なぜか水に好かれてしまいました

にいるず

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2 水や牛乳をつかんでみました?

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翌朝土曜日も、朝からよく晴れていた。

「 お洗濯でもするか。 」

朝食を食べてから、洗濯機を二回ほどまわした。
そして普段できない掃除をした。

あらかた終えて、一息つこうと、冷蔵庫から牛乳パックを出そうとしたとき、スマホが鳴ったのに気が付いた。
焦ったのがいけなかったのか、牛乳パックが冷蔵庫の扉に当たって、勢いよく牛乳が床にこぼれてしまった。

「 あ~あ、やっちゃったよ。床がくさくなっちゃう。 」

あわてて、キッチンにかけてあるふきんで、拭こうとした時だ。

なぜかこぼれたはずの牛乳が、床から離れて、玉になって浮かんでいく。

敦子が、呆然と眺めているうちに、床にこぼれたはずの牛乳は、すべて床から離れて、玉になって宙に浮かんでいた。

しかも小さい玉が、一つになって大きな一個の白い球になった。

敦子は、それに触ってみたい衝動に駆られて、手を伸ばしてみた。
手に触れると、ぽよんとしたが、壊れない。
そこで両手で救うように、上にのせてみた。
牛乳の球は、ボールのように、敦子の手の上にのった。

敦子は、それを両手で、キッチンの流しに置いた。

すると牛乳の球は待ってましたかとばかりに、はじけて普通の液体となり、流しが牛乳の白色に染まった。

今度は、牛乳が落ちたであろう床を触ってみると、手に牛乳がつかない。
床は、乾燥していた。

「 えっ、どうなってるの。 」

敦子は、考えてみたが、何も思い浮かばない。
流しに水を流して、牛乳の白色が消えていくのを呆然と見ていた。

ブッツッブ________

テーブルに置いてあるスマホが、なった。

慌てて手にとると、実家の母からだった。


「 なに~、今起きたところなの?なんだか寝ぼけた声してるわねえ。 」


母の声で、さっきの不思議な体験のせいか、緊張していた気持ちが、和らいだ気がした。
母の電話は、特に用事はなかったようで、ただ娘の声を聴きたかったようだった。

母との電話を切って、冷静になった頭で、先ほどの出来事を考えてみた。

( あれは何だったんだろう。また、できるかなあ? )


また牛乳をこぼすのは、嫌だったので、キッチンの蛇口で試してみることにした。

ジャ_____________。

蛇口から、水を流してみたが、変わった様子はない。先ほども牛乳を、洗い流したばかりだ。
次に蛇口から出る水に、手を付けてみたが、変わった様子はなかった。

手を上下にあげたりおろしたりして、蛇口の水を見たが、何も変化はない。

コップに水を入れて、流しの上の台に、少しだけこぼしてみた。
ひどくこぼすと、後で拭くのが嫌だったので、少しだけにした。

何も変わらない。やめようと思ったとき、流し横の床が少し濡れていた。

さきほど、蛇口に手を当てたので、水がはねたのだろう。

「 やっちゃったよ。もう~。 」

床の水を拭こうとしたとき、また床の水が、球になった。

「 あれっ~。 」

牛乳の時と同じように、掌の上にのせて、流しに球を捨てた。

そして今度は、流しの上の台にある少しの水に、意識を集中した。

思った通り、水の球ができた。 

そう思ったら、次々に試してみたくなって、水道の水を少しだけ出して、意識を集中した。

次々に球になっていく。そして宙に浮いている球に集中すれば、思い通りに動かせることもわかった。

「 え~、これって超能力? 」

鍋の中の水まで球にできて、動かせることまでわかった時には、お昼を過ぎていた。

「 集中しすぎたせいで、疲れたかも~。 」

もう何もしたくなくなってしまった敦子だった。

しかしそこは、一人暮らし。
今週分の食材を買っておかなくてはならない。
外食ばっかりでは、出費がかさむし、健康にも悪い。

やっとのことで、着替えて、近所のスーパーに向かった。

いろいろ買いこんで、アパートに帰ると、一階に住んでいる大家さんに出会った。

「 こんにちは~。 」

挨拶して通り過ぎようとしたとき、大家さんから声がかかった。

「 こんにちは~滝村さん。今度お宅の横に引っ越してくる人なんだけど、うちの親戚の子でね。男の子なんだけど、うるさかったらいつでもいってね。 」

「 そうなんですね~。今までの人、引っ越しましたもんね。わかりました。 」


このアパートは、一階が、大家さん世帯。
二階三階は、単身世帯が各フロアー3部屋分ある。
近くに大学があるせいで、学生が多いが、一階に大家さんが住んでいるということもあり、セキュリティーの面でも女性受けがいいのか、今まで女性しか住んでいなかった。

( まあ大家さんの親戚で、身元もしっかりしているみたいだし、いいか。 )

敦子は、部屋に入り、買ったものを、冷蔵庫に入れたりしているうちに、さきほど大家さんがいっていたことは、頭の片隅にも残っていなかった。









 





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