聖女レティシアは微笑む

日向陽陰

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 ローラ

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聖女見習いから聖女にあがる者は、毎年数人いる。
見習い1年であがる稀なケースもあるが、だいたい3年から5年聖女見習いとしてお勤めした者があがることが多い。

毎日神殿で行われる聖女見習いによる聖なる魔法。
その魔法の効果がここ2、3年でかなり強くなっているのだ。
聖女見習いによる聖なる魔法は、見習いだけあって効果が安定しない。
一見治癒したかのようにみえても再発したり、なかなか痛みが治まらない等不安定要素が満載である。
それでも人々は、すがる思いで神殿の治療院にやってくる。

それが、ここ2、3年は聖女見習い達の聖なる魔法が安定しているのだ。
再発した、とまた何度も神殿に足を運ぶ平民の数がグッと減っている。

「やっぱり次にあがるのはローラ様かしら?」
シアの言葉に、リリアンは声を潜めて
「そうであって欲しいけど、無理かもよ」
と眉間に皺を寄せ話す。
「ローラは聖なる魔法の力は強いし、神官のお気に入りだし、本人も望んでいるから聖女候補ではあるみたい。
  でも、聖女様や女官達が反対してるから」
「そんなに反対の声は多いのかしら?」
とシアもヒソヒソ声で返す。
「そりゃそうよ!ローラの性格の悪さは、一緒に聖女見習いをやっていた人達皆んなが分かってるもの。
  今朝のメロロンだって絶対ローラのしわざよ」
「あのメロロンは、不味かったわ」
シアは遠い目をして、ジャリっとしたメロロンの食感と得体の知れない臭みを思い出した。

夕飯を終えるとリリアンは厨房の片付けに戻る。
シアは自室に戻り、就寝までの自由時間となる。
簡易的なベッドと粗末なチェストしかない狭い部屋だが、個室である。
孤児院での2段ベッドが沢山置かれた大部屋よりは落ち着くし、自分の為に時間が使える。
眠りにつくまでのわずかな時間で、シアは繕い物やレース編みをするのであった。
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