39 / 80
37 植物園に行きました
しおりを挟む
翌朝は、カーテンを開けると曇っていた。
昨日は、洋服を決めだけで、なんだかぐったりしてしまい早く寝た。
そのせいか朝5時には起きてしまい、そのあともなかなか眠れずに天井を見つめ続けていた。
仕方なく朝の6時には起きて、朝ご飯を食べることにした。
軽く掃除もして、身支度もした。
お出かけ用の洋服を着るときには、いつもの地味目のブラウスとスカートしかなく、なんだか今すぐ買い物に行きたくなるぐらいだった。
「 雨は、大丈夫かなあ。 」
天気予報を見ると、夕方は雨になる予報だったので、折りたたみ傘を持っていくことにした。
それから、時間になるまでどこの植物園に行くのか予想をしようと、いくつか候補を見ておいた。
その中で、ソフトクリームがおいしいと評判になっているところがあり、急にソフトクリームが食べたくなってしまった。
そうこうしているうちに、やっと約束の時間になったので、玉山の部屋を訪れた。
「 おはようございます。 」
いつものようにすぐに出てきた玉山は、今日もいつものようにさわやかな格好をしていた。
きている洋服も今日もまたさりげないおしゃれ感があって、つい自分の服と比べてしまいちょっとだけ落ち込んだ。
しかし玉山は、敦子がそんな事を考えているなんて思ってもいないだろう。
今日もまた素晴らしい笑顔で言った。
「 じゃあ行こうか。 」
車に乗り込んで出発した。
「 今日は、どこに行くんですか。 」
「 今日は、○○植物園に行こうと思ってるんだけど、行ったことある? 」
「 いえ、ないです。でもソフトクリームがおいしいと評判らしいですよ。 」
敦子は、今日仕入れた情報を言ってみた。
「 へえ~。じゃあ、食べなくちゃあいけないな。 」
玉山は、敦子が意気込んでいったことがおかしかったのか、少し笑いながら言った。
ついたところは、大きそうだったが、お休みのためか、混んでいた。
空は、どんより雲に覆われていたが、すぐにも雨が降りそうではなかった。
植物園でもチケットを玉山が買ってくれ、敦子がお金を払おうとしたが受け取ってくれなかった。
「 じゃあ、ソフトクリームのお金は私が出しますね。 」
敦子は、ソフトクリームが食べたかったので、つい言ってしまったが、いってから食べる気満々の発言だと思い、訂正しようと思ったが、玉山も笑いながら賛成してくれたので良しとした。
「 ありがとう。じゃあごちそうになろうかな。 」
2人見て回ることにした。
さっと玉山が手を差し出した。
敦子は、少し恥ずかしかったが、この前つないだこともあるので、この前より気軽に手を出した。
玉山の手は大きくて暖かい。
なんだか少しぼ~としたまま歩き始めた。
もしかしたら玉山もそうだったのかもしれない。
はじめ二人は、無言で歩いていた。
それでも10分ぐらい歩いていると、手をつないでることにずいぶん慣れてきて、ふたり植物について感想も言えるほどになった。
そうこうして回っていると、列になっている人たちが見えた。
近づいていくと、どうやらそこがソフトクリームを売っている売り場らしい。
傍らにいる敦子のキラキラした顔をみた玉山が言った。
「 じゃあ、買ってくるよ。ここで待ってて。 」
「 私が買ってきますよ。私が言い出したので。 」
「 いいよ。行ってくる。 」
玉山はそういうと、敦子を置いて、長い足で瞬く間に行ってしまった。
敦子は、仕方なくそばにあったベンチで待つことにした。
ここなら売り場がよく見える。
敦子が見ていると、売り場にちょっとした異変が起こった。
玉山が列につくと、皆の顔が急に玉山のほうを向き始めた。
あからさまに見てはいけないと思ったのか、ちらちら見ている人が多い。
よく見ると、まだ小さな女の子まで、玉山の顔を眺めている。
列についているおばさんに至っては、もうそちらに体全体向けてしまっている人もいる。
後ろの人に順番が来て、促されているおばさんまでいた。
敦子は、その様子をのんびりと眺めていたが、改めて玉山のすごさを感じた。
敦子が、ぼ~とみていると、玉山が、ソフトクリームを手にかえってきた。
ここは、バニラソフト一種類しかない。
ただそこは、ダブル盛りとか大盛りとかなかったはずだ。
なのに玉山が持っている二つのソフトクリームは、コーンから今にも落ちてしまいそうなほど、盛に盛られている。
敦子は、その一つを受け取ったが、よく見ると周りの人が持っているソフトクリームの量は、どう見ても普通だった。
ふと売り場のほうを見ると、売り子の女の子がまだ玉山のほうをぼーと見ており、ほかの売り子の男の子につつかれて慌てて作業を始めたところだった。
敦子もすぐに食べずに、ちょっと見ていてしまったからだろう。
外の気温は、まだそこそこあるので、どんどんソフトクリームが解けていく。
「 早く食べないと、溶けちゃうね。 」
声がして、そちらを見ると、きれいな所作でソフトクリームを食べている玉山がいた。
玉山の様子を見ると、自分たちだけが、大盛りのソフトクリームだったとは、少しも気づいていないようだ。
敦子も急いで食べ始めた。
しかしどんどん溶けていくソフトクリームに追いつかない。
おかげで手はべたべた、しかもポトポト溶けたソフトクリームが下に落ちていく。
しまいには、スカートにまでついてしまい、食べ終わった時には、手がソフトクリームだらけになってしまっていた。
「 口の周りにクリームついているよ。 」
敦子が、少し下を向いてスカートを見ていると、ふと口元に何かを感じた。
正面に顔を戻すと、玉山が自分の持っているハンカチで、敦子の口元をぬぐってくれていた。
「 えっ、すみません。 」
急いで、ポケットから自分のハンカチを取り出し口を拭う。
ふと視線を感じて視線の先を見れば、売り場についている人たちとその周りでソフトクリームを食べている人たちが、皆こちらをぼ~と眺めていた。
しかもみな半分恍惚といった顔をして玉山を見ている。
のみならず、その先の玉山の持っているハンカチを見ている人もいた。
玉山はといえば、敦子が見ていたスカートを見ていった。
「 スカートにもついちゃったね。 」
玉山は、スカートも拭いてくれようとした。
敦子は先ほどの玉山の行動を理解して、真っ赤になった顔を背けて言った。
「 ちょっ、ちょっと水でハンカチを濡らして拭いてきますね。あと手も洗ってきます。 」
そういって、トイレに向かって脱皮のごとく走っていったのだった。
昨日は、洋服を決めだけで、なんだかぐったりしてしまい早く寝た。
そのせいか朝5時には起きてしまい、そのあともなかなか眠れずに天井を見つめ続けていた。
仕方なく朝の6時には起きて、朝ご飯を食べることにした。
軽く掃除もして、身支度もした。
お出かけ用の洋服を着るときには、いつもの地味目のブラウスとスカートしかなく、なんだか今すぐ買い物に行きたくなるぐらいだった。
「 雨は、大丈夫かなあ。 」
天気予報を見ると、夕方は雨になる予報だったので、折りたたみ傘を持っていくことにした。
それから、時間になるまでどこの植物園に行くのか予想をしようと、いくつか候補を見ておいた。
その中で、ソフトクリームがおいしいと評判になっているところがあり、急にソフトクリームが食べたくなってしまった。
そうこうしているうちに、やっと約束の時間になったので、玉山の部屋を訪れた。
「 おはようございます。 」
いつものようにすぐに出てきた玉山は、今日もいつものようにさわやかな格好をしていた。
きている洋服も今日もまたさりげないおしゃれ感があって、つい自分の服と比べてしまいちょっとだけ落ち込んだ。
しかし玉山は、敦子がそんな事を考えているなんて思ってもいないだろう。
今日もまた素晴らしい笑顔で言った。
「 じゃあ行こうか。 」
車に乗り込んで出発した。
「 今日は、どこに行くんですか。 」
「 今日は、○○植物園に行こうと思ってるんだけど、行ったことある? 」
「 いえ、ないです。でもソフトクリームがおいしいと評判らしいですよ。 」
敦子は、今日仕入れた情報を言ってみた。
「 へえ~。じゃあ、食べなくちゃあいけないな。 」
玉山は、敦子が意気込んでいったことがおかしかったのか、少し笑いながら言った。
ついたところは、大きそうだったが、お休みのためか、混んでいた。
空は、どんより雲に覆われていたが、すぐにも雨が降りそうではなかった。
植物園でもチケットを玉山が買ってくれ、敦子がお金を払おうとしたが受け取ってくれなかった。
「 じゃあ、ソフトクリームのお金は私が出しますね。 」
敦子は、ソフトクリームが食べたかったので、つい言ってしまったが、いってから食べる気満々の発言だと思い、訂正しようと思ったが、玉山も笑いながら賛成してくれたので良しとした。
「 ありがとう。じゃあごちそうになろうかな。 」
2人見て回ることにした。
さっと玉山が手を差し出した。
敦子は、少し恥ずかしかったが、この前つないだこともあるので、この前より気軽に手を出した。
玉山の手は大きくて暖かい。
なんだか少しぼ~としたまま歩き始めた。
もしかしたら玉山もそうだったのかもしれない。
はじめ二人は、無言で歩いていた。
それでも10分ぐらい歩いていると、手をつないでることにずいぶん慣れてきて、ふたり植物について感想も言えるほどになった。
そうこうして回っていると、列になっている人たちが見えた。
近づいていくと、どうやらそこがソフトクリームを売っている売り場らしい。
傍らにいる敦子のキラキラした顔をみた玉山が言った。
「 じゃあ、買ってくるよ。ここで待ってて。 」
「 私が買ってきますよ。私が言い出したので。 」
「 いいよ。行ってくる。 」
玉山はそういうと、敦子を置いて、長い足で瞬く間に行ってしまった。
敦子は、仕方なくそばにあったベンチで待つことにした。
ここなら売り場がよく見える。
敦子が見ていると、売り場にちょっとした異変が起こった。
玉山が列につくと、皆の顔が急に玉山のほうを向き始めた。
あからさまに見てはいけないと思ったのか、ちらちら見ている人が多い。
よく見ると、まだ小さな女の子まで、玉山の顔を眺めている。
列についているおばさんに至っては、もうそちらに体全体向けてしまっている人もいる。
後ろの人に順番が来て、促されているおばさんまでいた。
敦子は、その様子をのんびりと眺めていたが、改めて玉山のすごさを感じた。
敦子が、ぼ~とみていると、玉山が、ソフトクリームを手にかえってきた。
ここは、バニラソフト一種類しかない。
ただそこは、ダブル盛りとか大盛りとかなかったはずだ。
なのに玉山が持っている二つのソフトクリームは、コーンから今にも落ちてしまいそうなほど、盛に盛られている。
敦子は、その一つを受け取ったが、よく見ると周りの人が持っているソフトクリームの量は、どう見ても普通だった。
ふと売り場のほうを見ると、売り子の女の子がまだ玉山のほうをぼーと見ており、ほかの売り子の男の子につつかれて慌てて作業を始めたところだった。
敦子もすぐに食べずに、ちょっと見ていてしまったからだろう。
外の気温は、まだそこそこあるので、どんどんソフトクリームが解けていく。
「 早く食べないと、溶けちゃうね。 」
声がして、そちらを見ると、きれいな所作でソフトクリームを食べている玉山がいた。
玉山の様子を見ると、自分たちだけが、大盛りのソフトクリームだったとは、少しも気づいていないようだ。
敦子も急いで食べ始めた。
しかしどんどん溶けていくソフトクリームに追いつかない。
おかげで手はべたべた、しかもポトポト溶けたソフトクリームが下に落ちていく。
しまいには、スカートにまでついてしまい、食べ終わった時には、手がソフトクリームだらけになってしまっていた。
「 口の周りにクリームついているよ。 」
敦子が、少し下を向いてスカートを見ていると、ふと口元に何かを感じた。
正面に顔を戻すと、玉山が自分の持っているハンカチで、敦子の口元をぬぐってくれていた。
「 えっ、すみません。 」
急いで、ポケットから自分のハンカチを取り出し口を拭う。
ふと視線を感じて視線の先を見れば、売り場についている人たちとその周りでソフトクリームを食べている人たちが、皆こちらをぼ~と眺めていた。
しかもみな半分恍惚といった顔をして玉山を見ている。
のみならず、その先の玉山の持っているハンカチを見ている人もいた。
玉山はといえば、敦子が見ていたスカートを見ていった。
「 スカートにもついちゃったね。 」
玉山は、スカートも拭いてくれようとした。
敦子は先ほどの玉山の行動を理解して、真っ赤になった顔を背けて言った。
「 ちょっ、ちょっと水でハンカチを濡らして拭いてきますね。あと手も洗ってきます。 」
そういって、トイレに向かって脱皮のごとく走っていったのだった。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
スカートを切られた
あさじなぎ@小説&漫画配信
恋愛
満員電車から降りると、声をかけられた。
「スカート、切れてます」
そう教えてくれた大学生くらいの青年は、裂かれたスカートを隠すのに使ってくれとパーカーを貸してくれた。
その週末、私は彼と再会を果たす。
パーカーを返したいと伝えた私に彼が言ったのは、
「じゃあ、今度、俺とデートしてくれます?」
だった。
25歳のOLと大学三年生の恋の話。
小説家になろうからの転載
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる