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3章
12.朝風呂とお酒
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目は覚めたのに、金縛りにでもあったように重くて、動かそうにも筋肉痛らしき痛みが全身を支配していた。
唯一動かすことのできる瞼を気合いで開けて、天井を見上げる。すっかり明るくなっていて、窓からは青空が覗いていた。
……昌治さん、これまで全然本気じゃなかったんだな。
これまで何度かしたことはあったけど、ここまで動けなくなったことはなかった。
昨日の夜、寝るなよと言われたけど、途中何度か意識失ったと思う。でもあれは気絶であって、断じて寝てないから許してほしい。
目を覚ましたら決まって優しくしてくれるから絆されて、また意識を飛ばされて。思い返したら結構……かなり激しくされてたのに、怒るどころか背筋がゾクゾクして惚けそうになる。
私って、もしかしなくても変態なんだろうか。いや、違う。元はと言えば全部昌治さんがしたことだし……
「やっと起きたか、楓」
「ひゃっ!」
変態なのは昌治さんの方だよねと心の中で呟いた瞬間に声をかけられて、私は思わず飛び上がりそうになった。変に動いてしまいそうになったせいで、全身が痛くて呻いてしまう。
その声があんまりにも枯れていて、自分の声なのにびっくりした。
昌治さんはとっくに起きていたらしく、スーツに着替えて私を見下ろしていた。
「とりあえず、水でも飲むか?」
昌治さんは私の背中に腕を回して、ゆっくりと上半身を抱き起こしてくれた。そのまま私の腰の辺りを抱いて引き寄せられ、私は昌治さんにもたれかかるような格好になる。
昌治さんは水の入ったペットボトルを手にしていた。ストローか何かで飲ませてくれるのかな、と思ったけど、そんなわけなかった。
おもむろにその水を口に含んだ昌治さんは、私に口付けてそれを私の口内に流し込む。
喉が渇いていたことは確かなので、私はその水を飲み込んだ。隙間から溢れた水が顎を伝って落ちていく。
それを何度か繰り返し、冷たい水が喉を通り抜けるたびに、少しずつ楽になっていく気がした。
ペットボトルの水が半分ほどに減ったところでそれは終わって、昌治さんが薄く微笑んだ。
「そんな美味そうに飲まれたら、これからずっとこうやって飲ませたくなるな」
「す、ストローとかでいいじゃないですか」
「そうか?俺は断然こっちの方がいいと思うが」
あんまりにも喉が渇いてたから今回は飲んだだけで、普段だったら多少どころかかなり躊躇いますからね!?
昌治さんはニヤリと笑う。私の反応を伺うようなそれに、改めてさっきの行為が結構恥ずかしいものだったと認識させられた。
「へ、変態……」
「何とでも言え。お前に関して言えば、俺はかなりの変態だ」
よく恥ずかしげもなくそんなこと言えますね。
そしてさっきから、私の腰を支えている手の動きが怪しいんですけど。もう既に散々したじゃないですか。
「色々吹っ切れた。もうお前は俺ので、俺はお前だけのモンだ……愛してる、楓」
「……っ、わ、私も」
色々言いたいことがあったのに、突然耳元で囁かれた甘いそれに、全て流されてしまう。
昌治さんは私の返事に対して、これまでの強気な感じは何処へやら、ふいと目を逸らす代わりに私の体を強く抱き締めた。
緩やかに時間が過ぎていくようだった。でも、私も抱き返そうかと思ったところで、はたと気づいた。
「あの、スーツ……」
汗やらその他液体やらで私の肌はベタベタしていた。はっきりいって私は汚れている。高級そうなシャツに対し申し訳ない。
「いいんだよ。俺がしたくてやってんだ」
まあ、昌治さんがいいのならいいけど、と思いつつ私は窓の外を見た。
すっかり明るいなと思っていたけど、当たり前だった。太陽がちょうど窓の正面くらいにある。
「そういえば、今何時ですか……?」
「ちょうど11時くらいだな」
「え、それって、チェックアウトとか大丈夫なんですか?」
ホテルとか旅館のチェックアウトって10時くらいだったと思うんだけど、昌治さん着替えてるし、私も服とか着た方がいいの?というか服着てないってそもそもおかしくない?
「心配するな。もう一泊増やした」
そんなあっさりとできるものなんですか。予約とか大丈夫だったのかなと思ったけど、有り難いから何も言わなかった。正直、今日はもう動きたくない。
「とりあえず、風呂行くか?入れてやる」
「だ、大丈夫です!自分で動けるようになったら……」
「日が暮れるぞ」
「じゃ、じゃあ今から自分で起きますから……っ」
起き上がろうとする腕はプルプル震えて、脚も言うことをきかない。
そのまま再び倒れた私を見た昌治さんは、堪え切れないとばかりに笑った。
「笑わないでください。誰のせいだと……」
「ああそうだ。俺のせいだな。俺のせいでお前がこんなになってるんだよな」
嬉しそうに言わないでください!
もう一回自力でなんとかしてみようと腕に力を込めたけど、震えるばかりで動かない。
「無理だろ。立てなくしたの俺なんだから、大人しく世話されとけ」
そう言って昌治さんは私をひょいと抱き上げて、足早に部屋のお風呂の方に向かって歩き出した。
唯一動かすことのできる瞼を気合いで開けて、天井を見上げる。すっかり明るくなっていて、窓からは青空が覗いていた。
……昌治さん、これまで全然本気じゃなかったんだな。
これまで何度かしたことはあったけど、ここまで動けなくなったことはなかった。
昨日の夜、寝るなよと言われたけど、途中何度か意識失ったと思う。でもあれは気絶であって、断じて寝てないから許してほしい。
目を覚ましたら決まって優しくしてくれるから絆されて、また意識を飛ばされて。思い返したら結構……かなり激しくされてたのに、怒るどころか背筋がゾクゾクして惚けそうになる。
私って、もしかしなくても変態なんだろうか。いや、違う。元はと言えば全部昌治さんがしたことだし……
「やっと起きたか、楓」
「ひゃっ!」
変態なのは昌治さんの方だよねと心の中で呟いた瞬間に声をかけられて、私は思わず飛び上がりそうになった。変に動いてしまいそうになったせいで、全身が痛くて呻いてしまう。
その声があんまりにも枯れていて、自分の声なのにびっくりした。
昌治さんはとっくに起きていたらしく、スーツに着替えて私を見下ろしていた。
「とりあえず、水でも飲むか?」
昌治さんは私の背中に腕を回して、ゆっくりと上半身を抱き起こしてくれた。そのまま私の腰の辺りを抱いて引き寄せられ、私は昌治さんにもたれかかるような格好になる。
昌治さんは水の入ったペットボトルを手にしていた。ストローか何かで飲ませてくれるのかな、と思ったけど、そんなわけなかった。
おもむろにその水を口に含んだ昌治さんは、私に口付けてそれを私の口内に流し込む。
喉が渇いていたことは確かなので、私はその水を飲み込んだ。隙間から溢れた水が顎を伝って落ちていく。
それを何度か繰り返し、冷たい水が喉を通り抜けるたびに、少しずつ楽になっていく気がした。
ペットボトルの水が半分ほどに減ったところでそれは終わって、昌治さんが薄く微笑んだ。
「そんな美味そうに飲まれたら、これからずっとこうやって飲ませたくなるな」
「す、ストローとかでいいじゃないですか」
「そうか?俺は断然こっちの方がいいと思うが」
あんまりにも喉が渇いてたから今回は飲んだだけで、普段だったら多少どころかかなり躊躇いますからね!?
昌治さんはニヤリと笑う。私の反応を伺うようなそれに、改めてさっきの行為が結構恥ずかしいものだったと認識させられた。
「へ、変態……」
「何とでも言え。お前に関して言えば、俺はかなりの変態だ」
よく恥ずかしげもなくそんなこと言えますね。
そしてさっきから、私の腰を支えている手の動きが怪しいんですけど。もう既に散々したじゃないですか。
「色々吹っ切れた。もうお前は俺ので、俺はお前だけのモンだ……愛してる、楓」
「……っ、わ、私も」
色々言いたいことがあったのに、突然耳元で囁かれた甘いそれに、全て流されてしまう。
昌治さんは私の返事に対して、これまでの強気な感じは何処へやら、ふいと目を逸らす代わりに私の体を強く抱き締めた。
緩やかに時間が過ぎていくようだった。でも、私も抱き返そうかと思ったところで、はたと気づいた。
「あの、スーツ……」
汗やらその他液体やらで私の肌はベタベタしていた。はっきりいって私は汚れている。高級そうなシャツに対し申し訳ない。
「いいんだよ。俺がしたくてやってんだ」
まあ、昌治さんがいいのならいいけど、と思いつつ私は窓の外を見た。
すっかり明るいなと思っていたけど、当たり前だった。太陽がちょうど窓の正面くらいにある。
「そういえば、今何時ですか……?」
「ちょうど11時くらいだな」
「え、それって、チェックアウトとか大丈夫なんですか?」
ホテルとか旅館のチェックアウトって10時くらいだったと思うんだけど、昌治さん着替えてるし、私も服とか着た方がいいの?というか服着てないってそもそもおかしくない?
「心配するな。もう一泊増やした」
そんなあっさりとできるものなんですか。予約とか大丈夫だったのかなと思ったけど、有り難いから何も言わなかった。正直、今日はもう動きたくない。
「とりあえず、風呂行くか?入れてやる」
「だ、大丈夫です!自分で動けるようになったら……」
「日が暮れるぞ」
「じゃ、じゃあ今から自分で起きますから……っ」
起き上がろうとする腕はプルプル震えて、脚も言うことをきかない。
そのまま再び倒れた私を見た昌治さんは、堪え切れないとばかりに笑った。
「笑わないでください。誰のせいだと……」
「ああそうだ。俺のせいだな。俺のせいでお前がこんなになってるんだよな」
嬉しそうに言わないでください!
もう一回自力でなんとかしてみようと腕に力を込めたけど、震えるばかりで動かない。
「無理だろ。立てなくしたの俺なんだから、大人しく世話されとけ」
そう言って昌治さんは私をひょいと抱き上げて、足早に部屋のお風呂の方に向かって歩き出した。
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