なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

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23 乙女心は複雑です

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その日デパ地下で、お気に入りのスイーツを買い、散財してしまった敦子は、部屋に戻って後悔した。

「 あ~あ、今月は洋服も買っちゃったし、お高いスイーツも買っちゃったよ~。 」

食後のデザートとして、目の前にあるスイーツをゆっくりと味わうように食べながら、敦子はつぶやいた。

これもすべて玉山さんのせいだばかりに隣の部屋の壁をにらみつけた。

二つ買ったデザートのうち、もう一つは大切に明日に取っておくことにした。


また同じ夢を見た。

今朝見た夢と同じで、自分が滝の前にいる。
誰かを待っている。

しばらくして、水の中から竜が現れて、男の人に変化して、自分のそばに歩いてくる。

今日は、そこで目が覚めた。


朝電車に揺られながら、敦子は今朝見た夢の事を思い出していた。

( いったい何なんだろう。また玉山さん似の人が出てきたよ。かんべんしてよ~。 )

思い切り一人ため息をついた。


会社に行くと更衣室で、後輩の子がいた。

「 おはようございます。 」

「 おはよう~。 」

「 滝村さん、営業の笹川さんと仲いいんですね。 」

「 そう? そこまでいいわけじゃないよ。仕事の事しか話さないし。 」

「 そうなんですか。昨日ちょうど休憩室の前通ったら、お二人でいるの見えちゃったので。すみません。変なこと聞いちゃって。 」

「 いいよ。いつも一緒に食べる子たちが、お昼買い出しに行ってて、待ってたの。その時ちょうど笹川さんが来て仕事を頼まれただけよ。 」

「 そうなんですね。じゃあお先に。 」  

そういって後輩の子は、先に更衣室を出て行った。

はあぁ____

敦子は、またため息が出てしまった。

「 おはよう~、あっちゃん。」

大橋奈美が入ってきた。

「 どうしたの~? 大きなため息なんかついちゃって。 」

「 おはよう~、若いっていいなあって思っただけ。リア充には、わかんないだろうけどさ。 」

「 な~に、あっちゃんだってすぐできるよ~。そんなことより、お昼お弁当持ってきた? 」

「 ううん、持ってきてない。 」

「 じゃあ、食べに行く? 結衣ちゃんにも聞いてみる。 」 

そういって奈美は、元気よく更衣室を出て行った。

はあぁ____

本日三回目のため息を出した敦子だった。




「 ここおいしいね。いいとこ見つけたね。奈美ちゃん。 」

「 うんうん、お値段もお手ごろだし。いいねえ~。奈美ちゃんいい仕事してくれたよ。 」

敦子は、同僚の奈美と結衣の三人で、いつものようにランチに来ていた。

結衣と敦子は、奈美が見つけたお店にご機嫌である。

「 結衣ちゃ~ん、朝からあっちゃんがさ、大きなため息ついてたんだよ。それが今は、ホクホク顔。 」

「 そうだったの? あっちゃん何かあったの? 」

「 ううん、何にもないんだけどね。というか何にもないのが、問題なんだな。リア充たちには、わかんないだろうけどさ。 」

「 朝も言ってたよね。結衣ちゃん、あっちゃんが攻撃してくる~。 」

奈美がおどけて見せたので、三人で笑った時だった。

「 こんにちは。 」

「 はっ。 」

「 へっ。 」

「 えっ~~~。 」

ちょうどテーブルの前を通った玉山が、敦子を見つけて挨拶してきた。

敦子を含めた三人は、みな玉山の登場に驚いている。

「 あっちが空いてますよ。行きましょう。 」

玉山と一緒にいた女の人が、玉山に催促した。

一緒にいた後ろの男性二人も敦子たちにおじぎした。

「 じゃあまたね、滝村さん。 」

玉山は、女の人にせかされたからか、敦子に挨拶して横の二人にもお辞儀してからテーブルのほうにいった。
一緒にいた女の人は、先を歩いていたが、玉山が敦子の名前を呼んだとたん、振り返り敦子のほうをじろっと見た。

思い切り敦子と目が合ってしまった。

女の人は、敦子の顔をよ~く見て、フンといった顔をしていってしまった。

玉山達4人が、去っていくとすぐ、奈美が聞いてきた。

「 あっちゃん、今の何? どうして『 エレベーターの貴公子 』知ってるのよ。 」

「 そうだよ、私たちなんにも聞いてないよ。 」

結衣も言ってきた。二人の顔は、真剣そのものである。
敦子の返事いかんでは、胸ぐらでもつかまれそうな勢いである。

敦子は、しぶしぶ玉山の事を話した。

「 名前は、玉山さんて行ってね。住んでいるアパートのお隣さんになったのよ。アパートの大家さんの親戚とかで、引っ越してきたらしいの。それだけ。 」

「 でも名前知ってたわよ。 」

奈美が突っ込みを入れてきた。

「 あ~あ、この前帰省するとき、弟と部屋を出るときにちょうど会って挨拶したの。それで名前だけ知ってるのよ。 」

敦子は、なるべく顔に表情を出さないように話したつもりだった。

しかしテーブルの下にある手は汗がぐっしょり、背中も見事に汗がしたたり落ちるのを感じた。

「 ふ~ん。 」

納得したような納得いかないような微妙な顔をして、二人はうなずいた。

「 でも見た? あっちゃんの名前、玉山さんだっけあの人がいったとたん、一緒にいた女の人の顔が変わったよね。怖かった~。 」

「 うんうん、すごい顔してたね。あっちゃんライバル視されちゃった? 」

ふたりは、のんきに言っている。

「 それにしてもあっちゃん、うらやましい! お隣があの人よ。いつでも会えるね~。 」

「 目の保養になるしね~。そんな偶然ってあるのね~。 」

2人は、しきりに感心していた。


とうの敦子は、さっき見た女の人の整った綺麗な顔とスタイルの良さに、なんだか心がしぼんだのだった。 
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