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22 今日はお弁当を持っていきました
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その夜敦子は、夢を見た。
自分が、なぜか着物を着て、滝の前にいる。
すると滝の中から竜が現れた。そして人型になった。
夢の中の自分は、それに少しも驚くことはなく、反対にその人を見たとたんうれしい気持ちになった。
そして自分は、滝のそばにある大きな岩に腰かけようとしたとき、水に映る自分の姿を見た。
あれっ、誰この人? 私じゃない!
そう思ったとき、目が覚めた。
はっとして、飛び起きる。
どう見てもここは、自分のいつもの部屋だ。着ているものは、パジャマだと確認する。
この前聞いた昔話のせいで、こんな変な夢を見たのだろうか。
ただ夢から覚めるとき、声を聞いた気がした。
『 あつぅ____ 』
時計を見れば朝の5時過ぎ。
また眠ろうかと思ったが、結局眠れなかった。
早めに起きて、軽く洗濯をした。
時間があったので、作り置きのものを詰めて弁当を持っていくことにした。
玉山さんの前を通ったが、ドアは開かなかった。
( もういないのかな? 帰るときまた連絡してくれるといっていたけど。 )
昨日玉山は、自分の部屋に帰るとき、また連絡するといってくれた。
しかもごちそうしてもらったお礼に、今度は食事に行こうといってくれた。
その言葉だけで、いつもなら気の重い週初めが、少し気持ちが軽くなる気がする。
ひょんきんな自分に、なんだかおかしくなった。
思わず一人くすっと笑ってしまってから、ここは、電車の中だと気が付いた。
慌ててあたりを見渡すが、皆スマホを見たりしていて、敦子に気が付いた様子はなかった。
今度は、今朝見た夢の事を思い出した。
( そういえば、あの人玉山さんに似てた気がするな。 )
夢の中に出てきた人は、なんだか顔がかすんでいてよく覚えていないが、玉山さんに似ていた気がする。
それとあの夢の中で聞こえた声も、似ているような気がしなくもない。
たぶん昨日夕食まで一緒に食べたせいに違いないが、夢の中に出てくるほど、意識してしまっている自分が少し恥ずかしくなった。
会社に行くと、やはりというべきか三連休の後で、いつもより忙しかった。
お昼になり、いつものように、皆で食べに出ようという話になった。
しかし敦子が、今日弁当を持ってきてると聞くと、いつも一緒に食べる同僚達は、近くで買ってくるから待っててといったので、敦子は休憩室で待つことにした。
敦子が、一人待っていると、名前を呼ばれた。
営業の笹川さんだった。
「 滝村さん、ここにいたのか。悪いけど、この書類またやっておいてくれる? 」
「 あっ、はい。いいですよ。 」
いつものように敦子が言うと、笹川は、敦子の前にあるお弁当箱を見た。
「 滝村さん、今日はお弁当? 」
「 そうです。 」
「 自分で作ったんだよね。 」
「 残り物を詰めただけですけどね。 」
「 へえ~、でも一人暮らしだよね。 」
「 ええ、自炊しないとお金かかるので。 」
「 今度、僕のも作ってよ。 」
いつの間に来たのか、急に笹川が耳元で言ったので、敦子は思わずのけぞってしまった。
「 笹川さんなら、作りたいって人が、大勢いますよ。 」
笹川は、敦子ののけぞった姿にくっくっと笑い、敦子の話を無視していった。
「 三連休は、帰省してたの? 」
「 はい、そうです。 」
笹川は、書類机の上置いておくね~と書類を手に振って、休憩室を出ていこうとした。
しかし出口でまた足を止め、振り返っていった。
「 いつも悪いね。今度なんかおごるよ。 」
なんだか笹川にいいように言われた敦子は、半分疲れてスマホを見ることにした。
( 笹川さん、そういえばよく帰省したこと知っていたなあ。 )
ちょっと不思議に思った敦子だった。
しばらくして、休憩が少なくなっちゃうとどたどたしながら、同僚の大橋奈美と近藤結衣が帰ってきた。
三人でいつものように食事していると、ふと同僚の大橋奈美が言った。
「 さっきあの『 エレベーターの貴公子』見たのよね~、 ねえ~結衣ちゃん。 」
「 そうそう下に行くエレベーターで一緒になったのよ。やっぱりかっこよかった~。 」
「 どうしたの? あっちゃん大丈夫? 」
急に敦子が、むせたので、奈美と結衣の二人がびっくりした。
「 ごめん、むせっちゃた。 」
敦子は、慌てて水筒のお茶を飲んだ。
「 それにしても今日『 エレベーターの貴公子 』と一緒にいた女の人もすごい綺麗だったよね。 」
「 そうそう美男美女で、お似合いのカップルって感じ。 」
「 どうしたの、あっちゃん。まだのどがいたいの? なんだか顔色が悪いみたい。 」
「 何でもないよ、ありがとう。 」
「 そういえばあっちゃん、実家で休息できた? 」
「 うん。 」
敦子は、先ほどの玉山の話で、なんだか食欲がなくなるのを感じた。
「 あっちゃん? 帰省して疲れてる? 気を付けてね。 」
元気のなくなった敦子に二人が、心配して声をかけてくれた。
「 そういえば、週末にあっちゃん誘ったでしょ。坂口さんにあとで聞いたんだけど、あれ、笹川さんが、あっちゃんにいつもお世話になってるから、お礼したかったんだって。また行こうね。笹川さんのおごりらしいから。 」
今までなら、心が浮き立った話も、今日はなんだか心が沈んだままだった敦子だった。
お昼も終わり、席に着くと、午後も仕事がたんまりとあり、敦子は半ばやけくそになって仕事をした。
その姿を見ていた、上司が言った。
「 滝村さん、今日は仕事に精を出しているね。なんだか鬼気迫る勢いだよ。でももう少し肩の力抜いてやってくれていいからね。 」
今日は、デパ地下にでもよって、おいしいデザートでも買って帰ろうと思った敦子だった。
自分が、なぜか着物を着て、滝の前にいる。
すると滝の中から竜が現れた。そして人型になった。
夢の中の自分は、それに少しも驚くことはなく、反対にその人を見たとたんうれしい気持ちになった。
そして自分は、滝のそばにある大きな岩に腰かけようとしたとき、水に映る自分の姿を見た。
あれっ、誰この人? 私じゃない!
そう思ったとき、目が覚めた。
はっとして、飛び起きる。
どう見てもここは、自分のいつもの部屋だ。着ているものは、パジャマだと確認する。
この前聞いた昔話のせいで、こんな変な夢を見たのだろうか。
ただ夢から覚めるとき、声を聞いた気がした。
『 あつぅ____ 』
時計を見れば朝の5時過ぎ。
また眠ろうかと思ったが、結局眠れなかった。
早めに起きて、軽く洗濯をした。
時間があったので、作り置きのものを詰めて弁当を持っていくことにした。
玉山さんの前を通ったが、ドアは開かなかった。
( もういないのかな? 帰るときまた連絡してくれるといっていたけど。 )
昨日玉山は、自分の部屋に帰るとき、また連絡するといってくれた。
しかもごちそうしてもらったお礼に、今度は食事に行こうといってくれた。
その言葉だけで、いつもなら気の重い週初めが、少し気持ちが軽くなる気がする。
ひょんきんな自分に、なんだかおかしくなった。
思わず一人くすっと笑ってしまってから、ここは、電車の中だと気が付いた。
慌ててあたりを見渡すが、皆スマホを見たりしていて、敦子に気が付いた様子はなかった。
今度は、今朝見た夢の事を思い出した。
( そういえば、あの人玉山さんに似てた気がするな。 )
夢の中に出てきた人は、なんだか顔がかすんでいてよく覚えていないが、玉山さんに似ていた気がする。
それとあの夢の中で聞こえた声も、似ているような気がしなくもない。
たぶん昨日夕食まで一緒に食べたせいに違いないが、夢の中に出てくるほど、意識してしまっている自分が少し恥ずかしくなった。
会社に行くと、やはりというべきか三連休の後で、いつもより忙しかった。
お昼になり、いつものように、皆で食べに出ようという話になった。
しかし敦子が、今日弁当を持ってきてると聞くと、いつも一緒に食べる同僚達は、近くで買ってくるから待っててといったので、敦子は休憩室で待つことにした。
敦子が、一人待っていると、名前を呼ばれた。
営業の笹川さんだった。
「 滝村さん、ここにいたのか。悪いけど、この書類またやっておいてくれる? 」
「 あっ、はい。いいですよ。 」
いつものように敦子が言うと、笹川は、敦子の前にあるお弁当箱を見た。
「 滝村さん、今日はお弁当? 」
「 そうです。 」
「 自分で作ったんだよね。 」
「 残り物を詰めただけですけどね。 」
「 へえ~、でも一人暮らしだよね。 」
「 ええ、自炊しないとお金かかるので。 」
「 今度、僕のも作ってよ。 」
いつの間に来たのか、急に笹川が耳元で言ったので、敦子は思わずのけぞってしまった。
「 笹川さんなら、作りたいって人が、大勢いますよ。 」
笹川は、敦子ののけぞった姿にくっくっと笑い、敦子の話を無視していった。
「 三連休は、帰省してたの? 」
「 はい、そうです。 」
笹川は、書類机の上置いておくね~と書類を手に振って、休憩室を出ていこうとした。
しかし出口でまた足を止め、振り返っていった。
「 いつも悪いね。今度なんかおごるよ。 」
なんだか笹川にいいように言われた敦子は、半分疲れてスマホを見ることにした。
( 笹川さん、そういえばよく帰省したこと知っていたなあ。 )
ちょっと不思議に思った敦子だった。
しばらくして、休憩が少なくなっちゃうとどたどたしながら、同僚の大橋奈美と近藤結衣が帰ってきた。
三人でいつものように食事していると、ふと同僚の大橋奈美が言った。
「 さっきあの『 エレベーターの貴公子』見たのよね~、 ねえ~結衣ちゃん。 」
「 そうそう下に行くエレベーターで一緒になったのよ。やっぱりかっこよかった~。 」
「 どうしたの? あっちゃん大丈夫? 」
急に敦子が、むせたので、奈美と結衣の二人がびっくりした。
「 ごめん、むせっちゃた。 」
敦子は、慌てて水筒のお茶を飲んだ。
「 それにしても今日『 エレベーターの貴公子 』と一緒にいた女の人もすごい綺麗だったよね。 」
「 そうそう美男美女で、お似合いのカップルって感じ。 」
「 どうしたの、あっちゃん。まだのどがいたいの? なんだか顔色が悪いみたい。 」
「 何でもないよ、ありがとう。 」
「 そういえばあっちゃん、実家で休息できた? 」
「 うん。 」
敦子は、先ほどの玉山の話で、なんだか食欲がなくなるのを感じた。
「 あっちゃん? 帰省して疲れてる? 気を付けてね。 」
元気のなくなった敦子に二人が、心配して声をかけてくれた。
「 そういえば、週末にあっちゃん誘ったでしょ。坂口さんにあとで聞いたんだけど、あれ、笹川さんが、あっちゃんにいつもお世話になってるから、お礼したかったんだって。また行こうね。笹川さんのおごりらしいから。 」
今までなら、心が浮き立った話も、今日はなんだか心が沈んだままだった敦子だった。
お昼も終わり、席に着くと、午後も仕事がたんまりとあり、敦子は半ばやけくそになって仕事をした。
その姿を見ていた、上司が言った。
「 滝村さん、今日は仕事に精を出しているね。なんだか鬼気迫る勢いだよ。でももう少し肩の力抜いてやってくれていいからね。 」
今日は、デパ地下にでもよって、おいしいデザートでも買って帰ろうと思った敦子だった。
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