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3章 望まれた王国
52 Veakの天才たち
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〇筐艦_第二層
「こんな所にも…っ!」
Veakに属する戦闘隊員にしてTD2P組織公認の諜報員であるアルバーノ米吉が自身の想像力によって生み出した鎌状の大刃物を狭い空間の通路の中で器用に振り捌く。敵影感知センサーに捉えられた侵入者たちは各々が彼のように武器を持ち、容赦なく襲い掛かってくるために対応事態はシンプルな殺害討伐という手法が採用できた。
手に掛けていく鈍い感触と共に違和感と脅迫感が彼を満たす。現状報告の中では敵影を放出する十四系の扉は第三層に出現しているということだったが、それにしては彼の担当する第二層で確認される侵入者の数が多い。あらかじめ移動方法がわかっているTD2P内部の人間ならまだしも、扉が接続されて間もない現時点で同心円状の都市階層を速やかに移動できるだけの構造理解があるとは考えられなかった。
「米吉っ、下がれ!!」
同じくVeak所属のブート・ウィートフィールドが通路越しに声を響かせる。それから一秒も経たないうちに米吉の耳には弾丸が自分の近くを通りすぎる際の特徴的な風切り音が届いてきた。発砲音もマズルフラッシュもないため発見が遅れたが、その弾丸の犯人は通路を挟んだ反対側から彼に向けて特殊な銃を差し向けていることに気が付く。
「なんとかしてくれ、ブート‼」
「無茶いうな!そんな物騒な長物持ってる奴とそんな狭い通路で連携取れないよ!」
「うひゃあ!」
発射が無音の拳銃による発砲が続く。米吉は侵入者の腕の角度と銃口の向きから想像して勘で回避することが出来ているが、侵入者が全速力で通路を猛ダッシュして近づいてくる手前で重量感のある長物を装備している彼では相性が悪すぎた。
ブート・ウィートフィールドが得意とするのは超至近距離からの総合格闘技的な攻撃であり、身体バフを可能とするためゼロ距離であればこの程度の敵の制圧は朝飯前だが、やはり銃を生み出せる敵を前にしては相性が味方をしてくれない。
「どーすんだよ!?この程度で死んだら洒落にならんって」
「ホントだよ。君たち諜報員だからって実戦舐めてない?」
声と共に颯爽と現れた青年は怖れ知らずの大胆な走破で米吉と交錯すると、無音の銃を持った敵の首をすぐさま掻っ切ってみせた。
通路に血飛沫が舞う中、青年は手に持ったトランプカードよりも小さいナイフを何度も侵入者に突き立てて息の根が止まるまで攻撃を続けた。
「ナイス、赤穂君。助かったよぉ」
「諜報員だからって戦闘を軽視しちゃダメでしょ。特に君らは近接戦闘メインなんだから、飛び道具がいるだけで詰む場所にいるのは適材適所とは言えないよね」
「いやーでも、ほら。めちゃめちゃ侵入者多いんだよ。てか、赤穂君めっちゃ強いのに三層で張ってなくていいん?」
赤穂は血みどろのナイフを宙に消滅させ、代わりのナイフを手元に出現させる。
「んー。三層は間に合ってるかもねぇ。唐土さ……ボイジャー:アンブロシア号が冠域使って対処に回ってる。単純な戦力換算でボイジャーが実動しているわけだから、俺らが行っても脚引っ張るだけだね」
「でも赤穂君、唐土さん並みに馬鹿強いじゃん。あの人だけに任せるより、皆で十四系の扉を叩くってのもアリなんじゃ?」
赤穂は米吉を軽く小突いた。
「俺とあの人が対等にやり合えるのは冠域なしで手合わせする時だけだよ。冠域まで使われたら俺なんて瞬殺されるって。……それにさっき米吉が言ったように二層目にも結構な数の敵性反応があるからそっちも無視できない」
「じゃあ俺たちでここいらの敵を全部ぶっちめてやろうぜ!」
アルバーノ米吉は持ち前の気分屋の性格を存分に滲みだしているような楽観的な笑みを浮かべ、肩に自身の身長を超える大きさの大鎌を預けた。手を元気よく突き立てて、よっしゃいくぜい、みたいなあっけらかんとした態度を取っている彼だが、数秒後にはその笑顔も曇ることになる。
「うっわごめぇん‼」
先程の赤穂を思わせる登場の仕方でブート・ウィートフィールドが赤穂と米吉の元へと合流した。だが、赤穂と決定的に異なる点は、彼が侵入者に襲われる形で吹き飛ばされてきたということだった。ブートは合流後に転倒したが、すぐに立ち上がって何もない空間に拳を放つ。
すると空を捉えたはずの拳の元にブートがやってきた方向から一人の半裸の男が飛び込んで来る。最初から接近してくるのがわかっていたかのように拳は男の頬を捉えたが、半裸の男はすぐに姿勢を転換してブートに攻撃を仕掛ける。
「ええやん。ワレむっちゃ強いねんなァ」
半裸の男が身を捩って拳に遠心力と膂力を乗せる。重く鋭い一撃がブートの貌の前のガードを崩してそのまま彼を再度吹き飛ばし、体勢を直したブートとテンポよく殴り合う。
「名前が割れてる奴が出てきたね」
「アレは……暴坊じゃないですか。カテゴリー3の悪魔の僕だ!個体登録済みの悪魔の僕でも獏は反応してないのかよ!?」
慌てる米吉を他所に赤穂が動き出す。手にしていた小さなナイフを投擲するが、彼自身は投げたナイフと同じ速度で移動している。
「おーおー。元気ええねんな。思うとったより楽しめるやないか‼」
マジシャンのように手を滑らかに動かす赤穂は一度に五本以上のナイフを保持しながら戦った。喧嘩スタイルの腕っぷしの強さで名を馳せた暴坊は極めて正確な近距離防衛技術によってナイフを捌いているが、赤穂がナイフを生み出すタイミングの歪さであったり、彼がナイフをストックしておくために宙に放り投げるアクションは独特そのものだった。一つ一つの身のこなしに見覚えなどあるはずもなく、認知が行き届かない僅かな隙を縫うようにして確実に創傷を与えている。
「獏が割くことが出来るリソースは限られているだろうからね。クリルタイのお方々がこの侵入劇を正確に観測するだけの機能を解放するとは思えないよ」
「無駄話かよ。舐めとんのか」
暴坊が大振りの蹴りで赤穂を物理的に退かせる。そこで生まれた空間に鎧のような筋肉が纏わりついた剛腕を差し込み、赤穂の鳩尾を思い一撃が撃ち抜く。
「おっ……ぇ…‼?」
「赤穂君‼‼」
米吉が大鎌を振り抜いて特殊な角度の斬撃を繰り出す。暴坊はそれを腕の回転だけで受け流すと待っていたとでも言わんばかりに勢い任せの跳躍をして飛び膝蹴りに繋げた。勘が鋭い米吉はこれに対応することができたが、それ以上に暴坊が企んでいる戦いの流れの支配に巻き込まれているような状況に追い込まれていることに気が付く。拳も脚も、一つ一つのモーションは単純だが、連撃を織りなすために求められる速度感覚と体勢制御が完璧そのものだった。
純粋な近距離での殴り合い、投げ合い、掴みからの寝技までを完備しているブートでさえ、極悪なリズムゲームのノーツに呑まれるように攻撃のタイミングや間合いを掴めずにいた。
「わからんなァ。お前らは俺みたいなやつを止めるためにおるんとちゃうんか。もっと本気で殴り合おうや。本気で」
「くっそッ‼」
ナイフの投擲によって暴坊の太い首に刃が刺さる。
だが、暴坊はダメージを許容してなお突っ込むことを選んだ。
思い切りの良い前蹴りが赤穂の顔面を捉え、勢いに押された彼の頭が床までスライドしてワンバウンドする。
「おっらァ‼」
米吉が利き手から身体強化によってエネルギーを体の軸に流し、的確な角度から大鎌を暴坊に向けて薙ぎ払う。赤穂への攻撃の反動で少しだけ姿勢が上ずっていた暴坊は最大限の回避を諦めて片方の脚だけを残す選択を採り、大鎌の恐るべき切れ味が暴坊の地に付いた右脚を腿から奪い取る。
目に見えるダメージを与えることが出来た点を踏まえてブートと米吉が一挙にダイナミックに動く。姿勢制御が完璧だった暴坊が脚を一つ失ったとなれば、ここで決めなくては意味がないという全うな判断だった。
米吉は先程より遥かに力を込めて大鎌を振り抜き、ブートは乾坤一擲の想いでドロップキックを繰り出す。
お互いが両サイドから暴坊の頭部を狙う。夢想世界といえども頭部破壊は魂の破壊に最も近道な急所であるのだ。
だが、彼らの強い思いに呼応するように、狙いすましていた暴坊の貌に浮かぶ双眸が青い光を噴き出した。
「固有冠域展開:暴暴砕雁」
空間にバグが起きる。完全なるノーモーションから暴坊の拳が米吉の顔面を撃ち抜く間合いに瞬間移動し、剛腕が与えた強いショックによって彼の歯が何本も宙を舞った。瞬間移動と同時に復元されていた右脚は暴坊の次の姿勢制御を促し、今度は死角に存在するはずのブートのドロップキックに対して後ろ回し蹴りを併せた。威力に優れる暴坊の蹴りはブートの姿勢を宙で崩し、隙を見せたなと言わんばかりに笑みを浮かべる暴坊の追撃の頭突きによって顔を凹ませられた。
「……ヒュー。なんやタイマン張れんと思うとったさかい好きにやらせとったけど。買い被りすぎやったかな。冠域つこたってワンパンだとは思わへんかったわ」
冠域にも様々な種類がある。
大規模な空間支配により自身のルールを押し付ける排他支配。
極端な身体強化を可能とする独自のフィールドの生成。
冠域を構成するエネルギーを自己ギミックとして事象展開する転換型。
夢想解像による変身を促進し、生まれ変わった肉体の特性をさらに強化するものまで様々だ。
どれも強力な夢の形であるのは間違いない。
しかし、中にはこの暴坊のように冠域の性質を極限まで簡略化して即時発動から効果享受までの流れの速度に重きを置く者も存在する。冠域の技としての性質だけでいうなら、冠域の展開・延長・固定の3フェーズを踏んだ場合が基本的に最も効果的で威力の高いものへと昇華されていく。だが、冠域の展開だけの基本的な効果だけでも、対人戦等レベルの争いでは十分に恩恵を得ることが出来る。
彼の冠域の能力は自身に数秒間だけ対戦者に対して、肉体を使っての攻撃が絶対に命中する位置に瞬間移動するというものだった。対象範囲を自身から数メートル離れている敵存在に限定しているため、空間を大きく塗り替えて展開するための精神的リソースや待機時間を必要としない。そのため彼にある程度の集中力と詠唱する三秒程度の猶予があれば即時発動が可能であり、余裕さえあれば連発することさえできる。
さらに腐っても冠域であるという特徴上、自身が最強であるという前提の確保の為に殆どの場合で最低限の肉体が五体満足にまで復元される。失った体力や心理的なダメージが回復するわけではないが、目に見えた身体の欠損がある程度は補完されるこの性質も冠域にかけるリソースが少ない暴坊にとっては相性が良かった。安易に冠域を展開できるためにある程度の肉体的欠損を許容できるため、先程のような割り切った戦いも出来るのだ。
「ごほっ……ゲほぉ゛!」
「よぉ、ミニマムナイフ君。君も試す?」
「ハァ…ハァ……。あー……いいわ。…名のある悪魔の僕の冠域情報はたいだい頭に入ってっけど、アンタのはしょぼすぎて初見だったわぁ。……下町の喧嘩レベルの技なんて何度も見せられても困るよ」
「ええやん。下町の喧嘩。
夢見がちな尊大な馬鹿たちとは違ぉて、俺は生活をちょっとだけ豊かにしてくれるくらいのささやかな夢を大事にしてんねん。どいつもこいつも自分で持余す夢ばっかり追っとるから悪目立ちして死んでくねん」
「……夢に大きいも小さいもないでしょ。ま、俺は使えないんだけどさ」
「やったら手ほどきしたろか?俺も最初は使われへんかったけど、これと似とった力使う奴にあって多少練習しとったらできたで」
「冠域をパクるってことかい?」
「せやで。よーするに夢の力っちゅうんわ魂にくっついた願望や。でっかい野望でも、自分でも気づかんくらいのしょーもない"憧れ"でも力は目覚めんねん。別に俺は世界を滅ぼすとか興味ないし、こないなささやかな喧嘩で輝いとりたいわけ」
「………」
暴坊が持ち前の推進力で赤穂との距離を詰め、身を捩じって得た勢いを固めた五指に乗せて振り抜く。手が赤穂の貌を打ち鳴らし、腕っぷしの強さを存分に活かして彼の全身を宙で一回転させた。
「まー。ええわ。テンポ良く行こうや。人生は冒険やしな」
「うっ」
それから完璧な追撃が続く。絶命を狙っていない身体損壊を目的とした有効打撃ばかりであり、荒々しい拳の中でも感情に左右されない機械的な攻撃性格が顕れているようだった。
「しっかし勿体ないわ。君、強いのにこんな雑な当て馬みたいにされとうて。…なんか俺が虐めてるみたいやん」
暴坊が三日月蹴りで赤穂の首を掃く。
赤穂は反撃をとナイフを数本投げるが、もはや彼が生み出せる投擲の速度は暴坊の身体を掠りもしない。暴坊は急旋回しながら軸足を地面に減り込ませ、加速した上腕を赤穂に突き刺した。
堪らなくなったように赤穂は口から血を噴き出す。貌が悲痛に歪んでおり、その顔面にすら暴坊は容赦なく膝蹴りを叩き込む。
「……終わりにしよか」
赤穂の重瞳が揺れる。
「固有冠域展開:暴暴砕雁」
暴坊の姿が空間から消失。同時に現れた射程圏内の彼の攻撃準備に後手から対応することなど出来ない。
ぶっ放された豪快な一撃が赤穂の傷口を再度抉る。
「…ん?」
攻撃後、暴坊は自身の身体に複数のナイフが刺さっていることに気が付いた。
「やっぱ……うまく…行かないや……。唐土さんみたいに……カウン…の練習しとけば…良かった…」
「死に物狂いでカウンター決めてくれたとこ悪いけど。こんなん冠域展開ですぐに治るで?
固有冠域展開:暴暴砕雁」
連発可能な冠域の再展開により、暴坊の身体が修復される。
「俺は冠域も…ダメだし…夢想解像も……イマイチだからなぁ…」
「哀れやね。何が出来んの?君」
「多分だけど……お前に勝てる」
「……固有冠域展開:暴暴砕雁」
暴坊がトドメのつもりで放った一撃はそのあまりの衝撃で打ち込んだ赤穂の顔面の下の床を砕くほどだった。
「……なんでこれで死なんねん。気持ち悪っ」
「なんで…って…そりゃあね」
頭を潰された赤穂が路傍で死にかける虫のようにもぞもぞと動く。
「それはイマイチな夢想解像だからさ」
暴坊の耳に赤穂の声が届く。
と、同時に暴坊の両耳と五指がボロボロと崩れ落ちて行った。
「あン?」
驚きよりも先に違和感を覚えた暴坊だったが、彼が首を傾けて声の主である赤穂を目に留めた頃には既にその心臓に向けて十本を超えるナイフが突き刺さった後だった。
「なんやそれ」
「小手先のテクニックだけど。夢想解像は自分の想像力のベクトルさえ操作できれば自己投射として分身を生み出すことも不可能じゃないんだ。凡人のアンタは狡い冠域連発で自分の勝ちルートを辿るだけの再現マッチしか出来ないんだろうから知る由もない技術だと思うけどね」
「夢想解像?人狼に化ける爺は見た事あるけど自分を複製するなんて聞ぃたことないぞ」
「完全再現なんて出来ないよ。あくまでも単純な作業を再現するための自動思考人形を作るようなもんさ。イマイチな夢想解像だって言ったじゃないか」
「まぁええわ。だからって君が俺に勝てる理由にはならんけどな」
暴坊の身が弾む。宙に身を預けた状態で固有冠域を展開し、着地することには損傷が修復されていた。
「俺に追いつくことも出きひん鈍間が、この暴坊様を倒せるわけないやろがボケェ‼」
冠域効果が解除される寸前で彼は空間にバグを起こし、傷一つない赤穂の元へと現れる。頬を撃ち抜いた拳によって口からポップコーンのように歯が飛び散るが、ダメージを負った赤穂の後ろからさらに傷一つない五体満足の当人が躍り出る。
「おぉ‼?」
「俺は怖がりでさ」
赤穂の奇抜なナイフ術によって暴坊の皮膚が裂かれる。
「冠域を持てるほどの夢もない。何にもない。価値がない。
でも死にたくない。傷つきたくもない。痛い思いをしないという約束がないと怖くて怖くて堪らないんだ」
「なんや、女々しい」
再度暴坊が冠域を発動。
一人の赤穂が原型を留めなくなるまでに殴り潰されるも、そのすぐ横には飄々と佇む別の赤穂がいる。
「相性良くないよ?いつまで続けるの、それ」
「黙らんかい」
暴坊はさらに多くの赤穂をボコボコに殴りまくる。だが、余裕を持余す赤穂が常に複数人の状態をキープするようになると、攻撃の合間を縫ってカウンターを喰らうシチュエーションが増えていった。
「やってられるか!馬鹿馬鹿しい」
暴坊は狙いを先程のした両名のトドメを差すことに決めた。だが、意識を奪うほどに強烈な攻撃を与えたはずの両名の姿はなかった。
「やっとこっち見たな。半裸野郎っ!」
空間にバグが起こり、誰も映っていない暴坊の視界にブートの姿が現れる。強気に拳を突き出してくるブートの一撃によって暴坊の顔が歪む。
「俺の力……どーいうこっちゃ⁉」
「何言ってるのさ!さっき自分も人からパクったって言ってたじゃん!」
「は…?」
暴坊が冠域を使って体を再生させて瞬間移動する。だが、後出しジャンケンのようにしてブートが一瞬置いて瞬間移動からの攻撃を繰り出し、暴坊を追い打ちした。
「見て覚えられるわけじゃないんやで……‼……そんなん出来たらただの天才やん」
「ただの天才だよ」
ブート・ウィートフィールドは天才のようだった。
そして、さらにそれを再現する者が現れる。
「こんな便利な能力持ってて、わざわざ喧嘩スタイルでやる意味がわからん!絶対に糞デカ武器ブン回した方が強くてカッコいいのに‼」
「おいおいおいおい」
何もない空間に転移してきた米吉。彼は反英雄すら上回る程の大剣を翳して現れた。
―――
―――
―――
三者三様の冠域が同一の効果を持つという異常事態。
暴坊は乱れたペースを取り戻すことが出来ずに激しい競り合いの末に遂に敗れ去った。
原理と事象を解することのない手段としての冠域使用。
誰に再現できるものでもない超高等技術を同時に発現して見せたアルバーノ米吉とブート・ウィートフィールド。
それは彼らが持たざる者だったからこそ持ちうる可能性の力。
戦いの中で成長する者の頂点に立ちうる天才としての素質が、冠域を可能としなかったVeak隊員三名でのカテゴリー3の悪魔の僕の撃破という偉業を成し遂げて見せたのかもしれない。
「さぁ!どんどん駆除していこうぜい‼」
「こんな所にも…っ!」
Veakに属する戦闘隊員にしてTD2P組織公認の諜報員であるアルバーノ米吉が自身の想像力によって生み出した鎌状の大刃物を狭い空間の通路の中で器用に振り捌く。敵影感知センサーに捉えられた侵入者たちは各々が彼のように武器を持ち、容赦なく襲い掛かってくるために対応事態はシンプルな殺害討伐という手法が採用できた。
手に掛けていく鈍い感触と共に違和感と脅迫感が彼を満たす。現状報告の中では敵影を放出する十四系の扉は第三層に出現しているということだったが、それにしては彼の担当する第二層で確認される侵入者の数が多い。あらかじめ移動方法がわかっているTD2P内部の人間ならまだしも、扉が接続されて間もない現時点で同心円状の都市階層を速やかに移動できるだけの構造理解があるとは考えられなかった。
「米吉っ、下がれ!!」
同じくVeak所属のブート・ウィートフィールドが通路越しに声を響かせる。それから一秒も経たないうちに米吉の耳には弾丸が自分の近くを通りすぎる際の特徴的な風切り音が届いてきた。発砲音もマズルフラッシュもないため発見が遅れたが、その弾丸の犯人は通路を挟んだ反対側から彼に向けて特殊な銃を差し向けていることに気が付く。
「なんとかしてくれ、ブート‼」
「無茶いうな!そんな物騒な長物持ってる奴とそんな狭い通路で連携取れないよ!」
「うひゃあ!」
発射が無音の拳銃による発砲が続く。米吉は侵入者の腕の角度と銃口の向きから想像して勘で回避することが出来ているが、侵入者が全速力で通路を猛ダッシュして近づいてくる手前で重量感のある長物を装備している彼では相性が悪すぎた。
ブート・ウィートフィールドが得意とするのは超至近距離からの総合格闘技的な攻撃であり、身体バフを可能とするためゼロ距離であればこの程度の敵の制圧は朝飯前だが、やはり銃を生み出せる敵を前にしては相性が味方をしてくれない。
「どーすんだよ!?この程度で死んだら洒落にならんって」
「ホントだよ。君たち諜報員だからって実戦舐めてない?」
声と共に颯爽と現れた青年は怖れ知らずの大胆な走破で米吉と交錯すると、無音の銃を持った敵の首をすぐさま掻っ切ってみせた。
通路に血飛沫が舞う中、青年は手に持ったトランプカードよりも小さいナイフを何度も侵入者に突き立てて息の根が止まるまで攻撃を続けた。
「ナイス、赤穂君。助かったよぉ」
「諜報員だからって戦闘を軽視しちゃダメでしょ。特に君らは近接戦闘メインなんだから、飛び道具がいるだけで詰む場所にいるのは適材適所とは言えないよね」
「いやーでも、ほら。めちゃめちゃ侵入者多いんだよ。てか、赤穂君めっちゃ強いのに三層で張ってなくていいん?」
赤穂は血みどろのナイフを宙に消滅させ、代わりのナイフを手元に出現させる。
「んー。三層は間に合ってるかもねぇ。唐土さ……ボイジャー:アンブロシア号が冠域使って対処に回ってる。単純な戦力換算でボイジャーが実動しているわけだから、俺らが行っても脚引っ張るだけだね」
「でも赤穂君、唐土さん並みに馬鹿強いじゃん。あの人だけに任せるより、皆で十四系の扉を叩くってのもアリなんじゃ?」
赤穂は米吉を軽く小突いた。
「俺とあの人が対等にやり合えるのは冠域なしで手合わせする時だけだよ。冠域まで使われたら俺なんて瞬殺されるって。……それにさっき米吉が言ったように二層目にも結構な数の敵性反応があるからそっちも無視できない」
「じゃあ俺たちでここいらの敵を全部ぶっちめてやろうぜ!」
アルバーノ米吉は持ち前の気分屋の性格を存分に滲みだしているような楽観的な笑みを浮かべ、肩に自身の身長を超える大きさの大鎌を預けた。手を元気よく突き立てて、よっしゃいくぜい、みたいなあっけらかんとした態度を取っている彼だが、数秒後にはその笑顔も曇ることになる。
「うっわごめぇん‼」
先程の赤穂を思わせる登場の仕方でブート・ウィートフィールドが赤穂と米吉の元へと合流した。だが、赤穂と決定的に異なる点は、彼が侵入者に襲われる形で吹き飛ばされてきたということだった。ブートは合流後に転倒したが、すぐに立ち上がって何もない空間に拳を放つ。
すると空を捉えたはずの拳の元にブートがやってきた方向から一人の半裸の男が飛び込んで来る。最初から接近してくるのがわかっていたかのように拳は男の頬を捉えたが、半裸の男はすぐに姿勢を転換してブートに攻撃を仕掛ける。
「ええやん。ワレむっちゃ強いねんなァ」
半裸の男が身を捩って拳に遠心力と膂力を乗せる。重く鋭い一撃がブートの貌の前のガードを崩してそのまま彼を再度吹き飛ばし、体勢を直したブートとテンポよく殴り合う。
「名前が割れてる奴が出てきたね」
「アレは……暴坊じゃないですか。カテゴリー3の悪魔の僕だ!個体登録済みの悪魔の僕でも獏は反応してないのかよ!?」
慌てる米吉を他所に赤穂が動き出す。手にしていた小さなナイフを投擲するが、彼自身は投げたナイフと同じ速度で移動している。
「おーおー。元気ええねんな。思うとったより楽しめるやないか‼」
マジシャンのように手を滑らかに動かす赤穂は一度に五本以上のナイフを保持しながら戦った。喧嘩スタイルの腕っぷしの強さで名を馳せた暴坊は極めて正確な近距離防衛技術によってナイフを捌いているが、赤穂がナイフを生み出すタイミングの歪さであったり、彼がナイフをストックしておくために宙に放り投げるアクションは独特そのものだった。一つ一つの身のこなしに見覚えなどあるはずもなく、認知が行き届かない僅かな隙を縫うようにして確実に創傷を与えている。
「獏が割くことが出来るリソースは限られているだろうからね。クリルタイのお方々がこの侵入劇を正確に観測するだけの機能を解放するとは思えないよ」
「無駄話かよ。舐めとんのか」
暴坊が大振りの蹴りで赤穂を物理的に退かせる。そこで生まれた空間に鎧のような筋肉が纏わりついた剛腕を差し込み、赤穂の鳩尾を思い一撃が撃ち抜く。
「おっ……ぇ…‼?」
「赤穂君‼‼」
米吉が大鎌を振り抜いて特殊な角度の斬撃を繰り出す。暴坊はそれを腕の回転だけで受け流すと待っていたとでも言わんばかりに勢い任せの跳躍をして飛び膝蹴りに繋げた。勘が鋭い米吉はこれに対応することができたが、それ以上に暴坊が企んでいる戦いの流れの支配に巻き込まれているような状況に追い込まれていることに気が付く。拳も脚も、一つ一つのモーションは単純だが、連撃を織りなすために求められる速度感覚と体勢制御が完璧そのものだった。
純粋な近距離での殴り合い、投げ合い、掴みからの寝技までを完備しているブートでさえ、極悪なリズムゲームのノーツに呑まれるように攻撃のタイミングや間合いを掴めずにいた。
「わからんなァ。お前らは俺みたいなやつを止めるためにおるんとちゃうんか。もっと本気で殴り合おうや。本気で」
「くっそッ‼」
ナイフの投擲によって暴坊の太い首に刃が刺さる。
だが、暴坊はダメージを許容してなお突っ込むことを選んだ。
思い切りの良い前蹴りが赤穂の顔面を捉え、勢いに押された彼の頭が床までスライドしてワンバウンドする。
「おっらァ‼」
米吉が利き手から身体強化によってエネルギーを体の軸に流し、的確な角度から大鎌を暴坊に向けて薙ぎ払う。赤穂への攻撃の反動で少しだけ姿勢が上ずっていた暴坊は最大限の回避を諦めて片方の脚だけを残す選択を採り、大鎌の恐るべき切れ味が暴坊の地に付いた右脚を腿から奪い取る。
目に見えるダメージを与えることが出来た点を踏まえてブートと米吉が一挙にダイナミックに動く。姿勢制御が完璧だった暴坊が脚を一つ失ったとなれば、ここで決めなくては意味がないという全うな判断だった。
米吉は先程より遥かに力を込めて大鎌を振り抜き、ブートは乾坤一擲の想いでドロップキックを繰り出す。
お互いが両サイドから暴坊の頭部を狙う。夢想世界といえども頭部破壊は魂の破壊に最も近道な急所であるのだ。
だが、彼らの強い思いに呼応するように、狙いすましていた暴坊の貌に浮かぶ双眸が青い光を噴き出した。
「固有冠域展開:暴暴砕雁」
空間にバグが起きる。完全なるノーモーションから暴坊の拳が米吉の顔面を撃ち抜く間合いに瞬間移動し、剛腕が与えた強いショックによって彼の歯が何本も宙を舞った。瞬間移動と同時に復元されていた右脚は暴坊の次の姿勢制御を促し、今度は死角に存在するはずのブートのドロップキックに対して後ろ回し蹴りを併せた。威力に優れる暴坊の蹴りはブートの姿勢を宙で崩し、隙を見せたなと言わんばかりに笑みを浮かべる暴坊の追撃の頭突きによって顔を凹ませられた。
「……ヒュー。なんやタイマン張れんと思うとったさかい好きにやらせとったけど。買い被りすぎやったかな。冠域つこたってワンパンだとは思わへんかったわ」
冠域にも様々な種類がある。
大規模な空間支配により自身のルールを押し付ける排他支配。
極端な身体強化を可能とする独自のフィールドの生成。
冠域を構成するエネルギーを自己ギミックとして事象展開する転換型。
夢想解像による変身を促進し、生まれ変わった肉体の特性をさらに強化するものまで様々だ。
どれも強力な夢の形であるのは間違いない。
しかし、中にはこの暴坊のように冠域の性質を極限まで簡略化して即時発動から効果享受までの流れの速度に重きを置く者も存在する。冠域の技としての性質だけでいうなら、冠域の展開・延長・固定の3フェーズを踏んだ場合が基本的に最も効果的で威力の高いものへと昇華されていく。だが、冠域の展開だけの基本的な効果だけでも、対人戦等レベルの争いでは十分に恩恵を得ることが出来る。
彼の冠域の能力は自身に数秒間だけ対戦者に対して、肉体を使っての攻撃が絶対に命中する位置に瞬間移動するというものだった。対象範囲を自身から数メートル離れている敵存在に限定しているため、空間を大きく塗り替えて展開するための精神的リソースや待機時間を必要としない。そのため彼にある程度の集中力と詠唱する三秒程度の猶予があれば即時発動が可能であり、余裕さえあれば連発することさえできる。
さらに腐っても冠域であるという特徴上、自身が最強であるという前提の確保の為に殆どの場合で最低限の肉体が五体満足にまで復元される。失った体力や心理的なダメージが回復するわけではないが、目に見えた身体の欠損がある程度は補完されるこの性質も冠域にかけるリソースが少ない暴坊にとっては相性が良かった。安易に冠域を展開できるためにある程度の肉体的欠損を許容できるため、先程のような割り切った戦いも出来るのだ。
「ごほっ……ゲほぉ゛!」
「よぉ、ミニマムナイフ君。君も試す?」
「ハァ…ハァ……。あー……いいわ。…名のある悪魔の僕の冠域情報はたいだい頭に入ってっけど、アンタのはしょぼすぎて初見だったわぁ。……下町の喧嘩レベルの技なんて何度も見せられても困るよ」
「ええやん。下町の喧嘩。
夢見がちな尊大な馬鹿たちとは違ぉて、俺は生活をちょっとだけ豊かにしてくれるくらいのささやかな夢を大事にしてんねん。どいつもこいつも自分で持余す夢ばっかり追っとるから悪目立ちして死んでくねん」
「……夢に大きいも小さいもないでしょ。ま、俺は使えないんだけどさ」
「やったら手ほどきしたろか?俺も最初は使われへんかったけど、これと似とった力使う奴にあって多少練習しとったらできたで」
「冠域をパクるってことかい?」
「せやで。よーするに夢の力っちゅうんわ魂にくっついた願望や。でっかい野望でも、自分でも気づかんくらいのしょーもない"憧れ"でも力は目覚めんねん。別に俺は世界を滅ぼすとか興味ないし、こないなささやかな喧嘩で輝いとりたいわけ」
「………」
暴坊が持ち前の推進力で赤穂との距離を詰め、身を捩じって得た勢いを固めた五指に乗せて振り抜く。手が赤穂の貌を打ち鳴らし、腕っぷしの強さを存分に活かして彼の全身を宙で一回転させた。
「まー。ええわ。テンポ良く行こうや。人生は冒険やしな」
「うっ」
それから完璧な追撃が続く。絶命を狙っていない身体損壊を目的とした有効打撃ばかりであり、荒々しい拳の中でも感情に左右されない機械的な攻撃性格が顕れているようだった。
「しっかし勿体ないわ。君、強いのにこんな雑な当て馬みたいにされとうて。…なんか俺が虐めてるみたいやん」
暴坊が三日月蹴りで赤穂の首を掃く。
赤穂は反撃をとナイフを数本投げるが、もはや彼が生み出せる投擲の速度は暴坊の身体を掠りもしない。暴坊は急旋回しながら軸足を地面に減り込ませ、加速した上腕を赤穂に突き刺した。
堪らなくなったように赤穂は口から血を噴き出す。貌が悲痛に歪んでおり、その顔面にすら暴坊は容赦なく膝蹴りを叩き込む。
「……終わりにしよか」
赤穂の重瞳が揺れる。
「固有冠域展開:暴暴砕雁」
暴坊の姿が空間から消失。同時に現れた射程圏内の彼の攻撃準備に後手から対応することなど出来ない。
ぶっ放された豪快な一撃が赤穂の傷口を再度抉る。
「…ん?」
攻撃後、暴坊は自身の身体に複数のナイフが刺さっていることに気が付いた。
「やっぱ……うまく…行かないや……。唐土さんみたいに……カウン…の練習しとけば…良かった…」
「死に物狂いでカウンター決めてくれたとこ悪いけど。こんなん冠域展開ですぐに治るで?
固有冠域展開:暴暴砕雁」
連発可能な冠域の再展開により、暴坊の身体が修復される。
「俺は冠域も…ダメだし…夢想解像も……イマイチだからなぁ…」
「哀れやね。何が出来んの?君」
「多分だけど……お前に勝てる」
「……固有冠域展開:暴暴砕雁」
暴坊がトドメのつもりで放った一撃はそのあまりの衝撃で打ち込んだ赤穂の顔面の下の床を砕くほどだった。
「……なんでこれで死なんねん。気持ち悪っ」
「なんで…って…そりゃあね」
頭を潰された赤穂が路傍で死にかける虫のようにもぞもぞと動く。
「それはイマイチな夢想解像だからさ」
暴坊の耳に赤穂の声が届く。
と、同時に暴坊の両耳と五指がボロボロと崩れ落ちて行った。
「あン?」
驚きよりも先に違和感を覚えた暴坊だったが、彼が首を傾けて声の主である赤穂を目に留めた頃には既にその心臓に向けて十本を超えるナイフが突き刺さった後だった。
「なんやそれ」
「小手先のテクニックだけど。夢想解像は自分の想像力のベクトルさえ操作できれば自己投射として分身を生み出すことも不可能じゃないんだ。凡人のアンタは狡い冠域連発で自分の勝ちルートを辿るだけの再現マッチしか出来ないんだろうから知る由もない技術だと思うけどね」
「夢想解像?人狼に化ける爺は見た事あるけど自分を複製するなんて聞ぃたことないぞ」
「完全再現なんて出来ないよ。あくまでも単純な作業を再現するための自動思考人形を作るようなもんさ。イマイチな夢想解像だって言ったじゃないか」
「まぁええわ。だからって君が俺に勝てる理由にはならんけどな」
暴坊の身が弾む。宙に身を預けた状態で固有冠域を展開し、着地することには損傷が修復されていた。
「俺に追いつくことも出きひん鈍間が、この暴坊様を倒せるわけないやろがボケェ‼」
冠域効果が解除される寸前で彼は空間にバグを起こし、傷一つない赤穂の元へと現れる。頬を撃ち抜いた拳によって口からポップコーンのように歯が飛び散るが、ダメージを負った赤穂の後ろからさらに傷一つない五体満足の当人が躍り出る。
「おぉ‼?」
「俺は怖がりでさ」
赤穂の奇抜なナイフ術によって暴坊の皮膚が裂かれる。
「冠域を持てるほどの夢もない。何にもない。価値がない。
でも死にたくない。傷つきたくもない。痛い思いをしないという約束がないと怖くて怖くて堪らないんだ」
「なんや、女々しい」
再度暴坊が冠域を発動。
一人の赤穂が原型を留めなくなるまでに殴り潰されるも、そのすぐ横には飄々と佇む別の赤穂がいる。
「相性良くないよ?いつまで続けるの、それ」
「黙らんかい」
暴坊はさらに多くの赤穂をボコボコに殴りまくる。だが、余裕を持余す赤穂が常に複数人の状態をキープするようになると、攻撃の合間を縫ってカウンターを喰らうシチュエーションが増えていった。
「やってられるか!馬鹿馬鹿しい」
暴坊は狙いを先程のした両名のトドメを差すことに決めた。だが、意識を奪うほどに強烈な攻撃を与えたはずの両名の姿はなかった。
「やっとこっち見たな。半裸野郎っ!」
空間にバグが起こり、誰も映っていない暴坊の視界にブートの姿が現れる。強気に拳を突き出してくるブートの一撃によって暴坊の顔が歪む。
「俺の力……どーいうこっちゃ⁉」
「何言ってるのさ!さっき自分も人からパクったって言ってたじゃん!」
「は…?」
暴坊が冠域を使って体を再生させて瞬間移動する。だが、後出しジャンケンのようにしてブートが一瞬置いて瞬間移動からの攻撃を繰り出し、暴坊を追い打ちした。
「見て覚えられるわけじゃないんやで……‼……そんなん出来たらただの天才やん」
「ただの天才だよ」
ブート・ウィートフィールドは天才のようだった。
そして、さらにそれを再現する者が現れる。
「こんな便利な能力持ってて、わざわざ喧嘩スタイルでやる意味がわからん!絶対に糞デカ武器ブン回した方が強くてカッコいいのに‼」
「おいおいおいおい」
何もない空間に転移してきた米吉。彼は反英雄すら上回る程の大剣を翳して現れた。
―――
―――
―――
三者三様の冠域が同一の効果を持つという異常事態。
暴坊は乱れたペースを取り戻すことが出来ずに激しい競り合いの末に遂に敗れ去った。
原理と事象を解することのない手段としての冠域使用。
誰に再現できるものでもない超高等技術を同時に発現して見せたアルバーノ米吉とブート・ウィートフィールド。
それは彼らが持たざる者だったからこそ持ちうる可能性の力。
戦いの中で成長する者の頂点に立ちうる天才としての素質が、冠域を可能としなかったVeak隊員三名でのカテゴリー3の悪魔の僕の撃破という偉業を成し遂げて見せたのかもしれない。
「さぁ!どんどん駆除していこうぜい‼」
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