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今世のスティーブからの招待
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皆がまだどよめいている中、アシュイラ皇国の使者が、キャスリンのもとに来た。
「新しい像の落成式をおこないますので、また我が国アシュイラにお越しいただけませんか?」
使者はそういうと、王にも深くお辞儀をして返事を促した。王は使者の冷静な物腰と声に先ほどまでの驚きから我に返った。王の顔に戻り、キャスリンのほうを見る。
「キャスリン、わが国代表として行ってくれないか。キャスリンそなたは我が国とアシュイラ皇国の友好の証ダ。そなたのおかげでずいぶんアシュイラ皇国とも経済ほかにもいろいろ交流が増えた。今回の訪問は、ぜひい願いしたい」
「かしこまりました。わたくしにできることでしたら、ぜひお手伝いさせていただきたいと思います」
「それではアシュイラ皇国第二王子であるわたくしスティーブに、キャスリン様を我が国までエスコートさせていただけませんか?」
スティーブがまじめにキャスリンのほうを見て言ってきた。皆が拍手する中、若干一人スコットだけが、苦い薬を飲んだ後のような顔をしていて、横にいる母のミシェルに怒られていた。
アシュイラ皇国の使者の謁見の儀が終わり、皆広間から出ていったなか、王と王妃そしてキャスリン達家族とスティーブと使者の一人が広間に残った。
皆が広間から去ると、王がいぶかしげに聞いてきた。
「スティーブ第二王子、先ほどから気になっておりましたが、キャスリンとお知り合いでしたのでしょうか?」
「知り合いというか、私はずっと幼少のころから体が弱く療養をしておりました。その幼少のころから、いつも夢に見てきたことがあったのです。1人の女性が出てきて、アシュイラ皇国を救ってくれるというものです。その夢に出てきた女性が今目の前にいるキャスリン嬢です。ですから今日はじめて会ったという気がしないのです」
「そうですか。ではキャスリンも夢で第二王子を見ていたのかい?」
王はまだ納得がいかないのかキャスリンにも聞いてきた。キャスリンは笑いをこらえるのを我慢して、わざとうつむき加減で顔を見られないようにした。
「はい、私も夢でよく見ておりました。知らない男性が出てくる夢です。まさか今日実物に出会えるとは夢にも思っておりませんでした」
王は、まだ少し不審な顔をしながらも、相手がアシュイラ皇国の王族であるため引き下がらなければならなかった。
「今こちらの庭園の花が見事に咲いておりますのよ。よかったら、第二王子をご案内して差し上げたら、キャスリン」
「はい、ではスティーブ様ご案内させていただきます」
「ありがとう」
王妃がキャスリンにだけ見えるいたずらっ子の笑みを浮かべて行ってくれたおかげで、キャスリンは早々にスティーブを広間から連れ出すことができた。そうでなかったら、王の次には父であるスコットの質問攻めにあうことになってしまっただろう。
広間からだいぶ離れた庭園に来て、やっとキャスリンはスティーブと顔を合わせた。
「スティーブ、聞きたいことがたくさんあるのよ」
「そうだろうね」
スティーブが、いたずらが成功したとばかりにキャスリンに満面の笑みを向けた。キャスリンはそれにすごく腹が立って、思い切り脛に足をぶつけてやった。
「痛ぁあ~」
キャスリン達から少し遠くにいたアシュイラ皇国の使者たちと王宮の近衛兵たちが、目を丸くしているのが見て取れた。
「もう心配したのよ。それに私この前記憶を取り戻したばかりなの」
「そうだろうね、あの手紙だろ」
すべてを知っていると思われるスティーブがまた笑いながら言ったので、キャスリンは思わず先ほどと同じように足を出そうとしたが、さすがスティーブのほうが一歩早く足が当たらない位置まで飛びのいた。
「もう~」
そう怒りながらもキャスリンは笑って許してしまった。なぜなら今愛しい人が目の前にいるのだから。今ならすべての事を許したい気持ちだ。
「何から話せばいいかな」
スティーブはすべてを話すことにしたようだった。
「キャスリンが僕を助けようと、すべての魔力を出すとは思っていた。一緒に踊った時キャスリン、君は僕の顔をよ~く見てただろう。君の目が決意に満ちているのを僕は見たよ。たぶん僕が何を言っても、君は実行していたよね。だから僕は僕でまた君をこの身をかえても助けたかった。キャスリンが魔法を繰り広げた時、僕も魔法を使おうと思った時だった。声がしたんだ。すぐ近くから。僕が付けていた腕輪から、初代の王と王妃が出てきたんだ」
キャスリンは驚いた。スティーブ一人ではここまでできることはなかっただろう。魔力を出し尽くしたキャスリンが今ここにいて、傍らにはスティーブがいる。そういう事なのか、キャスリンは初めて理解した。
自分たちが今ここにいられるのは、助けてもらったからなのだろう。キャスリンはスティーブの話の続きを聞くことにしたのだった。
「新しい像の落成式をおこないますので、また我が国アシュイラにお越しいただけませんか?」
使者はそういうと、王にも深くお辞儀をして返事を促した。王は使者の冷静な物腰と声に先ほどまでの驚きから我に返った。王の顔に戻り、キャスリンのほうを見る。
「キャスリン、わが国代表として行ってくれないか。キャスリンそなたは我が国とアシュイラ皇国の友好の証ダ。そなたのおかげでずいぶんアシュイラ皇国とも経済ほかにもいろいろ交流が増えた。今回の訪問は、ぜひい願いしたい」
「かしこまりました。わたくしにできることでしたら、ぜひお手伝いさせていただきたいと思います」
「それではアシュイラ皇国第二王子であるわたくしスティーブに、キャスリン様を我が国までエスコートさせていただけませんか?」
スティーブがまじめにキャスリンのほうを見て言ってきた。皆が拍手する中、若干一人スコットだけが、苦い薬を飲んだ後のような顔をしていて、横にいる母のミシェルに怒られていた。
アシュイラ皇国の使者の謁見の儀が終わり、皆広間から出ていったなか、王と王妃そしてキャスリン達家族とスティーブと使者の一人が広間に残った。
皆が広間から去ると、王がいぶかしげに聞いてきた。
「スティーブ第二王子、先ほどから気になっておりましたが、キャスリンとお知り合いでしたのでしょうか?」
「知り合いというか、私はずっと幼少のころから体が弱く療養をしておりました。その幼少のころから、いつも夢に見てきたことがあったのです。1人の女性が出てきて、アシュイラ皇国を救ってくれるというものです。その夢に出てきた女性が今目の前にいるキャスリン嬢です。ですから今日はじめて会ったという気がしないのです」
「そうですか。ではキャスリンも夢で第二王子を見ていたのかい?」
王はまだ納得がいかないのかキャスリンにも聞いてきた。キャスリンは笑いをこらえるのを我慢して、わざとうつむき加減で顔を見られないようにした。
「はい、私も夢でよく見ておりました。知らない男性が出てくる夢です。まさか今日実物に出会えるとは夢にも思っておりませんでした」
王は、まだ少し不審な顔をしながらも、相手がアシュイラ皇国の王族であるため引き下がらなければならなかった。
「今こちらの庭園の花が見事に咲いておりますのよ。よかったら、第二王子をご案内して差し上げたら、キャスリン」
「はい、ではスティーブ様ご案内させていただきます」
「ありがとう」
王妃がキャスリンにだけ見えるいたずらっ子の笑みを浮かべて行ってくれたおかげで、キャスリンは早々にスティーブを広間から連れ出すことができた。そうでなかったら、王の次には父であるスコットの質問攻めにあうことになってしまっただろう。
広間からだいぶ離れた庭園に来て、やっとキャスリンはスティーブと顔を合わせた。
「スティーブ、聞きたいことがたくさんあるのよ」
「そうだろうね」
スティーブが、いたずらが成功したとばかりにキャスリンに満面の笑みを向けた。キャスリンはそれにすごく腹が立って、思い切り脛に足をぶつけてやった。
「痛ぁあ~」
キャスリン達から少し遠くにいたアシュイラ皇国の使者たちと王宮の近衛兵たちが、目を丸くしているのが見て取れた。
「もう心配したのよ。それに私この前記憶を取り戻したばかりなの」
「そうだろうね、あの手紙だろ」
すべてを知っていると思われるスティーブがまた笑いながら言ったので、キャスリンは思わず先ほどと同じように足を出そうとしたが、さすがスティーブのほうが一歩早く足が当たらない位置まで飛びのいた。
「もう~」
そう怒りながらもキャスリンは笑って許してしまった。なぜなら今愛しい人が目の前にいるのだから。今ならすべての事を許したい気持ちだ。
「何から話せばいいかな」
スティーブはすべてを話すことにしたようだった。
「キャスリンが僕を助けようと、すべての魔力を出すとは思っていた。一緒に踊った時キャスリン、君は僕の顔をよ~く見てただろう。君の目が決意に満ちているのを僕は見たよ。たぶん僕が何を言っても、君は実行していたよね。だから僕は僕でまた君をこの身をかえても助けたかった。キャスリンが魔法を繰り広げた時、僕も魔法を使おうと思った時だった。声がしたんだ。すぐ近くから。僕が付けていた腕輪から、初代の王と王妃が出てきたんだ」
キャスリンは驚いた。スティーブ一人ではここまでできることはなかっただろう。魔力を出し尽くしたキャスリンが今ここにいて、傍らにはスティーブがいる。そういう事なのか、キャスリンは初めて理解した。
自分たちが今ここにいられるのは、助けてもらったからなのだろう。キャスリンはスティーブの話の続きを聞くことにしたのだった。
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