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冷蔵庫が鳴いている3
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「冷蔵庫の容量もわかってないやつの世話は御免だ」
「あ、あれは張り切りすぎただけです!」
仕事を頑張って終わらせて疲れていたけど、明日から土日だから大丈夫というテンションにより買いすぎた。反省したのでもうしません。
「それにしてもこのブリすごく美味しいです!」
「話を逸らすな」
「うう、以後気をつけます……」
バレてたか。むしろバレない方がおかしいか。
「美味しいのはほんとですよ。ブリの照り焼きなんてお正月以来です。でもこんな柔らかくなかったというか、美味しいです」
自分の語彙力の無さを呪う。なんて言うんだろう、脂が違うのかな?変な臭みとかもないし……
「焼く前に塩振って少し置いて湯通しすると臭みが減る。あとは水気を拭いて小麦粉を薄くつけてから焼いて、焦げ目を付けてからタレを絡めていく」
ほぉ……細かい。私だったら何も考えずにそのまま焼いてる。で、途中まで作っておいて、私が戻ってくるまで蓋をして最後に一気に仕上げた、と。
「今はネットで調べれば大抵のものの作り方はわかる。手順が多いほど美味いとは言わねぇが、手間を惜しまずその通りにやれば誰にでもできる」
確かにフライパンが炎を上げたりするみたいな、そんなに高度なことはしていない。切ったりもないし、私でもできるのかも?
「ところで嬢ちゃん、あの野菜どうすんだ?」
「そうですね……しばらくサラダにでもしてボリボリと食べるしか……」
私の冷蔵庫だけじゃなくて、吉崎さんの冷蔵庫も侵略してしまってるし、できるだけたくさん消費しなきゃなぁ。とりあえずレンチンするとかさが減るし、それで頑張ろうかな。ああそうだ、当初の予定の野菜炒めと鍋。
「……その計画性のなさでよくあれだけ買ったな」
「使い切れるという妙な自信があの時はありまして。吉崎さんの冷蔵庫の子を先に消費します!明日は休みなので朝昼晩と頑張ればできるはずです!」
「その根拠のない自信はどこから湧いてくるんだ」
吉崎さんはもはや呆れを通り越したのか、口元を押さえて笑い始めた。
ムッとしたけど、確かに吉崎さんの言う通りではあるので何も言い返せない。
かぼちゃの煮付けを食べながらジトッとした目で見るのが精一杯である。それも美味しい煮付けのせいで長くは持たなかった。
「食べるか睨むかどっちかにしろよ」
笑いを堪えているのか、むしろニヤニヤ笑っているように見えてしまう。冷蔵庫に入りきらない野菜を……美味しい。えっさほいさと運んできた私はさぞかし……美味しい。滑稽でしょうね。美味しい
何この煮付け。ほっくほく。甘くて美味しい。
ついに吉崎さんは堪えるのを諦めて爆笑し始めた。
「おま……嬢ちゃん、ぶはっ!」
吉崎さんは箸を置き、机に手をついて声が大きくならないよう必至に堪えている。
今、小声で何だこの生き物って言いましたね?れっきとした人間ですよ。え?顔が安定してない?失礼な。
気にせず味噌汁を啜りながら吉崎さんが落ち着くのを待つことにした。
そうして吉崎さんが笑うのをやめたのは、ほとんど私が食べ終わった時だった。それでも若干肩が震えている。
「笑いすぎです」
「いや、これはしばらく思い出すたびに笑う」
「……よかったですね」
ヤクザさんの笑いのツボがわからない。まあ爆笑するヤクザさんなんて珍しいものを見れたのでいいです、と思うことにした。
ヤクザさんの組長ってもっとこう、笑わないというか、冷徹で気難しいものじゃ……なんて考えながら私は冷蔵庫に入りきらなかったパイナップルを2人前にわけて、こたつに置いた。
「吉崎さんもよろしければどうぞ」
「ああ、ありがとな。にしても、本当にどうするんだあの野菜」
「頑張って消費します」
「頑張るっても限界があるだろ」
その通りだけど、多少残ったところですぐ腐ったりはしないでしょ。とりあえず明日はサラダ生活。ネットで調べて野菜炒めとか……
「見てられねぇ。手伝ってやるよ」
「え、それは……あの野菜さんたちを美味しく料理してくださるってことですか!?」
買ってきた甲斐があったかもしれない。美味しく調理された方がお野菜も幸せですよね!
「おい、勘違いするな。作業するのは嬢ちゃんだ。これを機に覚えろ」
「でも私、お嫁に行く予定ないのですが……」
「予定がないんじゃなくてできないだろ、このままだと永遠に」
「できる旦那様を探します!」
「……嬢ちゃん、訂正する。嬢ちゃんは嫁にはなれねぇ」
断言された。
「まあ綺麗に作れなんて要求しねぇから、やるだけやってみろ。無理そうだったら手伝う」
「でも私、本当に下手なんですよ。高校の時お母さんを手伝おうとしてじゃがいもが無残な姿になって以来、台所を手伝ってって言われなくなりました」
皮剥きをしたかったはずなのにじゃがいもを落としまくって、ついでに自分の皮もちょっと剥けて。
あ、その顔は後悔してますね吉崎さん。
「……男に二言はねぇ。やってやるよ」
「あ、あれは張り切りすぎただけです!」
仕事を頑張って終わらせて疲れていたけど、明日から土日だから大丈夫というテンションにより買いすぎた。反省したのでもうしません。
「それにしてもこのブリすごく美味しいです!」
「話を逸らすな」
「うう、以後気をつけます……」
バレてたか。むしろバレない方がおかしいか。
「美味しいのはほんとですよ。ブリの照り焼きなんてお正月以来です。でもこんな柔らかくなかったというか、美味しいです」
自分の語彙力の無さを呪う。なんて言うんだろう、脂が違うのかな?変な臭みとかもないし……
「焼く前に塩振って少し置いて湯通しすると臭みが減る。あとは水気を拭いて小麦粉を薄くつけてから焼いて、焦げ目を付けてからタレを絡めていく」
ほぉ……細かい。私だったら何も考えずにそのまま焼いてる。で、途中まで作っておいて、私が戻ってくるまで蓋をして最後に一気に仕上げた、と。
「今はネットで調べれば大抵のものの作り方はわかる。手順が多いほど美味いとは言わねぇが、手間を惜しまずその通りにやれば誰にでもできる」
確かにフライパンが炎を上げたりするみたいな、そんなに高度なことはしていない。切ったりもないし、私でもできるのかも?
「ところで嬢ちゃん、あの野菜どうすんだ?」
「そうですね……しばらくサラダにでもしてボリボリと食べるしか……」
私の冷蔵庫だけじゃなくて、吉崎さんの冷蔵庫も侵略してしまってるし、できるだけたくさん消費しなきゃなぁ。とりあえずレンチンするとかさが減るし、それで頑張ろうかな。ああそうだ、当初の予定の野菜炒めと鍋。
「……その計画性のなさでよくあれだけ買ったな」
「使い切れるという妙な自信があの時はありまして。吉崎さんの冷蔵庫の子を先に消費します!明日は休みなので朝昼晩と頑張ればできるはずです!」
「その根拠のない自信はどこから湧いてくるんだ」
吉崎さんはもはや呆れを通り越したのか、口元を押さえて笑い始めた。
ムッとしたけど、確かに吉崎さんの言う通りではあるので何も言い返せない。
かぼちゃの煮付けを食べながらジトッとした目で見るのが精一杯である。それも美味しい煮付けのせいで長くは持たなかった。
「食べるか睨むかどっちかにしろよ」
笑いを堪えているのか、むしろニヤニヤ笑っているように見えてしまう。冷蔵庫に入りきらない野菜を……美味しい。えっさほいさと運んできた私はさぞかし……美味しい。滑稽でしょうね。美味しい
何この煮付け。ほっくほく。甘くて美味しい。
ついに吉崎さんは堪えるのを諦めて爆笑し始めた。
「おま……嬢ちゃん、ぶはっ!」
吉崎さんは箸を置き、机に手をついて声が大きくならないよう必至に堪えている。
今、小声で何だこの生き物って言いましたね?れっきとした人間ですよ。え?顔が安定してない?失礼な。
気にせず味噌汁を啜りながら吉崎さんが落ち着くのを待つことにした。
そうして吉崎さんが笑うのをやめたのは、ほとんど私が食べ終わった時だった。それでも若干肩が震えている。
「笑いすぎです」
「いや、これはしばらく思い出すたびに笑う」
「……よかったですね」
ヤクザさんの笑いのツボがわからない。まあ爆笑するヤクザさんなんて珍しいものを見れたのでいいです、と思うことにした。
ヤクザさんの組長ってもっとこう、笑わないというか、冷徹で気難しいものじゃ……なんて考えながら私は冷蔵庫に入りきらなかったパイナップルを2人前にわけて、こたつに置いた。
「吉崎さんもよろしければどうぞ」
「ああ、ありがとな。にしても、本当にどうするんだあの野菜」
「頑張って消費します」
「頑張るっても限界があるだろ」
その通りだけど、多少残ったところですぐ腐ったりはしないでしょ。とりあえず明日はサラダ生活。ネットで調べて野菜炒めとか……
「見てられねぇ。手伝ってやるよ」
「え、それは……あの野菜さんたちを美味しく料理してくださるってことですか!?」
買ってきた甲斐があったかもしれない。美味しく調理された方がお野菜も幸せですよね!
「おい、勘違いするな。作業するのは嬢ちゃんだ。これを機に覚えろ」
「でも私、お嫁に行く予定ないのですが……」
「予定がないんじゃなくてできないだろ、このままだと永遠に」
「できる旦那様を探します!」
「……嬢ちゃん、訂正する。嬢ちゃんは嫁にはなれねぇ」
断言された。
「まあ綺麗に作れなんて要求しねぇから、やるだけやってみろ。無理そうだったら手伝う」
「でも私、本当に下手なんですよ。高校の時お母さんを手伝おうとしてじゃがいもが無残な姿になって以来、台所を手伝ってって言われなくなりました」
皮剥きをしたかったはずなのにじゃがいもを落としまくって、ついでに自分の皮もちょっと剥けて。
あ、その顔は後悔してますね吉崎さん。
「……男に二言はねぇ。やってやるよ」
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