣所の方に戻っていってしまう。ぼんやりとその後ろ姿を見送ったけど、このままじゃまずい。
私はすごく頑張ってシャワーヘッドを手に取って、大急ぎで頭を濡らしながら体をざっと流す。スポンジにボディーソープを染み込ませて泡立てて、とりあえず腕を洗っていたところで、昌治さんが戻ってきた。もちろん裸……
「俺がやるって言ったろ」
「いや、だって……」
自分の体って基本的に自分で洗うものでは?そう、だから昌治さんが不機嫌になる必要はどこにもないですよ、ね……?
そう言っておずおずと見上げると、昌治さんはとても大きなため息をついた。
「もっと徹底的にやっとくべきだったな」
「十分です!」
あれ以上なにをどうすれば徹底的になるんですか。いや、昌治さんは余裕そうだから、昌治さん的にはまだいけるの?
無理です私の体がもちません。
「もたなくていい。俺が面倒みてやるから」
「そういう問題じゃないです!手離してください」
「普通に洗うだけだ」
「だから自分でできますって!」
抵抗も虚しく、昌治さんにスポンジを奪われた私は、立ち上がることすらできないから逃げられず、全身をくまなく昌治さんに洗われることになった。
その手付きはとても優しくて、スポンジで擦られるというよりはマッサージされているみたいな感じ。
表情もなんだか普通で、意識している私がおかしいんじゃないかとすら思える。
「ひゃっ!」
前言撤回!今の絶対わざとですよね昌治さん!
脚を洗っていた手が、明らかに余計なことしましたよね!
つい睨んだけど、昌治さんは悪戯っぽく笑っただけだ。
いつの間にか上に移動していた手が、ついでとばかりに優しく胸の先端に触れた。疲れ切ってるはずなのに、身体は大きく震えてじりじりと奥が疼く。
「昌治さん……」
どこが普通に洗うですか。抗議の意味で目線を向けても、昌治さんはどこ吹く風だ。
「……そろそろ流してください」
このまま洗われて反応してしまったら、昌治さんの思う壺な気がしてきた。もうだいたい洗われたので大丈夫じゃないでしょうか。
やってくれないなら自分で流しますとシャワーヘッドに手を伸ばしたら、その手を思いっきり掴まれた。
「仕方ねぇな」
渋々という表情で昌治さんはシャワーヘッドを持って、私の体の泡を流す。なんか、体を隠してたものが流されてく感じがしてこれはこれで恥ずかしい……
でも、これでとりあえずは綺麗になった。せっかくだからあのお風呂にも入りたいなと昌治さんに視線を向ける。
頷いた昌治さんはひょいっと私を抱き上げて、そのまま湯船に浸かった。
……あれ?体勢がおかしくないですか。なぜ私は昌治さんの膝の上に座る形になってるんでしょう。
「昌治さん、ありがとうございます。でも下ろすの忘れてませんか」
「忘れてんのはお前の方だろ。楓、お前は誰のモンだ?」
昌治さんはそう言うなり、私の首筋に口付けた。
甘噛みのようなそれが離れた場所は、熱を持って赤く染まる。
首筋の後は肩、胸……と、昌治さんは印を付けていく。
「……傷跡、気になるか?」
私の右腕を、昌治さんがそっと撫でた。撃たれた傷跡は塞がってはいるものの、赤く突っ張ったようになっている。
「昌治さんの傷に比べれば大したことないですよ」
「何言ってんだ。俺の怪我なんざ見た目が派手で数が多いだけだ」
「でも、私より……」
「あのな……俺が言いたいのは、お前が怪我する方が俺にとっては辛いってことだ。あん時はこうやって、思いっきり抱くことすらできなかったじゃねぇか」
離さないと言わんばかりにぎゅっと強く抱き締められて、昌治さんの熱っぽい呼吸がすぐ近くで聞こえた。後頭部に回された手は、私をその厚い胸板に押し付ける。
昌治さんの体温と匂いを感じて改めて好きだなと思っちゃうあたり、完全に絆されてるなと思った。
「……とりあえず今は何もしねぇから、しばらくこのままでいさせてくれ」
落ち着いた声とは裏腹に、昌治さんの心臓の音が妙に早く聞こえる。それに気付いた私は思わずふふっと笑ってしまった。
「最初から、そう言ってくれればいいのに」
干支一回り分も歳上の人なのに、どうしようもなく愛おしい。この人のこんな姿を知ってるのは私だけなんて、とても幸せだ。
朝風呂じゃなくてもはや昼風呂だななんて思いつつ、どんなお風呂かなとちょっぴり期待して進行方向を見た私は言葉を失った。
「え……」
部屋のお風呂と聞いててっきり、一般家庭にあるようなお風呂がちょっぴり豪華になった感じだと思っていたんだけど、全然違った。
普通に温泉だ。露天風呂だ。
広々とした庭のようなところに、石造りのゴツゴツした浴槽があった。四角いその浴槽は市民プールの子供向けコーナーくらいの広さがある。
そこに褐色がかった温泉らしいお湯が張られていた。
昌治さんは驚いている私をシャワーの前の木製の椅子に座らせると、お湯の温度を確かめ始めた。
その手にはどこから持ってきたのかスポンジが握られている。
「あの、体くらい自分で洗いますから……というかそのままじゃスーツが濡れちゃいます」
「……じゃあ脱いでくるから待ってろ」
「え……ちょ、昌治さん!いいです自分でやりますから!」
そう言っているのに、昌治さんは脱衣所の方に戻っていってしまう。ぼんやりとその後ろ姿を見送ったけど、このままじゃまずい。
私はすごく頑張ってシャワーヘッドを手に取って、大急ぎで頭を濡らしながら体をざっと流す。スポンジにボディーソープを染み込ませて泡立てて、とりあえず腕を洗っていたところで、昌治さんが戻ってきた。もちろん裸……
「俺がやるって言ったろ」
「いや、だって……」
自分の体って基本的に自分で洗うものでは?そう、だから昌治さんが不機嫌になる必要はどこにもないですよ、ね……?
そう言っておずおずと見上げると、昌治さんはとても大きなため息をついた。
「もっと徹底的にやっとくべきだったな」
「十分です!」
あれ以上なにをどうすれば徹底的になるんですか。いや、昌治さんは余裕そうだから、昌治さん的にはまだいけるの?
無理です私の体がもちません。
「もたなくていい。俺が面倒みてやるから」
「そういう問題じゃないです!手離してください」
「普通に洗うだけだ」
「だから自分でできますって!」
抵抗も虚しく、昌治さんにスポンジを奪われた私は、立ち上がることすらできないから逃げられず、全身をくまなく昌治さんに洗われることになった。
その手付きはとても優しくて、スポンジで擦られるというよりはマッサージされているみたいな感じ。
表情もなんだか普通で、意識している私がおかしいんじゃないかとすら思える。
「ひゃっ!」
前言撤回!今の絶対わざとですよね昌治さん!
脚を洗っていた手が、明らかに余計なことしましたよね!
つい睨んだけど、昌治さんは悪戯っぽく笑っただけだ。
いつの間にか上に移動していた手が、ついでとばかりに優しく胸の先端に触れた。疲れ切ってるはずなのに、身体は大きく震えてじりじりと奥が疼く。
「昌治さん……」
どこが普通に洗うですか。抗議の意味で目線を向けても、昌治さんはどこ吹く風だ。
「……そろそろ流してください」
このまま洗われて反応してしまったら、昌治さんの思う壺な気がしてきた。もうだいたい洗われたので大丈夫じゃないでしょうか。
やってくれないなら自分で流しますとシャワーヘッドに手を伸ばしたら、その手を思いっきり掴まれた。
「仕方ねぇな」
渋々という表情で昌治さんはシャワーヘッドを持って、私の体の泡を流す。なんか、体を隠してたものが流されてく感じがしてこれはこれで恥ずかしい……
でも、これでとりあえずは綺麗になった。せっかくだからあのお風呂にも入りたいなと昌治さんに視線を向ける。
頷いた昌治さんはひょいっと私を抱き上げて、そのまま湯船に浸かった。
……あれ?体勢がおかしくないですか。なぜ私は昌治さんの膝の上に座る形になってるんでしょう。
「昌治さん、ありがとうございます。でも下ろすの忘れてませんか」
「忘れてんのはお前の方だろ。楓、お前は誰のモンだ?」
昌治さんはそう言うなり、私の首筋に口付けた。
甘噛みのようなそれが離れた場所は、熱を持って赤く染まる。
首筋の後は肩、胸……と、昌治さんは印を付けていく。
「……傷跡、気になるか?」
私の右腕を、昌治さんがそっと撫でた。撃たれた傷跡は塞がってはいるものの、赤く突っ張ったようになっている。
「昌治さんの傷に比べれば大したことないですよ」
「何言ってんだ。俺の怪我なんざ見た目が派手で数が多いだけだ」
「でも、私より……」
「あのな……俺が言いたいのは、お前が怪我する方が俺にとっては辛いってことだ。あん時はこうやって、思いっきり抱くことすらできなかったじゃねぇか」
離さないと言わんばかりにぎゅっと強く抱き締められて、昌治さんの熱っぽい呼吸がすぐ近くで聞こえた。後頭部に回された手は、私をその厚い胸板に押し付ける。
昌治さんの体温と匂いを感じて改めて好きだなと思っちゃうあたり、完全に絆されてるなと思った。
「……とりあえず今は何もしねぇから、しばらくこのままでいさせてくれ」
落ち着いた声とは裏腹に、昌治さんの心臓の音が妙に早く聞こえる。それに気付いた私は思わずふふっと笑ってしまった。
「最初から、そう言ってくれればいいのに」
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