なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

文字の大きさ
上 下
35 / 80

33 紹介しました

しおりを挟む
結局敦子は、なぜか二人にじーとみられる中、玉山に連絡した。

『 大丈夫です。近いですので電車で帰ります。ありがとうございます。 』

またすぐ返事が来た。

『 荷物もあるでしょう。近くの駅まで行きますので、教えてください。 』

なぜか玉山は、迎えに来る気満々だった。

敦子は、困ったなあと思い、ふとスマホの画面から顔を上げると、こちらを食い入るように見つめている二人がいた。

「 あっちゃん、なになに? 」

「 どうしたの? 」

恵美は面白がるように、久仁子はいぶかしそうに聞いてきた。

敦子は、仕方なく玉山の話をした。
もちろん空を飛んだことは言わなかったが、アパートのお隣さんであること、同じビルに勤めていることなどを言ってしまった。

2人は、それはそれは興味津々で敦子の話を促してくる。
敦子は、ふたりの厳しい追及に、しまいには、さきほどの連絡の事までしゃべってしまった。

先に発言したのは、恵美だった。

「 あっちゃん、いいじゃん。うちに来てもらえば。私も見れるし。その玉山さんだっけ。ぜひ見た~い。 」

「 そうだよ、お言葉に甘えたら。 」

2人の説得に結局アパートまでのお迎えを頼むことにした。

玉山に返信すると、快くお迎えに行くとの返事が来た。

それからは、二人が根掘り葉掘り玉山さんの事を聞くので、参った。


やっと二人から解放された敦子は、そそくさとお風呂に入ってきますといいどんどんお風呂に入っていった。
ふたりも次々にお風呂に入り、三人ゆったりとした時間となった。

「 じゃああっちゃんの明日のために、みんなでパックをしよう。 」

急に恵美が言い出し、みんなに美容顔パックの袋を配り始めた。

「 明日顔がむくんでいたんじゃあまずいでしょ。これ効果あるのよ~。お肌も10歳若返るし。 」

「 本当~? でも10歳若返っても子供にならない年齢なんだよね~。 」

思わず敦子が、禁断の言葉を言ってしまい二人ににらまれてしまった。

三人で、パックをする。

パックをしたせいで寝ることができなくなったので、また三人で話し始めた。

「 あっちゃんもとうとう彼氏もちか。いいなあ。 」

「 違うって、ご近所なだけだよ。それにどうせ明日玉山さんを見る気満々でしょ。みたらわかるけど、とってもじゃないけど、私とじゃ釣り合わないよ。だって『 エレベーターの貴公子 』って呼ばれてるんだよ。 」

「 でも、ちゃんとあっちゃんをお迎えまできてくれるんでしょ。脈あるんじゃない? ねえ恵美ちゃん! 」

「 そうだよ、絶対あっちゃんに気があるって。 」

「 けどね~。相手のレベルが高すぎだし、私この年になるまで誰とも付き合ったことないから、どうやって付き合えばいいのかわかんないんだよね~。二人は、お付き合いの経験があるからいいけどね。 」

「 あっちゃん、私なんてはるか昔の昔話だから、もう忘れちゃったよ。現在進行形のくにちゃんとは違うのよ。 」

「 私が言うのもなんだけど、付き合う人それぞれ考え方も違うし、性格だって違うんだから、お付き合いした経験なんて関係ないと思うよ。 」

「 くにちゃん、さすが。年の功だけあって違うね~! 」

「 やめてよ恵美ちゃん、みんな同じ年なんだからね。 」

恵美の言葉でみんな笑い出し、せっかくのパックが役に立たなくなりそうだった。

でも二人の、特にくにちゃんの言葉にずいぶん励まされた敦子だった。

三人は、パックがからからに乾くまでおしゃべりしてしまい、ほうれい線が~ と一人叫んでいる恵美をよそに寝ることにした。



翌朝は、三人で手分けして朝食をつくり、昨日のデパ地下惣菜の残りと合わせていただいた。

「 今日は、ずいぶん豪華な朝ご飯になったね。 」

三人で、食べた朝ご飯はおいしかった。


玉山に連絡した時間の10分前には、アパートの前で待つことにした。

もちろん両脇には、あの二人がくっついていて、玉山の来るのを今か今かと待っている。

道路を一台の白い車が、走ってきた。

敦子たちの前で止まる。

玉山が、今日もさわやかに車を降りてきた。

「 ごめん。待たせちゃったかな。 」

「 ううん、まだ予定の時間にないですよ。早く来てくれたんですね。ありがとうございます。 」

敦子は玉山にそういって、二人を紹介しようと二人のほうを見た。

2人は、コチコチに固まっていた。

「 ねえ、くにちゃん、恵美ちゃん。こちら玉山さん。 」

2人にそういったが、二人は敦子の言葉が耳に入っていないのか、玉山に視線が釘づけのままだ。

仕方なく敦子は、二人の肩をたたいて、こちらの世界に呼び戻そうとした。

肩の刺激でやっと敦子に気づいた2人は、ふたりお互いの顔を見合わせて、微妙な顔をしてから、敦子の方を向いた。

「 こちらが玉山さん。 」

「 こちらは、友達の横橋さんに酒井さんです。 」

敦子は、ふたりに玉山を紹介してから、玉山にも2人を紹介した。

2人は紹介されて、再び玉山の方を向いた。 

なぜか二人とも油の切れた機械のようにぎこちない動作でお辞儀をした。

玉山はといえば、そんな二人に、いつものさわやかな顔であいさつしてきた。

「 みなさん仲がいんですね。昨日は、滝村さんがお世話になりました。 」

まるで、親のようなあいさつだった。

いつもなら饒舌の恵美が、今日は無言だった。

玉山が、敦子の持っているバッグを受け取り車に入れた。

「 じゃあね、またね。 」

敦子と玉山は、二人で車に乗り込んだ。

発信するというところで、久仁子が玉山に向けていった。

「 あっちゃんをよろしくお願いします。 」

「 はい、わかりました。 」


玉山がウインドウをあけて、笑顔で久仁子にそういうと、なぜか横に立っている恵美の体が傾いた気がした。



2人が、敦子たちに手を振ってくれている中、玉山の車は、発進したのだった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

スカートを切られた

あさじなぎ@小説&漫画配信
恋愛
満員電車から降りると、声をかけられた。 「スカート、切れてます」 そう教えてくれた大学生くらいの青年は、裂かれたスカートを隠すのに使ってくれとパーカーを貸してくれた。 その週末、私は彼と再会を果たす。 パーカーを返したいと伝えた私に彼が言ったのは、 「じゃあ、今度、俺とデートしてくれます?」 だった。 25歳のOLと大学三年生の恋の話。 小説家になろうからの転載

処理中です...