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シアとローラ
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シアとローラは、同じ孤児院出身である。
10歳のあの聖女選定の儀式も一緒に受けた仲であった。
あの日、孤児院の院長先生に
「今年は、この孤児院から選定式に行くのは貴女方2人なの。平民から聖女見習いになる子もいるらしいけど、私は見たことないわ。選ばれたらラッキーくらいの気持ちで行きなさい」
と言われて送り出された。
各地にある神殿で聖女選定の儀式が一斉に行われるのだ。
神殿で保管されている水晶に手をかざし、水晶が光ったら聖女見習いとして王都の神殿に行くことができる。
「ねぇ、シア。どうしよう。不安になってきちゃった。私聖女に選ばれたいの。選ばれなかったらどうしよう」
「ローラ。何でそんなに聖女になりたいの?」
「だって、このまま孤児院にいても何もいいことないよ。
孤児院を出たら、ずーっと働いて死ぬだけ。
だって私達には何の学もない。
学校にも行ってない。文字も読めない。
だったら、聖女の力があればって夢を見たくなるじゃない。
聖女になれば、お貴族様と結婚もできるのよ。
そしたら毎日贅沢し放題」
そう言ってローラは無邪気に笑うと
「水晶に手をかざすってことは、この私の夢が現実になるか夢で終わるかハッキリしちゃうの。
だがら怖いの」
と泣きそうになる。
「笑ったり泣きそうになったり、ローラの情緒が心配になるわ。
神殿まで手を繋いで行きましょう。
ローラの夢が叶うように、お祈りしながら歩くわ」
とシアはローラの手を握り神殿まで歩いた。
神殿では、何人もの子が選定式を受けており、未だ聖女見習いは現れていなかった。
毎年10人程度の聖女見習いが現れるが、シア達の地域では、ここ15年は現れていない。
その為神官も水晶が光らないのがあたりまえと思っているふしもある。
子ども達の列に並んだ2人は、機械的に進む選定式をじっと見つめた。
ローラの手が小さく震えており、シアはギュッとローラの手を握る。
(ローラの水晶が光りますように)
シアは、心の中で何度も祈る。
シア達の番になり、数歩前にいたローラの腕を神官が掴む。
「さぁ、手をかざして」
「シア、私どうしよう」
と不安そうなローラであったが、目をギュッと瞑り水晶に手をかざした。
その瞬間眩いばかりの光が水晶から発せられ、やる気のなかった神官を驚かせたのだった。
10歳のあの聖女選定の儀式も一緒に受けた仲であった。
あの日、孤児院の院長先生に
「今年は、この孤児院から選定式に行くのは貴女方2人なの。平民から聖女見習いになる子もいるらしいけど、私は見たことないわ。選ばれたらラッキーくらいの気持ちで行きなさい」
と言われて送り出された。
各地にある神殿で聖女選定の儀式が一斉に行われるのだ。
神殿で保管されている水晶に手をかざし、水晶が光ったら聖女見習いとして王都の神殿に行くことができる。
「ねぇ、シア。どうしよう。不安になってきちゃった。私聖女に選ばれたいの。選ばれなかったらどうしよう」
「ローラ。何でそんなに聖女になりたいの?」
「だって、このまま孤児院にいても何もいいことないよ。
孤児院を出たら、ずーっと働いて死ぬだけ。
だって私達には何の学もない。
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だったら、聖女の力があればって夢を見たくなるじゃない。
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そしたら毎日贅沢し放題」
そう言ってローラは無邪気に笑うと
「水晶に手をかざすってことは、この私の夢が現実になるか夢で終わるかハッキリしちゃうの。
だがら怖いの」
と泣きそうになる。
「笑ったり泣きそうになったり、ローラの情緒が心配になるわ。
神殿まで手を繋いで行きましょう。
ローラの夢が叶うように、お祈りしながら歩くわ」
とシアはローラの手を握り神殿まで歩いた。
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「さぁ、手をかざして」
「シア、私どうしよう」
と不安そうなローラであったが、目をギュッと瞑り水晶に手をかざした。
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