なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

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18 家族団らんでした

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敦子は、美代子の車で家まで送ってもらった。

男の人たちは、あの後あとかたずけをしてから帰るといったので、一足お先に帰ってきたのだ。


その日の夕食の時には、やはり湖で起きた出来事が、家族の中で話題になった。

「 いやっ、すごかったよ。いきなりだからさ。みんなびっくりして、慌ててみたら水柱が高~く上がっててさ 。 」

「 お父さん、みんな見たの? すごいわね。私も見たかったわ~。敦子も神社行ったんでしょ? 敦子も見たの? 」

「 見てない。その時は、裏の滝にいたから。みんなのところに行ったら、もう水柱上がってなかった。 」

「 残念だったわね~。 」

「 やっぱりさ。ねえちゃん、善行が足りないんだよ。俺なら絶対見たのにな~残念。 」

「 お前が見れるわけないよ。草刈もさぼったくせに。 」

「 そうだよ、聡なんてぐうたら寝てたじゃん。 」

父も敦子も聡にぼろくそだった。

「 それにしても今までこんなことなかったでしょ。どうしたのかしらね。 」

母は、驚きながらも、この奇妙な出来事に心配顔をした。

「 大丈夫。今年は、滝の量も多いし、いい年になるよ。 」

「 そうねえ、去年までは、滝の水枯れそうだったものね。 」


そうなのだ。ここ最近は、いくら雨が降っても、なぜか滝の水が枯れてきていて、とても観光資源にはなりえそうもなかったのだ。同じように湖の水も透明度もなくなり、水がずいぶん減ってきていた。

あの湖は、滝の水が流れていることもあり、滝の水の水量の影響は大きい。

しかし今年は、見事に滝の水量がふえ、そのためかわからないが、湖の水も今までより透明度が増している。

「 よかったじゃん。これなら観光の売りになるんじゃない? それよりさ俺、ねえちゃんちで、面白いもん見ちゃったよ。 」

「 なに? 面白いものって。 」

すかさず母が、突っ込む。

「 聡、余分なこと言わなくていいの。もう泊めてあげないよ。 」

敦子が、異様に反応したからだろうか。父親は、ものめずらしそうに言い合う二人を見ているし、母親は、興味津々で聡に話を促した。

「 ねえちゃんちいった日、隣の人になぜかにらまれちゃったんだよ。それで今日の朝、こっちに戻ってくるとき、またお隣さんに会ってさ。弟って挨拶したら、なぜだかすごいご機嫌になってさ、お見送りまでされちゃって。びっくりしちゃったよ。それでその人なんだけどさ、すごいイケメンなんだよ。男の俺が見たって、すごいカッコいいのよ。そんな人と、なんでねえちゃんと仲いいのか、わかんないんだよね~。だってねえちゃんだよ、‟平凡が歩いてる”って言われるぐらいのさ。 」

「 失礼ね、なによ平凡が歩いてるって。誰が言ったのよ。それにね、玉山さんとは、何でもないの。ただ同じビルで働いてるっていうだけ。 」

「 そうかなあ~。あれは、普通で見たら脈ありって感じなんだけどなあ。でもあの人じゃあね、ねえちゃんとは、あまりに住み世界が違うって感じだしね~。珍動物を見る感じの興味なのかなあ。 」

それまで、黙って聞いていた母が言った。

「 なに、そのお隣さんて。どんな人なの? 敦子、電話じゃあ何も言ってなかったじゃない。 」

「 だっていうほど接点ないもの。ただのお隣さんなだけだし。 」

「 それにしちゃあ、一緒にご飯食べに行ったり、ご飯作ってあげたんだろ。 」

「 聡! うるさい、もう黙っててよ。 」

「 そうなの? お食事行ったりしたの? 」

「ただ成り行きで、ごちそうしたから、お礼に食事に連れて行ってくれただけ。 」

「 成り行きって何なのよ? 」

母の追及の手は休まない。 

敦子は仕方なく、空を飛んだところを、見られたところは言わずに、料理を作っていたときに、お隣まで匂ってそれで料理に興味を持たれて、ごちそうしただけだといった。
お隣さんは、大家さんの親戚だということも言っておいた。

「 そうなの? お付き合いしている人いるのかしらね~。 」 

「 いるんじゃね~。あんだけカッコいいんだからさ。いなかったとしてもハードル高いでしょ。 」

聡が、身もふたもないことを言って、なぜだか母親をがっくりさせていた。

「 それにね、あの人うちのビルの中の○○商事にお勤めされているの。私とは、ご縁はないの。 」

敦子が、そうきっぱり言ったので、母親と父親は、なぜだか顔を見合わせたのだった。



父親が、その場の雰囲気を変えるように言った。

「 林さんとこの息子さん、今お付き合いしている人いないんだってな。誰かいい人いないかなあなんて言ってたぞ。 敦子どうだ? 」

「 どうだって、あの林さんだってかっこいいじゃん。うちの職場の子の中でも結構人気あるよ。 」

聡が突っ込みを入れてきた。

「 そうなのか? 」

なぜだか父親が、がっくりしていた。



「 ねえそれより、あの神社の由来とか縁起のか何か知ってる? もともとは、うちのご先祖様が、神主さんだったんでしょ。」

敦子は、話の流れを変えたかったのと、あの神社の事を知りたかったのだ。

幼い時から、お祭りに参加していたとはいえ、あの神社の事は、あまりよく知らない。

知ってることといえば、昔あの滝と池を住処にしていた竜を祭ったものだといわれている。
あるとき前代未聞の干ばつが、この地方を襲った時、竜が雨をもたらしてくれたといわれている。
それからこの地方では、お社を建て、滝と湖をご神体としてお祭りしている。

「 うちが神主さんというのは、ちょっと違うけどな。もともとは、うちの祖先が、巫女さんとなってあの神社を祭っていたんだよ。けど何代目かに後継ぎの女の子が、生まれなくて、代理で神主になったらしいんだ。確かうちのどこかに神社の由来を書いた巻物があった気がするんだけどな。もともとは、ご神体は、玉だったと書いてあった気がするなあ。まあ俺も小さい時に、おじいさんに聞いただけだけどな。 」

「 そうなの。今は、ご神体鏡だよね。 」

「 そうだな。玉がなくなって、ご先祖様の誰かが作らせたんだろうな。 」

敦子は、ふっと頭の中に何か、思い浮かんだ気がした。
しかしそれは、何も形を持ったものではなかったのだった。
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