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1章
24.後悔は先に立たない2
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「美香ぁ……明日というか、もはや今日なんだけど、時間ある?」
昨日の夜、日付が変わって一時間後くらいに美香に電話をかけた。一人で悶々としていてもらちがあかない。というか、支離滅裂であっても、誰かに聞いて欲しかった。
深夜のアイドル番組鑑賞中だった美香は、最初は不思議そうにしてたけど、夕方からなら時間があると言ってくれた。
「……んで?深夜に電話かけてきてまで相談って、なに?」
待ち合わせのカフェにやってきた美香は、バイト帰りらしく少し疲れた感じだった。
「いや、ほんとごめん。でもまあ、美香なら起きてるよなぁ、って」
「まあ、その通りだけど。電話のテンションおかしかったし、なんなら今も変。なんかあった?」
昨晩は悶々としたまま、結局寝たのは若干空が明るくなってた頃。そして起きたのは昼。起きてからも、せっかくの休みなのに洗濯も掃除も途中でフリーズしてほぼ手付かずのまま。
考えまいとする時点で考えてしまっていて、結局ずっと頭に昌治さんがいた。
「前話したよね。コンビニの」
「まさか、前に言ってた肉まんの君?え、何かあったの?」
肉まんの君って、どういう認識してたの?普段なら突っ込むけど、今それどころじゃないや。
「なんかあの後色々あって」
「付き合うことになった?」
疲れの飛んだ生き生きとした顔で、美香は少し身を乗り出す。いやいや、勝手に決めないで!
私は首をブンブン振って否定する。あれ?昨日もこんなことしてたな。
「なってないなってない!むしろ、断ったというか、一方的に……」
「やっぱり私の言った通りだったじゃん!でも、え?フったの!?」
私は頷いた。
思い返せば昨日、昌治さんの口からは特に何も言われていない。そう、私、一方的にフってしまったのである。
そして同時に、心配して駆けつけてきたらしい昌治さんに、なんか、抱き締められて、え、っと……
「顔真っ赤じゃん。色々あったって、ほんとどうしたの?まさか抱き締められたとか?」
ジャストミート!?なんでわかるの?
さらに顔を赤くしたであろう私を見て、美香は目を見開く。
「うっそ、冗談で言ったんだけど。まさか、いきなりで嫌で、勢いでフったとか?それならまあ、わかるけど」
「いや、ちょっと苦しかったけど、そういうわけじゃなくて、なんて言うんだろ……」
ヤクザさんのいざこざに巻き込まれて、ちなみに肉まんの君はとある組の若頭です。なんて言えるはずもなく。
悶々とする私を見ながらココアを啜った美香は、やれやれと言わんばかりにため息をついた。
「楓はさ、肉まんの君のことどう思ってるの?その人のこと嫌でフったならさ、私に相談したりしないでしょ?」
そう。その通り。肉まんの君という名称はどうかと思うけど、その通り。
昌治さんのことをどう思っているのか。どう思えばいいのか。フっておいて今さら何を思えばいいのか、わからなくて困っていたんだ。言われて、すごい納得した。
一人で悩んでたら、自分が何に悩んでいるのかも絶対わからなかっただろう。
「嫌いじゃない、よ。むしろ感謝してるというか、たまに怖いけど、何かされるわけじゃないし……」
でも、嫌いじゃないから好き、っていうのは違うと思う。昌治さんの気持ちは嬉しかったけど、戸惑いの方が大きくて、よくわからない。
「もう一回会う機会とかはないの?何かわかるかもよ?」
「……前にも言ったけど、変わった人というか、住む世界の違う人だから。それに、気まずい」
「それまさか……やっぱいいや」
美香は何かを言いかけて、やめた。
「会っても変わらないと」
その問いに、私は頷いた。
一方的にフっておいて呼び出すってどうなんだろう?
それに、自分でわかってる。昌治さんは住む世界が違って、うっかりでも好きになったりしちゃダメな人だって。会ったからといって、これは変わらない。
あれ?好きになったりしちゃダメって思う時点で私……いやいや、まだまだそんな、きっとない!
「……これはもう、探すしかないね」
私の様子を見ていた美香は、いつになく真剣な表情で言う。
「探す?何を?」
「新しい出会い」
いやいや、なにそれ。
新しい出会いなんてそうそうあるものじゃないよ。昌治さんとの出会い、なかなかに衝撃だったからなぁ。あれを上回るのはないと思う。
「ルオ君とかおススメだよ?」
……ん?
「いや、それ美香の推しメンでしょ」
しれっと沼に引き込もうとしないで。それにその人、画面越し以外で出会えるのか?
「ほんとカッコかわいいから。その肉まんの君のこと一瞬で忘れるって!」
本当に美香はアイドル顔なイケメンが好きだなぁ……私の異性の知り合い、この数週間で強面ばっかりになってしまったよ。真逆すぎる。
そうして美香は推しの話になりヒートアップ。
正直、アイドルとかにハマる予感はしない。
でも……
「新しい出会いかぁ……」
くよくよ悩んで引きずっても仕方ない。昌治さんには申し訳ないけど、私ごとき小娘のこと、そのうち忘れるよね?きっと綺麗な強いお姉さんとか、ヤクザさんの世界の方が、昌治さんに合う人がいると思う。
うん。そんなにすぐ新しい出会いがあるとは思えないけど、とりあえずいつも通り、過ごせばいいかな?
昨日の夜、日付が変わって一時間後くらいに美香に電話をかけた。一人で悶々としていてもらちがあかない。というか、支離滅裂であっても、誰かに聞いて欲しかった。
深夜のアイドル番組鑑賞中だった美香は、最初は不思議そうにしてたけど、夕方からなら時間があると言ってくれた。
「……んで?深夜に電話かけてきてまで相談って、なに?」
待ち合わせのカフェにやってきた美香は、バイト帰りらしく少し疲れた感じだった。
「いや、ほんとごめん。でもまあ、美香なら起きてるよなぁ、って」
「まあ、その通りだけど。電話のテンションおかしかったし、なんなら今も変。なんかあった?」
昨晩は悶々としたまま、結局寝たのは若干空が明るくなってた頃。そして起きたのは昼。起きてからも、せっかくの休みなのに洗濯も掃除も途中でフリーズしてほぼ手付かずのまま。
考えまいとする時点で考えてしまっていて、結局ずっと頭に昌治さんがいた。
「前話したよね。コンビニの」
「まさか、前に言ってた肉まんの君?え、何かあったの?」
肉まんの君って、どういう認識してたの?普段なら突っ込むけど、今それどころじゃないや。
「なんかあの後色々あって」
「付き合うことになった?」
疲れの飛んだ生き生きとした顔で、美香は少し身を乗り出す。いやいや、勝手に決めないで!
私は首をブンブン振って否定する。あれ?昨日もこんなことしてたな。
「なってないなってない!むしろ、断ったというか、一方的に……」
「やっぱり私の言った通りだったじゃん!でも、え?フったの!?」
私は頷いた。
思い返せば昨日、昌治さんの口からは特に何も言われていない。そう、私、一方的にフってしまったのである。
そして同時に、心配して駆けつけてきたらしい昌治さんに、なんか、抱き締められて、え、っと……
「顔真っ赤じゃん。色々あったって、ほんとどうしたの?まさか抱き締められたとか?」
ジャストミート!?なんでわかるの?
さらに顔を赤くしたであろう私を見て、美香は目を見開く。
「うっそ、冗談で言ったんだけど。まさか、いきなりで嫌で、勢いでフったとか?それならまあ、わかるけど」
「いや、ちょっと苦しかったけど、そういうわけじゃなくて、なんて言うんだろ……」
ヤクザさんのいざこざに巻き込まれて、ちなみに肉まんの君はとある組の若頭です。なんて言えるはずもなく。
悶々とする私を見ながらココアを啜った美香は、やれやれと言わんばかりにため息をついた。
「楓はさ、肉まんの君のことどう思ってるの?その人のこと嫌でフったならさ、私に相談したりしないでしょ?」
そう。その通り。肉まんの君という名称はどうかと思うけど、その通り。
昌治さんのことをどう思っているのか。どう思えばいいのか。フっておいて今さら何を思えばいいのか、わからなくて困っていたんだ。言われて、すごい納得した。
一人で悩んでたら、自分が何に悩んでいるのかも絶対わからなかっただろう。
「嫌いじゃない、よ。むしろ感謝してるというか、たまに怖いけど、何かされるわけじゃないし……」
でも、嫌いじゃないから好き、っていうのは違うと思う。昌治さんの気持ちは嬉しかったけど、戸惑いの方が大きくて、よくわからない。
「もう一回会う機会とかはないの?何かわかるかもよ?」
「……前にも言ったけど、変わった人というか、住む世界の違う人だから。それに、気まずい」
「それまさか……やっぱいいや」
美香は何かを言いかけて、やめた。
「会っても変わらないと」
その問いに、私は頷いた。
一方的にフっておいて呼び出すってどうなんだろう?
それに、自分でわかってる。昌治さんは住む世界が違って、うっかりでも好きになったりしちゃダメな人だって。会ったからといって、これは変わらない。
あれ?好きになったりしちゃダメって思う時点で私……いやいや、まだまだそんな、きっとない!
「……これはもう、探すしかないね」
私の様子を見ていた美香は、いつになく真剣な表情で言う。
「探す?何を?」
「新しい出会い」
いやいや、なにそれ。
新しい出会いなんてそうそうあるものじゃないよ。昌治さんとの出会い、なかなかに衝撃だったからなぁ。あれを上回るのはないと思う。
「ルオ君とかおススメだよ?」
……ん?
「いや、それ美香の推しメンでしょ」
しれっと沼に引き込もうとしないで。それにその人、画面越し以外で出会えるのか?
「ほんとカッコかわいいから。その肉まんの君のこと一瞬で忘れるって!」
本当に美香はアイドル顔なイケメンが好きだなぁ……私の異性の知り合い、この数週間で強面ばっかりになってしまったよ。真逆すぎる。
そうして美香は推しの話になりヒートアップ。
正直、アイドルとかにハマる予感はしない。
でも……
「新しい出会いかぁ……」
くよくよ悩んで引きずっても仕方ない。昌治さんには申し訳ないけど、私ごとき小娘のこと、そのうち忘れるよね?きっと綺麗な強いお姉さんとか、ヤクザさんの世界の方が、昌治さんに合う人がいると思う。
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