お客様はヤのつくご職業

古亜

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1章

41.#ヤクザさんのお屋敷5

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それから後のことは、覚えている。嫌というくらい。
明かりの消えた暗い闇の中で、私はもう疲れ切ってぐずぐずになっていたのに、昌治さんはなぜかとても元気で、何度も私の中で達していた。

「も、だめ……しょ、じさん……」

酷使されまくった喉は枯れていた。掠れた声で私は抵抗しながらも、体は貪欲に刺激を求めて昌治さんのものを呑み込んでいる。
動きは前よりは激しくなくなったけど、優しく撫でるようにされるのは逆にぞわぞわするといいますか……
窓からちょうど月が顔を出して、畳に明るい影を落としていた。

「……楓」

名前を呼ぶ昌治さんの荒い息遣いが、すぐ近くから聞こえてくる。
後ろからきつく抱き締めていた腕が緩んで、私は壊れ物みたいに昌治さんに包まれた。
昌治さんはそのままじっと動かない。

「好きだ」

唐突に、そう囁かれる。
これだけ淫らなことをされて、自分からも求めたりしたのに、なぜかそれが一番恥ずかしいと同時に嬉しくて、全身の細胞が赤くなってるんじゃないかな、ってくらい熱くなった。

「……どうして、私なんですか」

私だって、昌治さんのことが好きだ。これまでのことが全部私のためだったって気付いて、その思いが嬉しくて、そんな不器用なところを好きになった。
昌治さんは、いったいどうして、私を……

「どうしてだろうな」

俺にもわからない、と昌治さんは言った。

「初めて会った日、出てった俺に向かってお前、礼言ったろ?」

それは、昌治さんに命助けてもらいましたから。お礼言うのは当然だと思って。まあ、あの時は正直強盗より昌治さんの方が怖かったけど。

「あんな風に礼を言われたの、初めてだった。礼なんざいつでもされるが……あれは、とにかく新鮮だった」

私を抱く昌治さんの腕に、僅かに力がこもる。

「裏表とか下心みたいな、そういうもんのない礼が、純粋に嬉しかったんだ」

強盗に大いにビビってた私に、まさかお礼を言われるなんて思ってもいなかったらしい。

「事務所戻ってからもその感じが忘れられなかった。自分でもわけがわからなくてな、次の日に会ってみれば何かわかるんじゃないかと思った」
「いやあの日、いきなり車に乗せられて、めちゃくちゃ怖かったんですよ」

思わず言ってしまった。だって、会えばわかるどころかあれ誘拐みたいなもんでしたよ……

「怯えさせるつもりはなかったんだが、あのとき楓を見たら、すぐにでも俺のものにしたくなった」

だからあんな拉致まがいな感じになった、と。

「理性保つのがあんなに難しいとはな……」

え、まさか私、あの時点でけっこうまずい状況だったということですか。そういえば、膝枕っぽい状態にされてたような、そうじゃなかったような……

「あとはお前が迫田を庇った時だな。明らかに俺にビビって震えてんのに、必死になってるのがたまらなく愛おしかった。さすがにカタギの嬢ちゃんを無理矢理っうのはまずいのはわかってたからやめたが」
「あ、ありがとうございました?」

そのときの昌治さんの理性に一応、お礼をしておこう。っていうか昌治さん、さっきからさらっと恥ずかしいこと言ってませんか。
昌治さんはフッと笑った。

「まあ、さっきまでは何の役にも立っていなかったがな」

そう言って突然、昌治さんは腰を揺する。

「ひゃっ!」

思い出したように体がビクッと跳ねて、嬌声が漏れる。

「可愛いな、楓」
「ちょっ……もう終わり……っ!」

再び始まった律動。先程までの緩やかな時間はそのための休憩だったと言わんばかりに、激しく胸と秘部を愛撫される。

「も、むりっ!ねぇ、しょ……んんっ!」

月明かりで薄明るくなってきていて、たぶん私の顔が昌治さんには見えている。そう思ったら余計に……

「手をどけろ。楓の可愛い顔が見えない」
「だめですって」

変な声をあげてるところ、見られたくないんです。

「仕方ねぇな」

昌治さんは短くため息をついた。
諦めてくれるのかな……そう思ってたけど、違った。
それまで胸を弄っていた手で私の手首を掴んで、無理矢理下ろさせる。そしてその先は……

「んんっ!」

私と昌治さんが繋がっている部分。
指先でちょっと触っただけなのに、そこが帯びる湿り気と熱で、指が溶けそうだ。
さすがにこれ以上は無理だと涙目で後ろの昌治さんを見たら、微笑んでいた。その目は熱を孕んでいる。

「わかりました!わかりましたって!」

私はそこでなんとか昌治さんの手を振りほどいた。自分の指先だけど、直視できないからどうにもならない。

「楓もわかってくれたなら、そろそろ寝るか」

そう言って昌治さんは再び私を後ろから抱きしめた。
うう、私は寝れる精神状態じゃないんですけど……
でもまあ、とりあえず終わりってことでいいのかな。

「じゃあ昌治さん……」

もう抜いてください、と言ったら、返事がない。代わりに規則的な寝息が聞こえてきた。
……え、このまま寝るの!?
その、入ったまま、なんですがっ!?
せめて抜こうと身をよじるけど、ぎゅっと抱き締められていて動けない。実は起きてません?ねえ!
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