なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

文字の大きさ
上 下
14 / 80

13 やっぱり妖怪は有名でした

しおりを挟む
月曜日の朝、会社に行く時、隣の玉山さんの部屋の前を通ったが、ドアが開かなかった。

( 今日は、ドア開かないなあ。もう会社行ったのかなあ。それともまだいるのかなあ。)

玉山さんに会えなくて、残念なようなほっととしたような相容れない気持ちになり、朝からなんだか微妙な感じで、電車に乗った。

いつものように業務をして、やっとのことでお昼になった。月曜日はいつもそうだが、午前中はまだ仕事がはかどらない。

たぶんランチに行こうと誘ってきた二人も、そうだったのだろう。

お昼ご飯は、近くのお店でランチを食べようということになり、敦子を入れて、仲の良い同期三人で、出かけた。

同じフロアーにいる大橋奈美と近藤結衣だ。
三人とも同じ年だ。

三人で、店に入り席に着くと、すぐ大橋奈美が言った。

「 ねえ~、二人とも知ってる? 噂の皿妖怪。 」

「 見た見た。動画で見たよ~。怖いよね~。 」

「 うっぅ、その妖怪の話って、そんなに有名なの? 」

敦子が、たまらず二人に聞いた。

「 だって、ニュースになったぐらいだよ。それにあの動画見た人の中に、事故にあった人もいるんだって。 」

「 知ってる、知ってる。あの動画見たり、アップされた写真を見た人が、不幸な事件に巻き込まれるっていう噂があるんだよねえ。呪いの動画って言われてるよね。 」

「 なにそれ怖~い。 」

2人は、怖がりながら、両手で腕をさするという同じ動作をした。

ずいぶんな噂話が、盛りに盛られているようだ。

「 奈美ちゃんも結衣ちゃんも、信じてるの? 」

「 井上君のお友達が、実際に見たんだって。そのお友達が、会社で残業していたとき、窓の外を見たら、妖怪が、髪の毛を振り乱しながら、空を飛んでたんだって。しかも真っ赤な血だらけの皿に乗って。同じフロアーの人も、何人か見た人たちがいたらしいのよ。 」

「 へえ~、やっぱり妖怪ってホントにいるのね。ねえあっちゃん。 」

井上君とは、近藤結衣の彼氏で、私たちと同期の人だ。

敦子は、思った。

夜景を見に行ったあのビル群のどれかのビルで、働いているのだろう。
頑張って仕事をしていたのに、可哀想なことをしたものだ。
敦子は、心の中で、見たことのない井上君の友人とやらにあやまっておいた。

そうこうしているうちに、ランチセットが来たので、みんないったん話をやめて、ランチを食べた。

ランチについている飲み物を飲んでいるときだった。

またまた奈美が言った。

「 じゃあこれ知ってる? あの銅像事件。 」

「 あれね、あれって不思議よね~? 」

怖い怖いといいながらも、怖い話好きな奈美と結衣は、二人で楽しそうに話している。

「 銅像事件って? 」

敦子が、奈美に聞くと、待ってましたとばかりに、スマホの動画を敦子に見せた。

敦子は、その行動になぜか透視感を覚えたが、動画を見た。

その動画には、空を漂っているなにかが、銅像の上に見事に着地したところが、写っていた。

空を漂っているときには、慌てていたのか、ずいぶんぼけていたのだが、銅像に着地したときには、見事に撮影されていた。おまけに着地したときの、周りのどよめきなんかも、きれいに入っており、その時の周りの驚きが、手に取るようにわかる映像だった。

「 げっほっ、げっほっ、げっほっ。 」

敦子は、飲んでいた紅茶が、むせて鼻にまで入ってしまい、涙目になってしまった。

「 あっちゃん、大丈夫? 」

何も知らない二人は、急にむせだした敦子の心配をしてくれた。

「 だぃ~、じょぅ~ぶぅ~。 」

敦子は、むせたせいで、声がしわがれてしまった。

2人は、敦子の無事を確認して、また話し始めた。

「 銅像事件は、あの妖怪となんか関係あるんじゃないかとか、いろいろ言われているのよね。 」

「 でもよく見ると、あの銅像の頭にのったのは、かつらじゃない? 」

「 かつらだったとしてもよ。あんなに高い空から降ってくるもの? 」

「 そうねえ~、不思議よね。 」

2人は、真剣に議論を戦わせていた。

( まさかウイッグが、あんなところにあったなんてびっくり。ウイッグを売ったお店の人、まさか動画見てないよね。 )

真剣に自分の保身を考えた敦子だった。

敦子が、考えている間に、時間が来たので、三人は会社に戻った。




会社に戻ると、営業の笹川さんが、敦子の席にやってきた。

「 遅くなって悪いんだけど、出張旅費精算してもらえる? 」

「 いいですよ。これからは、もう少し早く持ってきてくださいね。 」

「 ありがとう。たのむよ。今度何かおごるからさ。 」

そういって、笹川は、書類を敦子に渡して去っていった。

その時ちょうど通りかかった、奈美が、笹川と敦子の話を聞いたのだろう。

「 今度おごってもらったら。いつもあっちゃんに迷惑かけてるんだから。」

「 いいよ。怖いもん。 」

そう営業の笹川さんは、モテるのだ。
顔も整っているし、仕事もできるので、結構社内の女の子たちが狙っている。

しかも今フリーだということも大きい。

笹川さんと人気を二分していた、井上君は、さっき一緒にランチに行った近藤結衣と、付き合い始めてしまった。

もう少し前で言うと、絶大な人気を誇っていた、坂口さんは、今目の前にいる大橋奈美と付き合っている。

どんどんできる男たちに彼女ができて、焦っている女の子が多いのも事実なのだ。

かくいう敦子も以前なら笹川さんに、仕事上とはいえ、声をかけてもらえるだけで、その日一日うれしかったものだ。
しかし、人外ともいえる玉山さんに会った後は、なんだか笹川さんがずいぶん普通の人に見える。

不思議なものだ。



そう考えていたら、なんだか急に玉山さんに会いたくなった敦子だった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

スカートを切られた

あさじなぎ@小説&漫画配信
恋愛
満員電車から降りると、声をかけられた。 「スカート、切れてます」 そう教えてくれた大学生くらいの青年は、裂かれたスカートを隠すのに使ってくれとパーカーを貸してくれた。 その週末、私は彼と再会を果たす。 パーカーを返したいと伝えた私に彼が言ったのは、 「じゃあ、今度、俺とデートしてくれます?」 だった。 25歳のOLと大学三年生の恋の話。 小説家になろうからの転載

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

処理中です...