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プロローグ
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「言い残したいことがあるなら聞いてやるよ」
俺は縫い付けられたように動かない男に拳銃を突き付ける。周辺には血溜まりと折り重なった死体。そして遠巻きに俺を見ている黒服の男たちは無言で僅かに息のある死体になり切れなかったやつらを処理していた。
「まさか、テメェみたいなガキにやられるとはな」
「……死ね」
引き金に力を込める。
火薬が爆ぜる音と共に、男の額に赤い孔が空いた。
生暖かい返り血が服を濡らす。
見開かれた男の目に自分の顔が映り、うんざりした俺は目を逸らす。
ガキ、か。
部屋の奥にあった姿見も俺の姿を映していた。
壁に背を預け絶命した男と変わらない頭の高さ。まだどこか丸みを帯びた柔らかい曲線を描く腕。第二成長期を迎えていない、子供の体。
再び手の中の拳銃が爆ぜる。自分の姿に蜘蛛の巣状のヒビが入り、次の瞬間砕け散った。
「用は済んだ。引き上げるぞ」
「ウス!」
月葉会に対する裏切りの代償は重い。この事務所の上は、それを思い知っただろう。
「若、明日は学校でしょう。早くお休みになってください」
「……そうだな」
いい運動もした。あとは帰って夕飯食って、風呂上がりにあいつに牛乳でも用意させる。
子供扱いはうんざりだ。
黒い外車に乗り込んだ少年は月森蒼矢。
裏社会を牛耳る一大組織、月葉会現会長の孫にして月葉会の鉄砲玉。
低い身長、そして異性との付き合いに悩む、お年頃の小学5年生である。
俺は縫い付けられたように動かない男に拳銃を突き付ける。周辺には血溜まりと折り重なった死体。そして遠巻きに俺を見ている黒服の男たちは無言で僅かに息のある死体になり切れなかったやつらを処理していた。
「まさか、テメェみたいなガキにやられるとはな」
「……死ね」
引き金に力を込める。
火薬が爆ぜる音と共に、男の額に赤い孔が空いた。
生暖かい返り血が服を濡らす。
見開かれた男の目に自分の顔が映り、うんざりした俺は目を逸らす。
ガキ、か。
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再び手の中の拳銃が爆ぜる。自分の姿に蜘蛛の巣状のヒビが入り、次の瞬間砕け散った。
「用は済んだ。引き上げるぞ」
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「若、明日は学校でしょう。早くお休みになってください」
「……そうだな」
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子供扱いはうんざりだ。
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